推しの速水さん

コハラ

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2話 速水さんからのオファー

《16》

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「はい!」

ピシッと背筋を伸ばして、速水さんに全神経を傾ける。

「『今日ドキ』の更新が止まっているようですが、止めてしまったのは、もしかして僕の依頼のせいですか?」
「えっ」
「毎日のように更新なさっていたのに月曜日の更新が最後になっていたから気になりまして」
「『今日ドキ』チェックして下さっているんですか!」
「本棚に登録して読ませて頂いております」

う、うそ……。

速水さんが『今日ドキ』を本棚にまで登録して更新をチェックしてくれているなんて嬉し過ぎる。

じわっと瞼の奥が熱くなる。

「卯月先生?」
「あ、すみません」

慌てて眼鏡を外して涙を拭う。

「速水さんに気にかけて頂いていると思ったら、幸せ過ぎて涙が。すみません。こんな事で泣くなって話ですよね。本当、いちいちすみません」

あーもう、涙止まれ。なんで止まらないの。

ゴシゴシと瞼を拭っていると、横からすっとハンカチが差し出された。

「指で強く拭いたら目に傷がつきます。洗い立てのハンカチなので、使って下さい」

「えっ、あの……」

戸惑っていると、速水さんは私の瞼に優しくハンカチを押し当て、丁寧に涙を拭ってくれた。

お、推しの速水さんに涙まで拭いて頂けるなんて……。

感動の大きな波にさらわれる。

もう胸がいっぱい。声が出ない。

「すみません。親し気に触れたりして失礼しました」
「いえ、全然。むしろ、触れて頂けてありがたいです」
「え?」

余計な事言った。
速水さんは前の新人の事があるから、私に好かれたら迷惑なんだった。

「なんでもありません。あの、私、速水さんに恋愛感情とか全く抱いていないので心配しないで下さい」

速水さんの目が丸くなる。

あれ? 私、変な事言った?
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