推しの速水さん

コハラ

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2話 速水さんからのオファー

《9》

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「えー! 嘘ー! 速水さんって、推しのハヤミさんだったの!」
「しー! 声が大きい。お母さんに聞こえる」
「ごめん」

いくちゃんが驚くのも無理はないか。
私だって死ぬ程驚いたもの。

「速水さんは美樹に気づいてなかったの?」
「うん」
「美樹すごいね。一年も週一で速水さんをストーキングしていて、全く気づかれていないなんて」
「ストーキングじゃなくて、推し活! 気づかれないようにやっているから」
「でも、これからは難しくなるね」
「どうして?」
「今日で美樹の事はモブキャラから知り合いぐらいには格上げされたんじゃないの? 倒れて医務室に運ばれるなんて印象的なエピソードも作っちゃったし」

私を見ながら、クックックッと楽しそうにいくちゃんが笑う。
自分でも気を失うとは思わなかった。

「推しの速水さんに医務室まで運ばれるなんて凄いじゃない」
「え? 速水さんが私を運んだの?」
「そうじゃないの?」

確かに話の流れから考えると倒れた私を運んだのは速水さんしかいない。
私、速水さんに抱っこされたの? 体と体がくっつく程、密着しちゃったの?

恥ずかしさがこみ上げてくる。

ひゃー! どうしよう!

「美樹、顔が真っ赤だよ」
「今、速水さんに運ばれたんだって気づいたんだもの」
「一生の思い出になったね」

ぽんぽんといくちゃんが私の肩を叩いた。

「それで、速水さんからのお話は何だったの?」
「それが、あの……」
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