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1話 出会い
《14》
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「メール見せて」
いくちゃんに言われて、スマホの画面に集学館の編集さんからもらったメールを表示させた。
「卯月先生だって。美樹、ペンネームで呼ばれるんだ。うん? メールの人も速水さんって言うの?」
「そうなの。スゴイ偶然。こっちの速水さんは女性だと思うけど」
「だよね。『今日ドキ』を読んで胸キュンするのは女性しかいないよね」
いくちゃんがあははと笑う。
「相手が女性なら、気楽に会えるじゃない」
「まあね」
「よし、これで送信と」
「えっ、ちょっと、いくちゃん、何してるの!」
「美樹が煮え切らないからメール送ったのよ。返信が遅いのも相手に悪いでしょうから」
「えー! 送ったのー!」
「美樹が一人で行くのが心配なら、一緒に行ってあげるからさ」
「本当に?」
「うん。私も一緒に話を聞いてあげる」
そう言ったのに、いくちゃんは集学館の編集さんと約束した日、急用が出来たとか言って来なかった。
今、私はガラス張りの大きなビル前に立っている。何を着てくればいいのかわからなかったから、買ったばかりのダークグレーのリクルートスーツを着て来た。
受付に行くと会社説明会に参加する学生と間違えられた。ちょうど説明会とかぶったようだ。
ロビーで担当者が来るのを待っていると、頭の良さそうな就活生たちの姿を見た。ちらっと聞こえてくるのは偏差値の高い大学名ばかり。さすが集学館。優秀な学生ばかり集まる。
あっ、有名大学の学生が私を見ている。とても畏れ多くて目を合わせられない。
えっ! 見てるだけではなく、近づいて来た。
なぜ?
「説明会の会場は2階のようですよ」
有名大学の学生が親切に教えてくれた。
そうか。ロビーにいる私が挙動不審過ぎて迷っているように見えたのか。
「あ、はい」
そう返事をするのがやっと。
「説明会の案内もらいました? 受付で配っているみたいですが」
私は説明会に来たのではありません。という言葉が言えない。
初対面の人は苦手。しかも男性だと全く話せなくなる。早く担当の人、迎えに来てよ。
そう思っていたら、「お待たせしました」という聞いた事のある男性の声が響いた。
いくちゃんに言われて、スマホの画面に集学館の編集さんからもらったメールを表示させた。
「卯月先生だって。美樹、ペンネームで呼ばれるんだ。うん? メールの人も速水さんって言うの?」
「そうなの。スゴイ偶然。こっちの速水さんは女性だと思うけど」
「だよね。『今日ドキ』を読んで胸キュンするのは女性しかいないよね」
いくちゃんがあははと笑う。
「相手が女性なら、気楽に会えるじゃない」
「まあね」
「よし、これで送信と」
「えっ、ちょっと、いくちゃん、何してるの!」
「美樹が煮え切らないからメール送ったのよ。返信が遅いのも相手に悪いでしょうから」
「えー! 送ったのー!」
「美樹が一人で行くのが心配なら、一緒に行ってあげるからさ」
「本当に?」
「うん。私も一緒に話を聞いてあげる」
そう言ったのに、いくちゃんは集学館の編集さんと約束した日、急用が出来たとか言って来なかった。
今、私はガラス張りの大きなビル前に立っている。何を着てくればいいのかわからなかったから、買ったばかりのダークグレーのリクルートスーツを着て来た。
受付に行くと会社説明会に参加する学生と間違えられた。ちょうど説明会とかぶったようだ。
ロビーで担当者が来るのを待っていると、頭の良さそうな就活生たちの姿を見た。ちらっと聞こえてくるのは偏差値の高い大学名ばかり。さすが集学館。優秀な学生ばかり集まる。
あっ、有名大学の学生が私を見ている。とても畏れ多くて目を合わせられない。
えっ! 見てるだけではなく、近づいて来た。
なぜ?
「説明会の会場は2階のようですよ」
有名大学の学生が親切に教えてくれた。
そうか。ロビーにいる私が挙動不審過ぎて迷っているように見えたのか。
「あ、はい」
そう返事をするのがやっと。
「説明会の案内もらいました? 受付で配っているみたいですが」
私は説明会に来たのではありません。という言葉が言えない。
初対面の人は苦手。しかも男性だと全く話せなくなる。早く担当の人、迎えに来てよ。
そう思っていたら、「お待たせしました」という聞いた事のある男性の声が響いた。
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