24 / 28
バイバイ、課長
《4》
しおりを挟む
「どうぞ」
彩さんがテーブルの上に白い封筒を置いた。
宛名には見覚えのある課長の字で『島本あかり様』とあり、差出人の所には課長の名前があった。
「父が亡くなった日に家に届いたんです。切手を貼ってなかったから戻されちゃって。父って意外とこういう所抜けてたんです」
彩さんが笑った。
まさか課長が私に郵便を出していたとは思わなかった。
封筒の中には何が入っているんだろう……。
「今朝、父に言われるまで忘れてました。ごめんなさい」
「いえ。こちらこそ呼び止めて頂きありがとうございます」
一刻も早く、一人になって封を開けたくなった。
「あの、これで失礼します。いろいろありがとうございました」
封筒を受け取り、課長の家を出た。
彩さんは見送りに門まで出てきてくれた。
薔薇の甘い香りが漂っていた。
思わず足を止めて薔薇の方を見ると、彩さんが言った。
「島本さんの名前を見て思い出したんですけど、父が死ぬ直前に植えた薔薇があるんです。ほら、あそこの薄いピンク色の薔薇」
彩さんの指先に白に近いピンク色の薔薇があった。
「控えめな感じでかわいいですね」
「あの薔薇の名前、知ってますか?」
「いえ」
「『あかり』って言うんですよ」
彩さんが微笑んだ。
「余計な事言いました。ではお気をつけて」
彩さんがお辞儀をした。私も涙を堪えてお辞儀をして門の外に出た。
駅に向かって歩きながら、想いがどんどん大きくなってくる。
どうして私の名前と同じ薔薇を課長は植えたんだろう。
どうして彩さんに「島本くんによろしく」って言ってくれたんだろう。
どうして亡くなる直前に私に郵便を送ったんだろう?
課長の気持ちが知りたい。
居ても立ってもいられず、立ち止まって白い封筒の封を切った。
中には手紙が入っていた。
彩さんがテーブルの上に白い封筒を置いた。
宛名には見覚えのある課長の字で『島本あかり様』とあり、差出人の所には課長の名前があった。
「父が亡くなった日に家に届いたんです。切手を貼ってなかったから戻されちゃって。父って意外とこういう所抜けてたんです」
彩さんが笑った。
まさか課長が私に郵便を出していたとは思わなかった。
封筒の中には何が入っているんだろう……。
「今朝、父に言われるまで忘れてました。ごめんなさい」
「いえ。こちらこそ呼び止めて頂きありがとうございます」
一刻も早く、一人になって封を開けたくなった。
「あの、これで失礼します。いろいろありがとうございました」
封筒を受け取り、課長の家を出た。
彩さんは見送りに門まで出てきてくれた。
薔薇の甘い香りが漂っていた。
思わず足を止めて薔薇の方を見ると、彩さんが言った。
「島本さんの名前を見て思い出したんですけど、父が死ぬ直前に植えた薔薇があるんです。ほら、あそこの薄いピンク色の薔薇」
彩さんの指先に白に近いピンク色の薔薇があった。
「控えめな感じでかわいいですね」
「あの薔薇の名前、知ってますか?」
「いえ」
「『あかり』って言うんですよ」
彩さんが微笑んだ。
「余計な事言いました。ではお気をつけて」
彩さんがお辞儀をした。私も涙を堪えてお辞儀をして門の外に出た。
駅に向かって歩きながら、想いがどんどん大きくなってくる。
どうして私の名前と同じ薔薇を課長は植えたんだろう。
どうして彩さんに「島本くんによろしく」って言ってくれたんだろう。
どうして亡くなる直前に私に郵便を送ったんだろう?
課長の気持ちが知りたい。
居ても立ってもいられず、立ち止まって白い封筒の封を切った。
中には手紙が入っていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
実はこれ実話なんですよ
tomoharu
恋愛
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!1年後には大ヒット間違いなし!!
作品情報【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎ智伝説&夢物語】【トモレオ突破椿】など
・【やりすぎ智久伝説&夢物語】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。
小さい頃から今まで主人公である【智久】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね!
・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。
頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください!
特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します!
元カノと復縁する方法
なとみ
恋愛
「別れよっか」
同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。
会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。
自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。
表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
初恋の呪縛
泉南佳那
恋愛
久保朱利(くぼ あかり)27歳 アパレルメーカーのプランナー
×
都築 匡(つづき きょう)27歳 デザイナー
ふたりは同じ専門学校の出身。
現在も同じアパレルメーカーで働いている。
朱利と都築は男女を超えた親友同士。
回りだけでなく、本人たちもそう思っていた。
いや、思いこもうとしていた。
互いに本心を隠して。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる