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飛竜雷撃隊
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『リーべ、ライト、クランツェル、ナンシー…ラッジストの計5騎が落とされ、グリペンの飛竜が近くの島へと降下していくのが見えました…』
タワン飛竜軍基地の作戦指令室には、帰還した飛竜騎士の一人である*レベルタ*の悲痛を滲ませた報告が響いている。
大きな机を前に、ウェイビーとクフィール、ダンイルが無言でそれを聴いている。
12騎で飛び立ったはずの飛竜が、半分に数を減らして帰って来た当初は、基地の者たちも何が起こったのかを把握するのが大変だった。
殆んどの騎士たちが飛竜から降りるなり半狂乱で泣き出したり、震えてうずくまったりで、とてもじゃないが会話ができる状態ではなかったからだ。
しかし、ナンシーと同期のレベルタだけは何とか冷静に話すことができ、すぐさま作戦指令室に呼ばれることになった。
『クソ!一体何でこんなことに…!
ウェイビー総司令官!ただのドラゴン捜索じゃなかったんですか!!』
ダンイルは机を叩きウェイビーへと身を乗り出す。
『落ち着かぬか小僧』
『これが落ち着いてられますか!!
こっちは仲間がやられたんですよ!?
それに…隊長は…!』
ダンイルはそこまで言うと、静かに座っているクフィールへと視線をやった。
彼女は、酒場からこの部屋に来てから今に至るまで、ただの一言すら発していなかった。
『まったく…。戦を知らぬ鼻垂れどもは仲間が数人死んだだけで我を失う。
それが、更なる命を失うことに繋がるとも知らずにな…。
だが、仇は必ず取る。
もちろん、クフィール…御主の弟の分もな』
ウェイビーは手を伸ばし、そっとクフィールの肩に触れた。
『グリペンとラッジストは生きてるわ…。
そうでしょう?』
突然、クフィールがそう言って立ち上がった。
『は…!え…あの、はい!
可能性はありますが、かなり遠目だったので確証はありません…』
目が合ったレベルタが慌てて答える。
『仲間を置いて一目散に逃げ帰って来るとは、大したものじゃ…』
『も…申し訳ありません…!』
『違う。誉めておるのじゃ。
逃げずに全滅でもされていたら、誰がこの情報を持ってくる』
ウェイビーが愉快気に笑うとレベルタは悔しそうに唇を噛み俯いた。
『ウェイビー様。
私の部下を侮辱したら、いくら貴方でも…殺しますよ?』
クフィールが腰の剣に指を添えてウェイビーを見る。
その殺意に満ちた眼光は、一瞬にして室内に緊張をはしらせた。
『隊長…もうよせ。
グリペンの飛竜が消えた島に捜索隊を派遣するか?』
ダンイルが場の空気を紛らわすかのように大袈裟に音をたてながら机に地図を広げた。
『いや…まずは、その謎の巨船じゃ。
竜騎士の一人や二人の事など後に回せ。
レベルタとやら、巨船が放ったという追尾してくる対竜槍について詳しく話せ』
ウェイビーは据わった目つきでクフィールから視線を外さないまま、そう言い捨てる。
『いえ、まずは島を捜索します。
飛竜は大切な兵器ですから、万が一どこかのテロリストにでも奪われたら大問題です。
飛竜が生きている可能性がある以上、捜索に行くのが当然ですよねウェイビー様…?』
さっきまでとはうって変わり余裕の笑みを浮かべるクフィール。
『そうしようにも、その島はタダの島ではない危険地帯じゃ。
ジャングルには陸竜対策の罠が張り巡らされており、捜索どころではない…。諦めよ。』
ウェイビーのその言葉に眉一つ動かさないクフィールは、地図にある島を指さして、こう言った。
『ウェイビー様。
*飛竜雷撃隊*の出動を要請します』
タワン飛竜軍基地の作戦指令室には、帰還した飛竜騎士の一人である*レベルタ*の悲痛を滲ませた報告が響いている。
大きな机を前に、ウェイビーとクフィール、ダンイルが無言でそれを聴いている。
12騎で飛び立ったはずの飛竜が、半分に数を減らして帰って来た当初は、基地の者たちも何が起こったのかを把握するのが大変だった。
殆んどの騎士たちが飛竜から降りるなり半狂乱で泣き出したり、震えてうずくまったりで、とてもじゃないが会話ができる状態ではなかったからだ。
しかし、ナンシーと同期のレベルタだけは何とか冷静に話すことができ、すぐさま作戦指令室に呼ばれることになった。
『クソ!一体何でこんなことに…!
ウェイビー総司令官!ただのドラゴン捜索じゃなかったんですか!!』
ダンイルは机を叩きウェイビーへと身を乗り出す。
『落ち着かぬか小僧』
『これが落ち着いてられますか!!
こっちは仲間がやられたんですよ!?
それに…隊長は…!』
ダンイルはそこまで言うと、静かに座っているクフィールへと視線をやった。
彼女は、酒場からこの部屋に来てから今に至るまで、ただの一言すら発していなかった。
『まったく…。戦を知らぬ鼻垂れどもは仲間が数人死んだだけで我を失う。
それが、更なる命を失うことに繋がるとも知らずにな…。
だが、仇は必ず取る。
もちろん、クフィール…御主の弟の分もな』
ウェイビーは手を伸ばし、そっとクフィールの肩に触れた。
『グリペンとラッジストは生きてるわ…。
そうでしょう?』
突然、クフィールがそう言って立ち上がった。
『は…!え…あの、はい!
可能性はありますが、かなり遠目だったので確証はありません…』
目が合ったレベルタが慌てて答える。
『仲間を置いて一目散に逃げ帰って来るとは、大したものじゃ…』
『も…申し訳ありません…!』
『違う。誉めておるのじゃ。
逃げずに全滅でもされていたら、誰がこの情報を持ってくる』
ウェイビーが愉快気に笑うとレベルタは悔しそうに唇を噛み俯いた。
『ウェイビー様。
私の部下を侮辱したら、いくら貴方でも…殺しますよ?』
クフィールが腰の剣に指を添えてウェイビーを見る。
その殺意に満ちた眼光は、一瞬にして室内に緊張をはしらせた。
『隊長…もうよせ。
グリペンの飛竜が消えた島に捜索隊を派遣するか?』
ダンイルが場の空気を紛らわすかのように大袈裟に音をたてながら机に地図を広げた。
『いや…まずは、その謎の巨船じゃ。
竜騎士の一人や二人の事など後に回せ。
レベルタとやら、巨船が放ったという追尾してくる対竜槍について詳しく話せ』
ウェイビーは据わった目つきでクフィールから視線を外さないまま、そう言い捨てる。
『いえ、まずは島を捜索します。
飛竜は大切な兵器ですから、万が一どこかのテロリストにでも奪われたら大問題です。
飛竜が生きている可能性がある以上、捜索に行くのが当然ですよねウェイビー様…?』
さっきまでとはうって変わり余裕の笑みを浮かべるクフィール。
『そうしようにも、その島はタダの島ではない危険地帯じゃ。
ジャングルには陸竜対策の罠が張り巡らされており、捜索どころではない…。諦めよ。』
ウェイビーのその言葉に眉一つ動かさないクフィールは、地図にある島を指さして、こう言った。
『ウェイビー様。
*飛竜雷撃隊*の出動を要請します』
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