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「1章」戦隊ヒーロー異世界へ転移する。技の練習台として王族の無敵の金鎧の破壊を目標に決める。

10手目 悪魔と対峙して興奮するヒーロー

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 悪魔を封印していた封印箱が溶けてしまい、王子に見捨てられた騎士や傭兵たちは逃げた王子に怒りをぶつける。

「あのクソ野郎!! 俺たちを見捨てやがった!!」

「くぅ…殿下……王族の者が自らの手で放った悪魔を野放しにするなど…」

 傭兵達の雇い主でもあり騎士たちにとって守るべき主君のブラサー。

  王子でありながら命欲しさに逃げた事でブラサーの信頼は地中からその先の地盤まで信用は陥没してしまった。
 
  悪魔は残忍で容赦がなく狂暴とこの世界の者は子供の頃から知っている常識だった。
 
  漆黒の狼悪魔は自分を封じていた箱が溶けてなくなったのを見ると吠えた。

ウォォォォォン!!

「ひ、ひぃ!? ほ、ホワイトドラゴン…もしかして、僕を守ろうとしてるの?」

「グルゥゥ…」

 悪魔が吠えただけで立ち眩みをしたフォレスをホワイトドラゴンが体で支えた。

 狼悪魔はまるで箱から解放された鬱憤を晴らすように吠えた後、傷ついて倒れている得物たちを睨む。

「あ、あぁぁ…く、くるなぁ…」

「おいたのむ!! そこの、ドラゴン!! 助けてくれぇ!!  俺たちはあの馬鹿王子の命令でしかなかったんだぁ!! うぁぁぁぁ!!」

 悪魔たちに標的にされた男達がフォレスとホワイトドラゴンに命乞いをする。

  狼悪魔が大きく口を開いて負傷した得物にとびかかる。

 叶とホワイトドラゴンに装備を破壊されてしまい、魔力もほとんど使い切った彼らは自分達を捨てた王子を呪いながら恐怖の叫びを上げる中。

「おい、悪魔…お前の相手は俺だろ?」

 叶がつぶやき、手下達の前にある地面からアースハンド(大地の手)を生み出す。

 他にも時間差浣腸アースを受け未だに動けない者を狼悪魔から守るために次々と地面や壁からアースハンド(大地の手)が覆う。

「お、おまえ…どうして俺隊を…?」

「(悪魔に技を試すのに)邪魔だから」

 叶は本音の部分を省いて短く伝えた。

「か、カナエさん…どうして? あの人達はさっきまで殺そうとしてきた人達なのに…」

手下やフォレスもさっき殺そうとしてきた相手を何故助けるのか? 疑問思ったまま狼悪魔と対峙する叶を見つめた。

(悪魔かぁ…やべぇ…メルベータの生物兵器どもとレベルがちげぇ…)

 機械仕掛けの悪の組織「メルベータ」はサンのようなロボット兵器を専門にする者もいれば生物同士を融合させ機械で強化したキメラやあらゆる死体を薬品で魔改造し、痛みも恐怖もなくしたアンデットなど生物兵器がいた。

 だが、今目の前にいる悪魔から感じる殺気や威圧は生物兵器とは比べ物にならないほど叶は肌で感じていた。

 だが叶の中にあるのは恐怖ではなく、未知なる悪魔に自信の技がどこまで通用できるか。
「興奮」だった。

「がぁ!!」

「うぉ!! はやっ!!」

 狼悪魔が一瞬の内に叶の前まで駆け、鋭い爪で引き裂こうときた。

「くぅ!! サンダーウォール(雷の壁)!!」

 叶の周囲に高圧電流の壁が張られ狼悪魔の爪が焼き焦げて煙が上がった。

「おいおい、一応この壁ってキメラを一撃で感電死するほど強いんだけど…」

 (サンダーウォール)を張った叶を警戒し狼悪魔が距離を取る。
 叶と狼悪魔との戦いを見て手下達は土の手の隙間から叶を応援し始めた。

「頼む、あんちゃん!!」

「よし、俺たちもあいつの援護を…」

「やめろって、さっき邪魔って言われただろうが!!」

 傭兵や騎士が自分達を助けるために戦ってくれる叶を援護すべきかどうか話している。
 だが、叶の本心を手下達もフォレスもドラゴンも知らない。

(金ぴか(練習台)には逃げられて残念だったが…こいつなら、思いっきり技使っていいよな!! フォレスとあのおっさんどもは技の邪魔だからどけといて正解だった!!)

「カナエさん…」

 ブラサー(クズ王子)に捨てられた者や、叶に救われたフォレスとドラゴン達には叶が勇者に見えた。

 だが、当の本人はまるで新作のゲームをプレイし始める子供のように目が輝いていた。

(悪魔にどんな技が効くか、試させてもらおうか!!)

 両手を合わせた叶は興奮していた。
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