異世界で山家として生きる者。

hikumamikan

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第81話 山岳狼の大繁殖。

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夏の盛りに成って巣立った若いキツネ等が多く見られる様に成った。
やはり鼠や兎等も増えている。

オークも頻繁に街道に現れ始めた。
ナディールさん達も暫くニューラの宿に留まって、近隣の魔物を狩ったり護衛依頼で近くの町を行き来するようだ。


そんなある日、夫がアキュビューから隣国の例の峠までの道を、警戒巡視する為に暫く家を空けると言う。
久々に帰って来た娘も外街道や周辺の山岳で、薬草採取と言う名目の間引き討伐を開始した。
私も豚さん車で周辺街道を見回る。
何せ息子を背負っての行動なので制限される。


例の牧場でソフトクリームを頬張っていると、昔はよく耳にした山岳狼の遠吠えが聞こえた。
「奥さんあれ最近よく聞こえるの?」
「そうなんですよ。だから私も攻撃魔法の練習を始めました」
「あれから習得したんだ」
「ええ、水と火と風を」
「あれは山岳狼と言って、普通の狼より素早いから気をつけてね」
「あ いや 私、 普通の狼とさえ戦った事無いんですが・・・」
「もし出会したら火球と水球でフェイントかけて、ストーンバレットか風刃で攻撃すると良いですよ。山岳狼は意外と皮膚が硬いので氷槍だと厳しいから」


言ってる側から3匹の山岳狼が襲って来た。
「奥さん狼に向かって火球を放って」
「ファイヤーボール」
奥さんは3つの火球を同時に放った。
「横から出て来るからそれにストーンバレットです」
「ストーンバレット・ストーンバレット・ストーンバレット」
ドン・ドシュ・ズッ。
「そこですかさず風刃を」
「風刃・風刃・風刃」
ザン・ザン・ザシュッ。

2匹は既に倒れていたが、最後の1匹がヨロヨロと逃げようとしたので、私がストーンバレットを撃ち込んで倒した。

「初めてにしては上出来ですね」
「有り難う御座います」

「でも初めてですね山岳狼があの山脈から出て来るのは」
「そうなんですか?」
「ええ 私山家でしたから」
「山家?」
「まあ山で暮らしてた民ってとこです」
「そうなんですか」
「はい」


微妙な沈黙が流れた。
「奥さんは海の方の方ですか?」
「はい、最近真珠の養殖に成功した村の出身です」
「ああセントエレモが有る」
「あの島からは反対側の入り江の村ですけどね」
「そう言えば蹄鉄みたいな形の広い入り江でしたね」
「はい、あの形で波も穏やかなので、近くで魚が沢山取れます」
「この辺は海の魚が無いから食べたくなりません」
「そうですね、川魚は真水に1日2日置かないと臭いですから、時々海の魚が欲しく成ります」
「清流の魚ならそうでも無いですけど、鮒や鯉とかウグイはねえ」
「鰻もいちおう1日置きますが、河口の鰻はそのままさばけますからねえ」

私はそのままさばいていたわ。
だから少し野性味溢れてたのかな?。

「私時間停止のアイテム袋持ってますんで、海の魚出しましょうか」
「えっ、本当に」
「ほいさっ」

「・・・本当に新鮮そのままだあ~」
「どうです、よろしかったらお好きなのを」
「鯵と鯖それに蛤をいくつか貰って良いですか」
「どうぞどうぞ」
「おっギザミがあるじゃねーか」
「あらあなた」
「旦那様こんにちわ」
「あっどうもこんにちわ」
「今日から休み?」
「いや3日休んで、1ヶ月はニューラのギルドだ。それからまた1ヶ月山ん中だな」


私達はニューラに戻って3日程お互いに休んだ。
ノマシの話によると異常に山岳狼が多かったらしい。
俊敏なので怪我人も5名出たが、私の栄養ドリンク(ポーション)で治したらしい。
それについてあの牧場にも3匹現れた事を報告しておいた。


「五千人!?」
「うん、当然街にも冒険者残さないと駄目だから、結構大規模なローラー作戦だな」
「でもあの山脈全体だと人数足りないでしょ」
「そこは調べて有るよ。どの辺からどの辺まで出没するとかね。海に近い方は出ていないからね。全体の3分の2かな」
「それでも無理が有ると思うよ」
「だから5回ぐらいやるみたい」
「成る程・・・」
「それぞれ地元のギルドが請け負うから俺らはニューラ周辺だな」


それから1週間して山岳狼の討伐が始まった。
私達には大した事無い魔物だけど、中より下のD・Eランクだと動きが速いので、割りと怪我をする魔物。

前に間隔を割と広めに開けて、冒険者が横一列に山に入る。
少し後方から前の冒険者とは違い間隔を詰めて、一列に並んで後列が山に入る。

前列の冒険者を横に交わしながら山岳狼達が抜けて来るので、後列が逃がさない様に斬り捨てていく。

それでも当然何匹かは抜けてしまうので、街に残った冒険者達が街道で対処する。
バラけたはぐれ狼は然程脅威でも無いので、その内退治されてしまう。
俊敏と言っても群れと単独では雲泥の差だ。

それを5回繰り返したら今回は一旦終了だ。


「思った程でも無かったな」
「意外とあっさり収まったわね」
「なんだかなあ・・・」
「どうしたの?」
「う~ん、もっと多かった気がするんだが」
「分かったわ娘にも言って警戒して貰うわ」
「すまん」


夫がアキュビューから峠までの巡視を終えて帰って来たのは夏の終わり。
「ちょっとだけ涼しく成ったなあ」
「そうね。あと10日であそこのソフトクリーム終わりらしいわ。残念」
「いやお前インスタントで出せるだろ」
「味が全く違うのよ」
「ドンドン!!ノマシいるかあ」
「あれ、バジラートだ」
「何かしら?」
「ちょっと行ってくる」


それはジュンベルグが山岳狼に襲われたと言う一報だった。

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