異世界で山家として生きる者。

hikumamikan

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第74話 26歳お肌の曲がり角を過ぎてしまうが。

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流石に妊娠・出産・子育ての繰り返しでは冒険者稼業は無理で、あっと言う間に十年が過ぎた。

いや何ね話が無いんだよ。
子育ては普通に悩ましい事ばかり。
私の脳には学校の記憶は有るけれど、此方には幼稚園も学校も無い。
有るのは中学校みたいな貴族学校と、庶民が行く寺子屋みたいなもの。
特殊な処で、魔法・職業訓練・神学学校かな。
魔法学校は主に貴族。
庶民は冒険者ギルド等で教えてくれる。
治癒魔法は教会かな。
職業訓練学校は全般的な職業のスキル習得が目的で、この世界で一番学生が多く貴族と庶民の境が無くて、揉め事が有っても平等に裁かれる。
これは、この学校に来る貴族は後に平民に成るからだ。
つまり家督も土地も継げない貴族だから。

余程特殊でない限りこの四つが、この世界の学校に成る。


レイナとして生を受け26年、ノマシとの間に4人の子を授かったが、3歳を迎えられないで二人亡くした。
インスタント5回がけで薬も出したが、どうにも出来ない運命はある。
長男と次女は流行り病(麻疹に似ている)で、一冬の間に一度に亡くした。
長女と次男は産まれ持った運と丈夫さなのか、麻疹を乗り越えて今では元気過ぎるくらいだ。
本当はもっと子供が欲しいけど間を開ける事にした。
うん、あと三人は産めるよ。


長女は今職業訓練学校に行ってるけど、適性なものが見つけられないでいる。
私も親として実は長女に何が向いているのかてんで見当がつかない。
全て普通。
器用貧乏では有るのだが。
教会でスキルを5歳の時見て貰ったが、何も無かった。
本人はショックだったが、こればかりは仕方無い。
司祭様に白紙ですねと言われた。
真っ白だったのだとか。

スキルや加護は遺伝しない。
まあそんなものが遺伝してしまえば、一部の人達に力が集中してしまう。
貴族は昔の戦争で功績を上げた人が、王の権限で力を得たに過ぎない。
没落もするし改易にも成る。


そうだったウェッド様もアルフレッド様と共に侯爵に成られている。
そしてあのブドウの苗やらなんやらの苗をあげた男爵様も、子爵から今では隣の潰れた男爵家も併合して、とうとう伯爵に成られた。長年の品種改良や独自で甜菜からの砂糖作りが、項をそうした感じだけど、私としてはアデリアから持ち帰ったジャポニカ米に近いお米が、栽培に成功して大量生産されているのが凄く嬉しい。
お米は麦の10倍作付け面積辺りの収穫量が有るので、男爵じゃなくて伯爵様には感謝している。
あのお米で国中の餓死者が殆ど無くなった功績は、国王陛下曰く侯爵位を与えても良いくらいらしい。


経緯はさておき、あれから大きな魔物討伐は起きていない。
大体波があって何十年に一回来たりするのだとか。
キメラは知られているけど、あのオークの幼体を含めたら、二千年に一回が2度来た事に成る。
凄い年だったと言わざるを得ない。


結局長女は今では冒険者をしている。
私も同じ歳には冒険者で山家だったから何も言えないけど、薬草採取に行く度に気が気でない。
ただ器用貧乏なせいか、下位ランクの魔物はいとも簡単に剣で倒して、私がインスタント5回がけで出したアイテム袋で持ち帰る。
討伐依頼外でも人を襲う魔物は肉等の素材として買い取ってくれる。
なので娘は自力で生活できるお金を持っている。
時にトリオネ爺さんがいた近くの私の家に泊まったりする。
トリオネ爺さんの容態の悪化を知らせてくれたのは彼女だ。
爺さんは弟子のカトレアさんとメノーラ姉妹や私達夫婦に看取られて亡くなった。
イシタント様は豚さん車のワゴンを弟子の双子姉妹に分け与えてくれた。
爺さんの家(祠)は今は登山道の休憩所だ。


「託児所ですか」
「有りませんか?」
「いえ有りますよもちろん。子供を預けて仕事をなさる方は多いですから。ただ冒険者となると許可は・・・」
「出ませんか」
「有る意味危険なお仕事の上、・・・そのう、逃げたりする方も多いので。レイナさんが借金で逃げたりしないのは知ってます。ただ預かる方はそんな事に関係無く規則として」
「あ~、それかあ。分かりましたどうもすいません」
流石に3歳の息子を連れて冒険者は難しいか、ノマシが怒るよねえ。


「ようやく捜査の網に引っ掛かって捕縛出来たよ」
「良かったわね。何やった人」
「麻薬だね」
「なんか聞いた事有るわ。低ランクの冒険者に疲れが取れるとか言って、売ってたって」
「うん、花の茎から採れる汁を乾燥させて粉にするんだけど、一度使うとずっと欲しくなるんだそうだ」
「あっちの世界の記憶にも有るわ」
「今回はルートの一つに過ぎないからね、地道に潰すしかないね」
「捕まった人はどうなるの」
「死刑だろうね。沢山亡くなってるから。幻覚を見てる間に魔物に襲われた人も多い」
「私の栄養ドリンク安くして卸そうかしら」
「いやそれはギルドが決める値段だからね・・・。それはそうと5日程休みが貰えたよ、花見行こうか」
「本当!、行こ行こ」
「ははは、何処か出たそうにしてたからな」
「本当は冒険者稼業してみたいけど、ライルがいるからね」
「聞いたぞ、託児所の事」
「あちゃ~」
「まあレイナの気持ちはわかる。もう一人欲しかったけど」
「30に成っても産めるわよ」
「ライルが難産だったから止めとこう。レイナに何か有ったら俺は・・・」


次男の時はかなり危なかったのは事実だ。
出血も多くて、体調が戻るのに半年かかった。
元々丈夫な私があんな事に成るとは思わなかった。


私達親子4人は翌日豚さん車でアキュビューに向かった・・・ふりをして、創造魔法で人気の無い所からアキュビューの近くに飛んだ。
そしてもう一回街道に出てアキュビューに向かう。
「お父さん達の魔法って午前中にここまで来れちゃうんだね。私もそんなスキル欲しかったなあ」
「すまんなあこればっかりは・・・」
「まほうって・・・かみちゃまがくれりゅの?」
「そうよ~だからね、何が当たるか分かんないの」
「ぼくもなんかほちいなあ」
「ライルも5歳に成ったら教会ヘ行こうか」
「いきゅ~」
ライルは3歳に成ってから大分発音が良くなって来てはいるが、まだまだ拙い処が有る。
姉のデージーは男の子みたいにやんちゃだ。
ノマシに言わせると私に似ているとか。
むむむ、言い返せない。
デージーには私と同じ仕様のショートソードを持たせている。
何かに襲われた時に未練が残るのは嫌だから。


「やっぱり桜はいいな」
「お母さん凄い泉が綺麗」
「山脈の伏流水だからね」
「つべたい!」

桜をさんざん愛でた後は、豚さん車で峠の街道を登る。
夕方に人気が無くなって来たら、車を降りて峠まで魔法で飛ぶ。
峠では隣国の夜景を楽しむ。
ほんの柔らかな灯りが見えるか見えないかだけどね。
「さて祠まで帰ろうか」


トリオネ爺さんの祠の近くの我が家に創造魔法で帰って来た。
アキュビューの露店で買った串焼きや丼物で晩は済ませた。
「「「「おやすみぃ~」」」」


「オークだわね」
「オークだな」
「オーキュ」
「「ははは」」
「行きます」
「「えっ!、ちょっま」」
バシュ、ドシュ、ズブッ。
「「3太刀ね」だな」
「オーキュさんちんじゃう」
「オークはね人を襲うから退治しないと駄目なのよ」
「仕方無いんだよライル。肉が旨いから」
いやその教え方は駄目だろノマシ。
ガアアァー!。
「「むっ」こいつは」
ズシュ~!。
「「えっ?」ありゃ」
「「ビッグレッド倒すかあ~」首を一太刀って・・・」
「むふう~」
ああドヤ顔ですか、そうですか。
私はビッグレッド倒すのにインスタントラーメン何杯かけたやら。


私達はニューラに帰る途中街道手前で二種類の魔物に襲われたけど。
デージーが僅か10歳にして中級冒険者並みの強さに成っていたのには驚いた。

「デージーには剣術のスキル無かったよね」
「白紙って言ってたな」
「デージーちょっとスキル鑑定させて」
「いいよ」
「どうだ」
「ん~・・・真っ白」
「本当だ」
「デージー剣術はどこで覚えたの?」
「自己流だよ」
「あれで」
「自己流?」
「じこちゅう」
いやライルそれ違う意味に成るから。


ニューラ手前の酪農家で牛乳を買うため寄った。

「あらチーズ」
「へえここケーキ売ってるんだ」
「はい最近は砂糖が安く成りましたから、色んなお菓子を息子の嫁が作っております」

屋外のテーブル席でケーキとミルクティーを頂いた。
「わあ、お母さんのより旨い」
「おいちい」
「へえ~」
ノマシまで私をチラッと見る。
私のケーキはインスタントで出したやつだから。
ちくせう、今度5回がけで出したるワイ。

沢山買ってしまった。
牛乳もケーキも冷蔵仕様のアイテム袋に入れて帰る。
そのまま途中で亜空間ボックスに入れておいた。


ニューラの家に帰って気がついた。
「あ~玉子買い忘れたあー」
「インスタントで出せば」
「いやあれは何か違う気がして・・・」
「明日薬草採取するから買って来ようか」
「私も行くわ、ノマシは?」
「俺は家で寝てるよ」
「それじゃライルとデージーと私で行って来るわ」


「・・・随分簡単に見つけるわね?」
「だって形や色・特性は頭の中に有るもの」
「えっ、薬草全部記憶してるの?」
「薬草の種類ぐらい簡単よ」
「凄っ・・・」
この子は歩く植物図鑑か。

そうこうしてる間に牧場に着いた。
「あら昨日の」
「すいません、玉子買い忘れちゃって」
「あらあらその為にわざわざ?、町にも卸しておりますが」
「あはは、子育てて長く野や山に行って無かったもので、何かね外が新鮮で」
「魔物がいて危険でしょうに、小さい子も・・・」
「私Bランク冒険者ですのよ。娘もこの歳でオーク倒しますし」
「それは凄いですね・・・Bランク」

「あれなんですか?」
娘が何か見つけた様だ。
「ああ、あれは嫁が夏に売る新商品を試作してますの」
「へえ、何かメレンゲみたいで面白そう」
「メレンゲ・・・夏!?。ちょっと見せて下さい」


ソフトクリーム見つけた。
インスタントでも出せるけど、これはほんまもんのソフトクリームだよ。
「ふふふ」
「母さん顔怖いよ。シワよるよ」

・・・娘よ、お肌の曲がり角を曲がった私にそれは禁句だよ。
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