異世界で山家として生きる者。

hikumamikan

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第69話 山越えの新婚旅行。

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「はあ?・・・山脈を超えて行くから旅券を出せと」
「「はい旅券の発行をお願いします」」
「関所は通るよな」
「「当然です」通らなくても大丈夫だけど」
「レイナ・・・今変な声が聞こえたが」
「気のせいです」
「何で冒険者ギルドで発行して貰わない?」
「「明日出るから間に合いません」」
「・・・分かった今から一筆認める。何ヵ月の予定だ」
「「10日です」ノマシの休みがそれしか無いので」
「・・・10日で行って帰ってこれる訳無いだろう」
「「魔法で夜中に峠を越え、早朝に関所に向かいます」」
「お前らにそんな魔法有ったか?」
「入籍祝いに創造神様から創造魔法を二人とも授かりました」
 ガタッ!。
「・・・・・・そうか」
 アルフレッド様は流石に驚いて半分椅子から立ち上がっちゃったよ。

 創造魔法を授かったのは初めての報告だった様だ。
 これまで教会では確認されて無かったとか。
 私のスキル(インスタント)は創造・付与等の混合魔法だけど、創造魔法そのものはもっと強力だったよ。
 だけど制限は設けられていて、身体の欠損や命の蘇生等出来ない事も有ると、イシタント様はおっしゃっていた。
 そう言えば(反魂の術)は神様でも使えないとイシタント様は言ってた。

 だから私は他人の脳に記憶を移植されただけで、正確には異世界転生では無いと思う。
 おまけに記憶の欠損部が多い。
 私自身玲衣奈って本名も親の名も自分の顔すら覚えていない。
 まあ、脳が潰れちゃったからね。
 スキルが有ると分かって最初に出したのがインスタントラーメンってぐらいだから。


 でも夫と共に貰った創造魔法には驚いた。
 あの双子が使った目視認識転移をいとも簡単に行えた。
 山脈の雪を秒で取って帰って来れた。
 だから新婚旅行は山脈を超えて隣国へ行くのだ。

 因みに夫婦の営みは未だしていない。
 ノマシには悪いが旅行中に着床して流産でもしたら命に関わる。
 精子が卵子と結合して子宮に降り着床するまでに7日ぐらいなので、旅行中に着床する可能性は有る。
 ・・・旅行中に夜の営みは無いよ。
 宿の壁は薄いからね。
 流石に恥ずかしいから。
 野宿でいたすとかもっと無いね。
 確かに創造魔法で結界を張れば魔物からも防げるけど、初めての男性経験が青姦とか嫌だよ。
 山家の時は良く見たけどね。
 命懸けのセックスとか凄いね。
 動物や魔物は臭いに敏感だから危険極まりない。
 泉雅子さんが北極に行った時に、注意したのは月の物(生理)だそうで、北極熊は血の臭いに敏感で襲われる危険が高いとか。

 命の引き継ぎはまさに、命懸けの行為なのがこの世界では分かる。
 快楽的な要素も有るが鮭みたいに命懸けも同席している。


「無事に帰って来てくれよ。・・・レイナ・・・変な考えは起こすなよ。わしも早く孫が見たいからな」
「・・・孫?。私アルフレッド様の子供じゃ無いよ」
「例えだ、例え」
「アルフレッド様はレイナと出会った時からずっと自分の子供の様に見ていたそうだよ」
「そうなの?。知らなかった。ごめんねお爺ちゃん」
「・・・そこはお父さんにしてくれ」


『アルフレッド』
 夜に寝ていると伯爵は何者かの声で起こされた。
「うん、・・・どちらさんで?」
『イシタントじゃ』
「いしたんと?」
『創造神じゃ』
「はあ?、誰か騒いでますか。明日注意しておきます。むにゃむにゃ」
『・・・騒々しい、では無くてな創造神じゃ』
「創造神・・・」
 !!、カバッ。
「へっ、創造神様?」
 良く見るとドアの所に不細工な男性が淡い光を纏い立っている。
 その淡い光で何とか見えたが、光が無ければ只の幽霊だ。
『誰が幽霊じゃ無礼者』
「しっ失礼しました」
 心を読まれた伯爵は本物だと認識して、慌ててベッドから降り正座で頭を下げた。
『レイナ夫婦にはキィが就いているが、もう一体わしの眷属をつけよう。創造魔法も授けたしそれで何か有っても、最早人には責任を負わせぬよ。あの者達の事で町や国それに大陸が消滅する事はない。安心するが良い。そうだお主にも創造魔・・・いやインスタントを授けよう。長い間煩わせた褒美じゃ受け取れ。それと旅券の発行日を10日前にした気配り感謝する』

 翌朝早く伯爵はインスタントスキルが与えられた事を知って、無人偵察ドローンを山脈の峠に向かわせた。


「確かに。どうぞお通り下さい」
 ノマシとレイナは隣国の関所を無事に通過して、人気の無い所から目視認識転移で小山から小山へ、あっと言う間に海辺の町に着いた。

「くそっ、追い付けん」
 伯爵は追跡を諦めるしか無かったので、ドローンを屋敷に戻した。


「流石に南とは言え未だ寒いね」
「2月だし海風がモロだからな」
「宿が開いてて良かったね」
 前日に部屋を取っていないので朝食は有料で食べた。
 そして取り敢えず一泊するので、部屋を確保する。

「あっ、あった!」
「本当に市場で売ってるな」
 私達は少し茶色な砂糖を沢山買った。
 怪しまれない様に数店舗で購入。
 ついでに海の幸も何点か購入する。
 ぶらつきながら遊覧船を発見。
 そのまま乗船したら朝一で客が少なかった。

 ぱしゃん。
「んっ?」
「何それ」
 海から何か飛び出て来てノマシの腕に乗った。
「芋虫?」
「ゴカイとちがうの」
「きゅう~」
 鳴き声が可愛い。
「鑑定してみるぞ」
「うん」
「ジーニアスサーペント」
「サーペント?」
「みたいだな。幼体だけど」
「天才の他に守護神を表すジーニアスが付いてるから、僕と同類だね。魔物としては眷属に成れる高位の種族だよ。因みに僕は初めて御目に掛かる魔物かな」
「強いのかな?」
「強そうには見えないな」
「僕と同じ位の力を持ってるよ」
「「えっ、ええ~」」

 名前はペンちゃんに成った。
 そしてノマシの服の中で今はお休み中だ。
 陸上でも問題ないみたい。
 それどころか起きたらふわふわと宙に浮いてた。
 鱗の有る芋虫にしか見えない可愛い子でノマシは大層なお気に入り。

 遊覧船を下りて昼食を取るため町に向かう。
魚醤は少し癖が有るが、長年の改良でかなり旨い。
その為料理は凄く美味しかった。
牡蠣や瀬戸貝類は本当に絶品だ。
一夜干しとかめざしそれに魚醤も買っておく。

サトウキビ畑が続く向こうに島が見えるが、この先は一般人立ち入り禁止だったよ。
残念だけど重要な産業だからね。
おそらく砂糖の精製工場が有るのだろう。
島とは砂浜で陸続きらしい。
たまに海中に沈むとか言ってた。


「あ~盗賊さんですか」
「だね~」
盗賊は盗賊なんだけど・・・。
帯刀してる私達に唐黍で脅かしてもね。
面倒臭いから五人の持ってる砂糖黍を全て切り落としてやった。
「ひっひい~」
「あわわ」
「にっ逃げろ~」
「何だありゃ」
「何だろうね?」
パチンッ。
「剣大丈夫か」
「何かちょっと蜜が付いてたから布で拭いたよ」
「そうか、お前の剣も高いからな」


この町の冒険者ギルドで盗賊の事は報告しておく。
「あ~・・・あれですか。困ったなあ、マジで討伐せにゃ成らんか」
「盗賊と言うにはアレですよね」
「難破船の孤児なんですが、言葉は片言だし孤児院には入ってくれないし、まあ私ら大人を信用して無いですからね。砂糖黍畑に隠れ住んでるんですけど、地主さんもまあいいかで許してくれてます。でもなあ盗賊の真似事をされると・・・」

「食事は?」
「地元の人が何かしら与えてはいますが、充分では無いのかもね。衣服もボロボロですし、その他もね。兎に角話に応じてくれないのが難儀なんですわ」
「私達が捕縛しましょうか」
「えっいやそれは、8人いますからねえ」
「大丈夫ですよ。夫も私もそれなりの冒険者ですから。それに従魔もいますしね」


結果はあっさり方が着いた。
キィが白大蛇に成って彼らの逃げ道を塞いだ。
そしてペンちゃんが大きく成ってキィと同じ事をした。
むしろこれに腰を抜かしたのはギルドの職員だったし。

「ペンちゃんキィと同じくらい大きいんだね。ありがと」
「きゅうぅ」
小さく成ったペンちゃんはスルリとノマシの服の中に入った。

縄で繋がれた彼等は、男5人と女3人で5歳から10歳位に見える。


「う~ん、働きたいと言われても砂糖工場も人手足りてるしなあ。正直今は無いと思うぞ。・・・にしてもそんなに孤児院が嫌か?」
「どうやらずっと南の海を渡った国では孤児院で虐待され、船の漕ぎてとして売られた様です。航海中も散々虐待三昧らしかったみたいね」
「レイナ君君は何処で彼等の言葉を覚えたんだい」
「それは秘密です」
私は今、創造魔法の翻訳を頭の中で使っている。
「どうするかなあ旅券も持って無いから孤児院に暫く居てくれると助かるんだがなあ」
「俺らの国へ連れて行こうか?」
「はっ?・・・君らの国」
「山脈を超えた国よ、モーリスさんやトリオネさんもいるからニューラならいけるかも」
「・・・トリオネってもしかして元宮廷魔導師のトリオネさんか」
「そうよ、モーリスさんも元この国の高官僚よ」
モーリスさんはCIAみたいな仕事なので名前は知られていない。
「俺達の町の伯爵様は気心の知れた仲だから相談し易いしな」


「で、新婚旅行から昨日戻ったと、子供8人連れて・・・」
「「伯爵様お願いします」」
「ああそれは構わんがお前らまた行くのか?」
「「あっ、もう面倒臭いので良いです。旅券返しますね?」」
「返さんでええ。終身運用だ」
「そうなんですか?」
「商人なんかしょっちゅう越境するのにいちいち書けんだろが、あの子達はモーリス商会に斡旋する。それなら安心だろ。お前達は帰って子作りでもしてろ」
「「はいっ!!」」
「・・・たまってるのかノマシ」
「はいっ!!」
「・・・」
「・・・ばか」





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