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第50話 梅の香、風に添う。
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緩やかな風が誘う。
そんな日和に出発・・・するのだけど。
何故かモーリスさん親子が街道に出た道にいた。
「あれ、どうしました」
「エンストしたみたいで、こんな事初めてなんだよね。神様からの贈り物だから直し方なんて解んないし、困っててね。レイナちゃん解る」
「いや流石に私もこれは」
『さてそろそろ良いじゃろ』
ブルン、ブロロ。
「あっ、動いた・・・?。神様の悪戯かな、レイナちゃんの家の近くだし」
「何処に行く予定だったんですか」
「ああ、アシュタベルのチューヤって所に蓙を届けにな」
「私は山家だったので余り平地の町は知らないんですよ、ご同行させて貰っても良いですか」
「それは勿論夏の星座の方々も喜ぶんじゃないですか」
「あれ?、夏の星座の人達もいるんですか」
「ええ、新しく加入した二人の女性冒険者の警護の為に、林の中にいますよ」
「あっ・・・お花ですね」
「おしっこだね」
「クルト君そんなデリカシーの無い事言うと女の子にモテないよ」
「・・・べっ別に良いよ」
「レイナちゃんにも嫌われるぞ」
「そっそんな事無いです。あっ・・・」
「「・・・」」
「コホン、二人とも真っ赤だな。さてさて戻って来たみたいだし、出掛けるか」
「モーリスさん直りました?って、レイナちゃん」
「こんにちわ」
「「「おう、こんちわ」」」
「「はじめまして」」
「今何故か丁度直ったよ」
「「「「「良かったあ~」」」」」
「レイナちゃん、車なおして(アイテム袋に仕舞って)こっちに乗って行くかい」
「はっはい!・・・乗る所は」
「今回は蓙ばっかりで余裕が有るよ」
「何で蓙を」
「梅の香祭りだよ。チューヤには大きな梅林が有って、この時期は賑わうらしいよ」
クルト君が教えてくれた。
「さっさ、早く乗った乗った」
急かされて出発。
ムスクナ経由で今まで走った事の無い道を行く。
「こんな良い道が有ったんですね」
「アシュタベルへの最短ルートだよ。アシュタベルは例の火山の森に隣接した町だね」
ゴドルフさんは流石に良く知っている。
「「この道をウェッド公爵は夜通し走ってレイナ救出に駆けつけたんだ」もう終わってたけどね」
「そうだったんですね。あの時はアルフレッド様にも皆さんにもお世話に成りました」
「ムスクナのギルドの対応が早くて良かったよ、本当に」
「そう言えばムスクナの代官ってどうなったんでしょうね?」
「ジュンベルグの領主の甥っ子がやってるよ」
「挨拶した方が良いでしょうか」
「「「別にいいだろ」」」
「レイナさんは迷惑かけられた方ですから良いと思いますよ。むしろ向こうから挨拶に来るべきでしょう」
そうこうする内にムスクナに到着した。
私は途中からクルト君にもたれ掛かって寝ていたらしい。
恥ずかしい、いや嬉しい。
クルト君は黙って寝かせていてくれた。
実は昨夜ネクトゥアル様とズルヴァン様の祠と石像をインスタントで造ってた。
一寸大きめにしてしまった。
置けるかな?。
まあそれで少し眠たかった訳ね。
ムスクナではモーリスさん達と同じ宿に泊まった。
「部屋代有り難う御座います」
「いやいや、今の私が有るのはレイナちゃんのおかげだから。あのマイクロ貰えたのもね。アキン道って加護もね」
ガルパンかっ!。
「「よろしくね」」
「こちらこそよろしくお願いします」
部屋は護衛の女性二人と一緒だ。
カトレアさんは魔導師で魔法使いの上位職なので援護が主。
メノーラさんは珍しい回復魔法を使う薬師。
良くこの二人が空いてたなって思ったら、前いたパーティーが各自独立して商売したり農家に成ったりで、解散したかららしい。
結構上級冒険者だったんだろうな。
おまけに二人とも若く秀麗だ。
翌朝ムスクナを出る時、門の前で急に他の魔導車が割り込んだ。
窓が開くなり後ろの私達に向かって、「邪魔だよドルレイク家の魔導車の邪魔をするな!」
って言い放って町を出て行った。
「何、今のフリーパスじゃない」
「あれはドルレイク侯爵の魔導車ですね」
ゴドルフさんは知っているらしい。
「皆さん大丈夫でしたか、急ブレーキかけてすいません」
「いえいえ自動運転ですからその点は大丈夫ですよモーリスさん」
「あはは、そうなのですが。やはりね・・・」
この人情報局の出らしいけど、良い人だな。
普通秘密警察的な組織だと怖いイメージしか無いけどね。
だけどあの侯爵はいただけない。
「ドルレイク侯爵家は東の港町アンパーソが領地に有って、とても金持ちだから最新の魔導車を輸入したと聞いていた」
「あれがそうなの?」
「多分な」
「普通の魔導車は魔石を必要としますからね、燃料代も馬鹿に成りません。その点この魔導車はとても優秀ですね」
「そりゃイシタント様の魔導車だもの」
「レイナのもそうなのか?」
「私の豚さん車はインスタント・スキルで出した物だから、イシタント様の魔導車とも言えるわね」
「お前のスキル化物だな」
「失礼な」
私達はアシュタベルの手前の野営地で一泊して、明日の朝町に入る予定だ。
「迷惑な魔導車だな」
少し離れた所に侯爵の魔導車が停まっていた。未だ夜や朝は寒いので魔導エンジンをかけっぱなしで暖を取っている様だ。
流石に五月蝿くて回りにテントは無い。
「毛布二枚も掛ければ寒くは無いよね」
私達も毛布二枚掛けて眠る。
ただこの魔導車の椅子をソファーベッドにすると、他とは断熱効果が違い過ぎるけど。
だからと言って魔導車のエンジンをかけっぱなしは無い。
余りにも迷惑だ。
でも侯爵相手に喧嘩も売れないから、皆離れてテントを張るしか無い。
翌朝町に入り蓙を卸して梅林に向かった。
町から歩きなら2時間だろうか、例の森の入り口手前に、小高い丘陵地帯が有り、半分が梅林に成っていた。
そよ風に添う香りが心地好い。
「梅の香の添うがごときにたれが袖」
「レイナさんは詩人ですな」
「どう言う意味だ?」
「梅の香りの様に優しく寄り添う彼の腕を袖にあてたものですね」
「「「「「・・・あんたは天才か」」」」」
クルト君の説明には私がびっくりだよ。
その割には何で鈍感なんだろね?。
「・・・なっ何でレイナちゃん、僕を睨んでんの?」
そんな日和に出発・・・するのだけど。
何故かモーリスさん親子が街道に出た道にいた。
「あれ、どうしました」
「エンストしたみたいで、こんな事初めてなんだよね。神様からの贈り物だから直し方なんて解んないし、困っててね。レイナちゃん解る」
「いや流石に私もこれは」
『さてそろそろ良いじゃろ』
ブルン、ブロロ。
「あっ、動いた・・・?。神様の悪戯かな、レイナちゃんの家の近くだし」
「何処に行く予定だったんですか」
「ああ、アシュタベルのチューヤって所に蓙を届けにな」
「私は山家だったので余り平地の町は知らないんですよ、ご同行させて貰っても良いですか」
「それは勿論夏の星座の方々も喜ぶんじゃないですか」
「あれ?、夏の星座の人達もいるんですか」
「ええ、新しく加入した二人の女性冒険者の警護の為に、林の中にいますよ」
「あっ・・・お花ですね」
「おしっこだね」
「クルト君そんなデリカシーの無い事言うと女の子にモテないよ」
「・・・べっ別に良いよ」
「レイナちゃんにも嫌われるぞ」
「そっそんな事無いです。あっ・・・」
「「・・・」」
「コホン、二人とも真っ赤だな。さてさて戻って来たみたいだし、出掛けるか」
「モーリスさん直りました?って、レイナちゃん」
「こんにちわ」
「「「おう、こんちわ」」」
「「はじめまして」」
「今何故か丁度直ったよ」
「「「「「良かったあ~」」」」」
「レイナちゃん、車なおして(アイテム袋に仕舞って)こっちに乗って行くかい」
「はっはい!・・・乗る所は」
「今回は蓙ばっかりで余裕が有るよ」
「何で蓙を」
「梅の香祭りだよ。チューヤには大きな梅林が有って、この時期は賑わうらしいよ」
クルト君が教えてくれた。
「さっさ、早く乗った乗った」
急かされて出発。
ムスクナ経由で今まで走った事の無い道を行く。
「こんな良い道が有ったんですね」
「アシュタベルへの最短ルートだよ。アシュタベルは例の火山の森に隣接した町だね」
ゴドルフさんは流石に良く知っている。
「「この道をウェッド公爵は夜通し走ってレイナ救出に駆けつけたんだ」もう終わってたけどね」
「そうだったんですね。あの時はアルフレッド様にも皆さんにもお世話に成りました」
「ムスクナのギルドの対応が早くて良かったよ、本当に」
「そう言えばムスクナの代官ってどうなったんでしょうね?」
「ジュンベルグの領主の甥っ子がやってるよ」
「挨拶した方が良いでしょうか」
「「「別にいいだろ」」」
「レイナさんは迷惑かけられた方ですから良いと思いますよ。むしろ向こうから挨拶に来るべきでしょう」
そうこうする内にムスクナに到着した。
私は途中からクルト君にもたれ掛かって寝ていたらしい。
恥ずかしい、いや嬉しい。
クルト君は黙って寝かせていてくれた。
実は昨夜ネクトゥアル様とズルヴァン様の祠と石像をインスタントで造ってた。
一寸大きめにしてしまった。
置けるかな?。
まあそれで少し眠たかった訳ね。
ムスクナではモーリスさん達と同じ宿に泊まった。
「部屋代有り難う御座います」
「いやいや、今の私が有るのはレイナちゃんのおかげだから。あのマイクロ貰えたのもね。アキン道って加護もね」
ガルパンかっ!。
「「よろしくね」」
「こちらこそよろしくお願いします」
部屋は護衛の女性二人と一緒だ。
カトレアさんは魔導師で魔法使いの上位職なので援護が主。
メノーラさんは珍しい回復魔法を使う薬師。
良くこの二人が空いてたなって思ったら、前いたパーティーが各自独立して商売したり農家に成ったりで、解散したかららしい。
結構上級冒険者だったんだろうな。
おまけに二人とも若く秀麗だ。
翌朝ムスクナを出る時、門の前で急に他の魔導車が割り込んだ。
窓が開くなり後ろの私達に向かって、「邪魔だよドルレイク家の魔導車の邪魔をするな!」
って言い放って町を出て行った。
「何、今のフリーパスじゃない」
「あれはドルレイク侯爵の魔導車ですね」
ゴドルフさんは知っているらしい。
「皆さん大丈夫でしたか、急ブレーキかけてすいません」
「いえいえ自動運転ですからその点は大丈夫ですよモーリスさん」
「あはは、そうなのですが。やはりね・・・」
この人情報局の出らしいけど、良い人だな。
普通秘密警察的な組織だと怖いイメージしか無いけどね。
だけどあの侯爵はいただけない。
「ドルレイク侯爵家は東の港町アンパーソが領地に有って、とても金持ちだから最新の魔導車を輸入したと聞いていた」
「あれがそうなの?」
「多分な」
「普通の魔導車は魔石を必要としますからね、燃料代も馬鹿に成りません。その点この魔導車はとても優秀ですね」
「そりゃイシタント様の魔導車だもの」
「レイナのもそうなのか?」
「私の豚さん車はインスタント・スキルで出した物だから、イシタント様の魔導車とも言えるわね」
「お前のスキル化物だな」
「失礼な」
私達はアシュタベルの手前の野営地で一泊して、明日の朝町に入る予定だ。
「迷惑な魔導車だな」
少し離れた所に侯爵の魔導車が停まっていた。未だ夜や朝は寒いので魔導エンジンをかけっぱなしで暖を取っている様だ。
流石に五月蝿くて回りにテントは無い。
「毛布二枚も掛ければ寒くは無いよね」
私達も毛布二枚掛けて眠る。
ただこの魔導車の椅子をソファーベッドにすると、他とは断熱効果が違い過ぎるけど。
だからと言って魔導車のエンジンをかけっぱなしは無い。
余りにも迷惑だ。
でも侯爵相手に喧嘩も売れないから、皆離れてテントを張るしか無い。
翌朝町に入り蓙を卸して梅林に向かった。
町から歩きなら2時間だろうか、例の森の入り口手前に、小高い丘陵地帯が有り、半分が梅林に成っていた。
そよ風に添う香りが心地好い。
「梅の香の添うがごときにたれが袖」
「レイナさんは詩人ですな」
「どう言う意味だ?」
「梅の香りの様に優しく寄り添う彼の腕を袖にあてたものですね」
「「「「「・・・あんたは天才か」」」」」
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