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第47話 自鳴琴。
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「そろそろ本題に入るぞレイナ」
「あっ、はい」
「いちおう明後日ニューラに行って貰ってだな、夏の星座と護衛対象の5名それとギルト職員1名、他は運転手1名とその息子1名に荷物が少々そしてわしだ」
「それってもうサリーナ王女様御一行確定じゃ無いですか」
「ただ一つ違っていたのは・・・」
「奥様が魔女ですか?」
「いやもうじき旦那様に成る伯爵様がいる事だ」
「新婚旅行ですかあ~」
「いや婚前旅行だな」
「いいの?」
「構わんさもうローゼン伯爵邸に寝泊まりしとるし。事実婚みたいなもんじゃ」
「いやはや快適ですな」
「ローゼン伯爵普通の旅はこうは行きませんぞ」
「そうですわあなた、レイナがおかしいのですから」
「サリーナ様酷い」
「いやいや、レイナのスキルは卑怯だとわしも思うぞ」
「そうですなアシュタベル伯・・・子爵殿」
いつも名前の方で子爵付けて呼んでるからアシュタベルってすっかり忘れてた。
にしてもサリーナ様はもう伯爵をあなたって呼んでるんだね。
「アキュビューには綺麗な泉が有るらしいので早く見たいわ」
ん?、泉。
「あの里には泉なんて有りませんが」
「あら、壊れた井戸から流れ出た水が下の窪地に溜まって綺麗な池が出来てたわよ」
「ビョヲラさんそれ本当ですか」
「嘘言っても仕方無いでしょ」
「そんなに水圧無かったけどなあ」
『折角私の名前付けたのだから泉の一つも欲しいじゃない。だからレイナが造った井戸一つぶっ壊して、水を吹き出させてあげたのよ』
今この神様ぶっ壊したって言ったよ。
『ちゃんと片付けておいたわよ。ちゃんとね』
でもそんな圧力の有る水脈無かったのに。
『私を誰だと・・・』
「そんなに綺麗なんですか」
「泉の中に枯木立が有って朝焼けの日は幻想的だし、夜村の篝火の中に月が浮かぶ様はとても素敵よ。何と言っても水が綺麗で、あの水を飲むと身体の悪い所が治ったって聞くわ」
「ひぇ~。伝説の神の泉じゃ無いですか」
『だから神の泉よ』
勝手にそんなもん造るんじゃ無いわよ、観光客処か巡礼客と湯治客でごった返すでしょ。
『あら酷い。貴女の里の慰霊のつもりだったのに』
うっ、それを言われると。
『レイナ、わしが冷泉だけで無く温泉も出してやろう。あそこは盆地でそこそこの広さが有る。いずれ開墾され本当の村になろう。あの里の御霊に見守られる村にな。・・・そうじゃ本当の祠を一つ置いてくれ。時空神ズルヴァンの祠をな』
ズルヴァン様?・・・分かりました。
「ちゃん・・・レイナちゃん」
「あっすいません。一寸アキュビュート様とイシタント様に話し掛けられたもので」
「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」
「なあレイナとは何者なんじゃ」
「あらあなた、ただの可愛い女の子ですわよ」
「ローゼン伯、少しばかり神々に愛されておるわしの孫みたいなものじゃ」
「「「俺達の妹分」」」
「ギルドの可愛い宝です」
「はあ~、何も触るなと言う事ですな」
『そう言う事』
「なっ何者かっ!」
ガタガタ、ガタガタガタ。
突如ローゼン伯爵の横に人が立っていたので、皆が思わず剣の柄に手をかけていた。
『落ち着いて下さい。わたくし目ズルヴァンと言います。一寸の間御同行させて頂きます』
「あなたが時空神様ですか?」
『はい、レイナお初です』
「はじめましてズルヴァン様」
アキュビュー迄まさかの神様同行と成った。
『本当はネクトゥアルが同行したがったのですが、あの者ではレイナに酒を出させてばかりなので。それにレイナに少し話が有りまして』
皆はズルヴァンにレイナを取られて少し面白くないが、相手が神様ではどうしようも無い。
「あの石像をプルトップの町の教会に置くのですか?」
『そうです。あれには病弱の娘がおりましてね』
「でもかなりDVだったと聞きますが・・・」
『精神を病んだのですよ。男爵の言う事を聞いて無茶な仕事をする度、家族には疎まれるし、娘の為に全て我慢して来ましたからね。イシタント様におかれては、あの者の希望を叶え死をお与えに成りました。でも病弱の娘への思念は残されました。ですから娘が何時でも教会で会える様にと、会話は出来ませんがね』
「ビョヲラさんお願い出来ますか」
「いやいや、神様の頼みですから迅速に行いますよ。モーリスさんギルトから後で運搬の依頼お願いしてよろしいですか?」
「はい勿論」
皆マイクロに乗ってるから、こういう時話が早い。
そっとズルヴァン様が私に、継ぎはぎだらけでボロい縫いぐるみを渡してこられた。
「・・・これは?」
『その娘が大事にしていたのですが、石像に成る前に母親に暴力を振るったあの者に投げつけたものです。あれはずっと持ち歩いていた様です。心では誰か私のDVを止めてくれと願いながら。その縫いぐるみを持って寝ている娘に、あの者は良く歌を聴かせていたみたいですね』
『そこでレイナ、この縫いぐるみに歌は無理として、何か音楽を仕込めませんか。魔導具でない方法で』
「・・・自鳴琴なら」
「「「「「「「自鳴琴?」」」」」」」
『自鳴琴とは?』
ちょっと待って下さい。
私は5回掛けのインスタントでその箱を取り出した。
そして横の鋲螺を回した。
「「「「「「「こっこれは何だ!?」」」」」」」
「音楽を奏でる箱ですわね」
「どういう仕掛けだ?」
「凄いわレイナちゃん」
『成る程これを縫いぐるみ内に仕掛けるわけですね。良い発想です。ですが・・・』
「ですが・・・?」
『「「「「「「「余りにも音痴」」」」」」」』
『レイナ少し申し訳ないのですが、音が外れているようで、聴きづらいかと。職人に作り直して貰って良いですか』
「・・・・・・お願いします」
天上のキャスティーラ・ラピュートの主題曲を入れたオルゴールを、インスタント5回掛けで出したのに、私の音感が余りにも無くて。
・・・くっ、殺せ!。
この後ビョヲラさんはムスクナで降りて、知り合いのギルド職員に自鳴琴の中の、回転筒の音階調整が出来る職人を紹介して貰い、同時に王都へ私の豚さん車で走った。
おそらく私達がプルトップへ入る頃には像と、音痴でない自鳴琴が届いているであろう。
・・・くっ、殺せ!。
「あっ、はい」
「いちおう明後日ニューラに行って貰ってだな、夏の星座と護衛対象の5名それとギルト職員1名、他は運転手1名とその息子1名に荷物が少々そしてわしだ」
「それってもうサリーナ王女様御一行確定じゃ無いですか」
「ただ一つ違っていたのは・・・」
「奥様が魔女ですか?」
「いやもうじき旦那様に成る伯爵様がいる事だ」
「新婚旅行ですかあ~」
「いや婚前旅行だな」
「いいの?」
「構わんさもうローゼン伯爵邸に寝泊まりしとるし。事実婚みたいなもんじゃ」
「いやはや快適ですな」
「ローゼン伯爵普通の旅はこうは行きませんぞ」
「そうですわあなた、レイナがおかしいのですから」
「サリーナ様酷い」
「いやいや、レイナのスキルは卑怯だとわしも思うぞ」
「そうですなアシュタベル伯・・・子爵殿」
いつも名前の方で子爵付けて呼んでるからアシュタベルってすっかり忘れてた。
にしてもサリーナ様はもう伯爵をあなたって呼んでるんだね。
「アキュビューには綺麗な泉が有るらしいので早く見たいわ」
ん?、泉。
「あの里には泉なんて有りませんが」
「あら、壊れた井戸から流れ出た水が下の窪地に溜まって綺麗な池が出来てたわよ」
「ビョヲラさんそれ本当ですか」
「嘘言っても仕方無いでしょ」
「そんなに水圧無かったけどなあ」
『折角私の名前付けたのだから泉の一つも欲しいじゃない。だからレイナが造った井戸一つぶっ壊して、水を吹き出させてあげたのよ』
今この神様ぶっ壊したって言ったよ。
『ちゃんと片付けておいたわよ。ちゃんとね』
でもそんな圧力の有る水脈無かったのに。
『私を誰だと・・・』
「そんなに綺麗なんですか」
「泉の中に枯木立が有って朝焼けの日は幻想的だし、夜村の篝火の中に月が浮かぶ様はとても素敵よ。何と言っても水が綺麗で、あの水を飲むと身体の悪い所が治ったって聞くわ」
「ひぇ~。伝説の神の泉じゃ無いですか」
『だから神の泉よ』
勝手にそんなもん造るんじゃ無いわよ、観光客処か巡礼客と湯治客でごった返すでしょ。
『あら酷い。貴女の里の慰霊のつもりだったのに』
うっ、それを言われると。
『レイナ、わしが冷泉だけで無く温泉も出してやろう。あそこは盆地でそこそこの広さが有る。いずれ開墾され本当の村になろう。あの里の御霊に見守られる村にな。・・・そうじゃ本当の祠を一つ置いてくれ。時空神ズルヴァンの祠をな』
ズルヴァン様?・・・分かりました。
「ちゃん・・・レイナちゃん」
「あっすいません。一寸アキュビュート様とイシタント様に話し掛けられたもので」
「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」
「なあレイナとは何者なんじゃ」
「あらあなた、ただの可愛い女の子ですわよ」
「ローゼン伯、少しばかり神々に愛されておるわしの孫みたいなものじゃ」
「「「俺達の妹分」」」
「ギルドの可愛い宝です」
「はあ~、何も触るなと言う事ですな」
『そう言う事』
「なっ何者かっ!」
ガタガタ、ガタガタガタ。
突如ローゼン伯爵の横に人が立っていたので、皆が思わず剣の柄に手をかけていた。
『落ち着いて下さい。わたくし目ズルヴァンと言います。一寸の間御同行させて頂きます』
「あなたが時空神様ですか?」
『はい、レイナお初です』
「はじめましてズルヴァン様」
アキュビュー迄まさかの神様同行と成った。
『本当はネクトゥアルが同行したがったのですが、あの者ではレイナに酒を出させてばかりなので。それにレイナに少し話が有りまして』
皆はズルヴァンにレイナを取られて少し面白くないが、相手が神様ではどうしようも無い。
「あの石像をプルトップの町の教会に置くのですか?」
『そうです。あれには病弱の娘がおりましてね』
「でもかなりDVだったと聞きますが・・・」
『精神を病んだのですよ。男爵の言う事を聞いて無茶な仕事をする度、家族には疎まれるし、娘の為に全て我慢して来ましたからね。イシタント様におかれては、あの者の希望を叶え死をお与えに成りました。でも病弱の娘への思念は残されました。ですから娘が何時でも教会で会える様にと、会話は出来ませんがね』
「ビョヲラさんお願い出来ますか」
「いやいや、神様の頼みですから迅速に行いますよ。モーリスさんギルトから後で運搬の依頼お願いしてよろしいですか?」
「はい勿論」
皆マイクロに乗ってるから、こういう時話が早い。
そっとズルヴァン様が私に、継ぎはぎだらけでボロい縫いぐるみを渡してこられた。
「・・・これは?」
『その娘が大事にしていたのですが、石像に成る前に母親に暴力を振るったあの者に投げつけたものです。あれはずっと持ち歩いていた様です。心では誰か私のDVを止めてくれと願いながら。その縫いぐるみを持って寝ている娘に、あの者は良く歌を聴かせていたみたいですね』
『そこでレイナ、この縫いぐるみに歌は無理として、何か音楽を仕込めませんか。魔導具でない方法で』
「・・・自鳴琴なら」
「「「「「「「自鳴琴?」」」」」」」
『自鳴琴とは?』
ちょっと待って下さい。
私は5回掛けのインスタントでその箱を取り出した。
そして横の鋲螺を回した。
「「「「「「「こっこれは何だ!?」」」」」」」
「音楽を奏でる箱ですわね」
「どういう仕掛けだ?」
「凄いわレイナちゃん」
『成る程これを縫いぐるみ内に仕掛けるわけですね。良い発想です。ですが・・・』
「ですが・・・?」
『「「「「「「「余りにも音痴」」」」」」」』
『レイナ少し申し訳ないのですが、音が外れているようで、聴きづらいかと。職人に作り直して貰って良いですか』
「・・・・・・お願いします」
天上のキャスティーラ・ラピュートの主題曲を入れたオルゴールを、インスタント5回掛けで出したのに、私の音感が余りにも無くて。
・・・くっ、殺せ!。
この後ビョヲラさんはムスクナで降りて、知り合いのギルド職員に自鳴琴の中の、回転筒の音階調整が出来る職人を紹介して貰い、同時に王都へ私の豚さん車で走った。
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