異世界で山家として生きる者。

hikumamikan

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第41話 伝説の金属。

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ミスリル鉱山を粗方見学し終わり帰る日が来た。
そんな最終日に村長さんが不思議な鉱石を私にくれたよ。


帰りの豚さん車の中でサリーナ王女が私に質問して来た。
「それは何の鉱石ですの?」
「・・・う~ん、もしかしたらヒヒイロカネかも」
「オリハルコンとかでは」
「重さも硬さも違うと思います」
「アダマンタイトは」
「色が全く違います」
「・・・そのヒヒイロカネとは何ですの?」
「話だと遥か遠い東の国で採れる金属で、軽く錆び難い磁石に反応しない物だそうです。魔素は有る意味磁気に似ているので、先ほど魔素を通してみたのですが、凄く通り難かったです」
「それだとヒヒイロカネは武器にし難いのでは?」
「いえ、魔法を跳ね返したり遮断する性質が有ります」
「あっ、成る程魔素を弾くと」
「そう言う事ですね」
「ミスリルとは逆だけど、使い道は有るわけですね」
「そうなりますが、溶解して取り出してみないと何とも」


「真鍮だな」
「「「「・・・」」」」
「キィ・・・それは言わないでほしかったのだけど」
「ヒヒイロカネって真鍮なんですの?」
「特徴からすれば多分」
「なぜ鉱石の状態で」
「太古に何らかの装飾品が熱で熔けたのかも知れません」
「何か期待外れですわ」
それでも2000年以上昔に真鍮が有ったのだから凄いと思う。

「おかしいですわ」
「何がですかサリーナ様」
王女の言葉にカリーナさんがハテナに成った。
「だって今の武器に何故真鍮が使われていないのですか?」
「魔法を防ぐ装飾にはある程度使われていますが、完全に魔法は防ぎ切れませんし、刃物には向きません。つまり効力が弱いと言う事です」
ビョヲラさんがスバっと王女の言葉を斬り捨てました、はい。
「むっ昔はそれなりに使えたのかも知れませんね」
一応フォローはしてみた。

変だなあ村長さんなら真鍮だとある程度の予測は出来たはず。
なら何故これを私に・・・。
アルフレッド様に調べて貰うか。


モーリスさん親子はあのマイクロで色々な商売を考えているらしい。
拠点はニューラにするって言ってた。
そんな話をしてニューラへの入門を待っていたら。

「うらっ、どかんかいチビ」
いきなり酔っぱらいが殴りかかって来た。
モーリスの息子さんが体を挺して防いでくれた。
酔っぱらいはビョヲラさんによって気絶させられた。
「大丈夫ですか」
「ええ、それより・・・」
「あ、クルトです大丈夫ですよこれくらい」
ちょっと腕を捲ると赤くなってはいたが、大した事無さそうだ。
良かった。
それにしても私は長く息子さんと護衛で一緒だったのに、初めて名前を聞いた。

「にしても昼間から酔っぱらう冒険者って最低ですわ」
あ~耳が、耳が痛い。
しかも私は飲酒運転だったし。


取り敢えず無事?町に入った私達はアルフレッド子爵邸に向かい、サリーナ王女を送り届けた。
その時あの鉱石も渡した。

「レイナちゃんは今日はどうするの」
「一先ずギルドの宿が空いてたら泊まります」
「そうそれじゃまた明日の朝にお会いしましょ」
「はいお疲れ様でした」
「「「「「「お疲れ~」」」」」」



「アンナさん今日宿の部屋空いてる?」
「女子棟も空いてるよ~」
「じゃ部屋お願い」
「あいよ、203号ね」
アンナさんはそう言って裏に並んで建つ冒険者ギルドの、安宿の女子棟の鍵を渡してくれた。
直ぐに帰れるのに普通の宿に泊まる必要もないからね。
ご飯もギルドのイートコーナーで済ます。
そんな訳でご飯や部屋に行く前に依頼表を見渡してみた。

変わらず魔物は数が多い様だ。
討伐依頼が去年の倍はある。
だからか護衛依頼も多い。
「・・・何よこれ」
さっき男性職員が張ったばかりの依頼を見て声が出た。
(王都迄の護衛依頼──依頼者サリーナ。 対象者サリーナ本人とメイド2人に執事一人。別に護衛として騎士16名とギルド職員一名が同行。 出来れば冒険者のレイナと夏の星座のクランが望ましい)
やっと帰って早々なので、指名依頼をして来ないが・・・王女の依頼を断る馬鹿はいない。

「エールとハンバーガー頂戴」
イートコーナーのおやじさんに頼むと。
「はいハンバーガーとミックスジュースな」
「これエールじゃ無いよ」
「悪いなもう麦茶は出して無いんだ」
「いや麦茶はエールとちゃうし、原料が同じだけだし」
「こ・ど・も・にエール出す店はね~よ。我慢しな」
「持ち込みは」
「エールの持ち込みは駄目だ」
「エールは駄目なの」
「エールは駄目だ」
私はミルクサワーを出して飲み始めた。
「なっ何だそれは!?」
「ミルクサワーだよ」
「何だそのミルクサワーってのは」
「酒精が5度ぐらいのスピリッツとミルクを炭酸鉱泉で割った物だよ」
「・・・わからん」
面倒なのでおやじさんにも飲ませてあげた。
「旨いなこれ。てかおいエールよりちょっと弱い酒じゃねえか!」
「これぐらい勘弁してよ」
「・・・しゃあねえなもう。一杯にしとけよ」
「そうする」
「・・・・・・」
「どうしたの」
「いやなに、ハンバーガーもミックスジュースも、お前さん自分で出せるだろって思ってな」
「気分だよ気分。それに持ち込みはまずいでしょ」
「・・・だったら部屋で飲めよ」
「気分だよ気分。この方が旨いから」
おじさんは呆れて厨房へ戻った。


翌朝。
「また王都へ行くのかあ~」
夏の星座の皆さんが膝をついて項垂れる姿を目にしたレイナ。
そうだよね、そうだよねえ~。

翌々日王女一行と夏の星座が門前に集まる中、私はキョロキョロと辺りを見渡すと。
「モーリスさん親子はいないよレイナ」
「っキィ違うよ、ちょっと警戒してただけだから」
「その割には顔が赤いぞ」
「そっそれは昨晩梅酒を飲みすぎたから」
「何故私を誘って下さらなかったの」
「サリーナ王女様あの様な庶民のお酒を余り飲まれるのは・・・」
「「「「「「レイナ・・・あれは庶民がそう飲める様なもんじゃないからね」」」」」」
「あっはい分かりました」
「分かったら道中の宿でも頂きたいわ」
「越権だよ~」
「「「「「「「ジ~」」」」」」」


「出しますよ。出しゃあええんでしょ」

かくて王都から戻った頃には冬に入っていた。
そして何故かモーリスさんの商品に梅酒が加わる。
色々な物や人を運ぶ商売をしているらしく、早くて安全なので料金は少しだけ高いけど人気らしい。
少し高くしないと他の区間馬車とかの客を取ってしまうからね。
まあ特急券みたいな感じ。
空でこちらの街道を戻る事が2回有って、モーリスさんとクルト君が私の祠じゃ無く実家にお泊まりした。

えっ、女性の一人暮らしに男性が2人泊まるとはだって、あのねキィ居るの知ってるから2人とも。


そんな心配は要らないし、クルト君が・・・来たら私。
私は・・・。
わっ!。
今の無しでお願いします。
お願いします。
「おねがーい!」

私は夜中そんな夢で起きた。
口に出てないよね。
2人とも・・・寝てた。
あ~良かったぁ。

「初恋だね」
「キィ・・・お黙り」
私はクルト君の寝息にドキドキしてなかなか寝られなかった。

確かに男の人にこんな気持ちを抱いたのは初めてかも。
やっぱり身を挺して守ってくれたら惚れちゃうよね。

うん、寝よう・・・。
あ~でもクルト君は私の事、どう思・・・。

すぴ~。
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