異世界で山家として生きる者。

hikumamikan

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第34話 休息は山に限る。

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ニューラに帰って来たら疲れたのか熱を出して寝込んでしまった。

アルフレッド様は途中王都にナットラム様と寄られ、暫く滞在される事に成った。
馬車より豚さん車が良いと年甲斐もない我が儘を言われたアルフレッド様だけど、そのまま王都に二週間も隔離・・・いや、国王陛下にご報告の為お留まりに成りました。

だけど一人で熱を出して寝込むと寂しいな。
キィが時折おでこのタオルを代えたり、お水の用意やお粥を作ってくれるので助かる。
まさかお猿さんにお粥を作って貰うとは思ってもいなかった。
(本当は白い大蛇だけど)
「何か言った?」
「なっ何も・・・言って無いよ」
思っただけだからね。


まあ大蛇の格好ではこの家では過ごせないからねえ。

体が回復して数日したらイシタント様の祠でも掃除しに行こう。
ついでに祠で一泊させて貰い鋭気を養おう。
山の空気を少しは吸わないと死んでしまう。
いや死なないけどね。
イシターの凱旋やね。
・・・イシターの凱旋?、はて何だっけ。
何故か突然頭に浮かんだ。
何か凄く重厚なリズムが、ダンダダダダン・ダダダダンって頭に響くけど、風邪引いて頭痛いから止めて欲しいリズムだ。
『酷い』
私は空耳を無視した。

三日寝込んだが無事回復して更に3日後、私は豚さん車で祠に向かった。
途中からの山歩きがしんどかった。
「情けなやレイナ」
独り言を言いつつ歩いて、体力の低下を嘆くのだ。

「あー山の空気が旨い」
山と言っても裾だけど、やはり町とは違う何かが有る。
山家として山を渡り歩いても病気に成らなかった私が、海辺の町や島を行ったり来たりしただけで、しかも豚さん車なのに寝込んでしまった。
町に居る事が多く成って体が鈍ったかな?。
『ん~、ちょっと違うかな。人はな、長距離を移動すると徒歩や乗り物であろうと免疫が低下する。レイナがあの間に移動した距離は山家が移動する一年分に相当したんじゃよ。将来的にお主が転移魔法を覚えた時には、移動したら自分自身に回復魔法を掛けよ。それと栄養ドリンクもな。解ったか怠るなよ』
「はっはい・・・」
免疫が低下するって、移動で?。

そう言えば魔素が体を多く貫通すると病気に成り易いって、昔山家のおじいさんから聞いた事が有る。
つまり目に見えない小さな体を貫通する物質は・・・距離の長さによっては影響を及ぼすって事か。
だから徒歩や乗り物に関係が無いんだ。
『そうじゃな。船乗りは長距離だが何日も掛けておるし、常に体を動かし鍛えておる。しかし移動だけ考えるお主達にはそれが無い。豚さん車にはそう言った弊害も有るな』
あっ、魔物討伐の野営だと緊張感も有るから、割りとそう言えば休憩をしてたな。
だから旅も時間がかかっていた。
『そうじゃな夜警の緊張感とか昼間でも警戒が有るから、頻繁に休憩を取るからのう。馬車だと馬も休ませるしな』

「イシタント様・・・魔素って何なのですかね。昔から気になっていたのですが」
『お主は光や電撃が何かは少し理解しておるよな、つまり魔素とはその仲間の様なものじゃ。集まり他のものと影響し合えば変質もするし、結合も分解もする。人がイメージする事で色々変化もする。便利でもあり凶器でも有る訳じゃよ。故に神は時折強欲に駆られ魔素を極端に欲する者を罰する。あっ、レイナの欲は可愛いものじゃから心配要らんよ』
「僕がそうして暴れたから罰を受け死にそうに成ってたんだよ」
「えっ!、キィがあの時瀕死だったのはそうなの?」
「まあね」
私は昔普通サイズの白蛇を助けた事が有る。
それが今のキィだ。
『こやつは元の名をギョウリと言っての亜空間航行が出来る魔物じゃよ。その力は端の神に匹敵してな、有る所ではミワと言う名で住んでおった。レイナとも其処で繋がりが有る』
「・・・・・・ちょっと解りませんが?」
『まあ記憶になかろうて。だがこやつにはレイナを守る責任が有るのじゃよ』
「・・・そうなんですか」
「そうなんだよ実は。助けて貰った以外にもね。話せないけどね」
『わしが禁忌とした』
「近畿ですか?」
『禁忌じゃ。都付近の州では無いぞ』
「はあ?」
『レイナはイワクニを記憶しておるか?』
「お馬さんの名前ですか?」
『・・・また変な処は記憶しておるなあ』
「未勝利馬じゃね~か」
「へっ?」
『何でも無い。もう良い忘れよ』
「はい」
「切り替えはえ~!」
「だって考えても無駄な事って有るじゃん」


私だってわかってる。
そう変な記憶が有る事ぐらい。
だけど幾ら昔から考えても無駄な程分からない。
何も思い浮かばないと言うか、すっぽりと無いんだよ。
大事な部分が。
本当にすっぽりと。
だからとうに諦めた。


この日は祠に泊まった。
人が三人は泊まれる広さは有るし、現に泊まった形跡も有る。
でも見えない筈なんだけど。
「魔力が強い人は見えるよ」
「えっキィそれ本当?。イシタント様は私以外見えないって」
「イシタント様は意外と大雑把だからね。レイナの魔力に合わせたんだね。だけどレイナは本当に全力は出した事無いからね」
「そうなの?」
「そこ、自覚が無いよね」
「いやいや結構全力で戦ったよ」
「う~ん・・・覚醒してないのかもね」
「そう言われてもねえ。わかんないよ」
そんな話をキィとしてたら寝てしまった。


「グウ~」
晩飯食べるの忘れた。
余程疲れてたのかな?。
思ったより回復して無いね。
私は栄養ドリンクをインスタント5回がけで出して飲んだ。
「私も歳を取ったもんだ」
レイナは十三歳で有る。


祠を掃除してお供え物(ミルク饅頭)をして、街道に出る手前で出会した。
「インペリアル・ブルですか」
此方から何もしなければ大人しい魔物だ。
ただしかなり強い。
ワイバーン級の魔物だよ。
何でいるかな此処に。
高級食材で角も高く売れるし、毛皮も一級品だ。
だけどね別に討伐する必要は無いからね。
無理にお肉必要無いし角も毛皮も必要無い。
何より普通に生活してるのに殺す必要が無い。
何もしなければ本当に大人しいんだよ。


私は側をそっと通り過ぎて街道へ向かった。
インペリアル・ブルは何事も無かった様に辺りの草を食べている。
ゆっくりと私は街道へ何事も無く向かったけど。


「ぎゃあー!」
私は突然インペリアル・ブルがいた辺りで人の悲鳴を耳にした。
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