異世界で山家として生きる者。

hikumamikan

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第9話 男爵芋は好きですが男爵位は要りません。

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「ううう、やっぱり行かないといけませんか?」
「いやもう既に馬車に乗っているのだが」
「ぷくく」
レイナにつっこむアルフレッド子爵、それを見て笑うウェッド伯爵。

そうもう既に王都へ向かう馬車の中なのだけど。
「まあまあ、わしはおそらく降格して男爵か平民だが、アルフレッド殿は伯爵そしてそなたは男爵だろう。むしろ喜ぶべきだと思うぞ」
「私は他領に兵を出した咎でむしろ男爵かも知れんが、やはりレイナだろうな今回は。子爵は充分に有る」
「いやいや、いや。・・・男爵芋は好きですが爵位は要りませんよ。だって好きに山に入れなく成るでしょう」
「「・・・・・・男爵芋?」」
「えっ、・・・」



男爵芋って何だっけ?、あれぇ~。


王都迄は馬車で6日だった。
ムシュクと言う村では宿が無く私が馬車の中で女の使用人さん達と寝た。
もう一つの馬車も奥方や娘さん達だ。
何と伯爵も子爵テントだった。
申し訳ないと言ったら、戰場では当たり前の事だから気にしない様言われた。


ムサクと言う町では町の中なのに道がガタガタだった。
「補修する金が無いのだな」
「ああ領主のタガルは金銭面では無策だからな」
ツッコミたいのだが何か違う・・・あれっ?。
因みにこの町はスルー。
そして私が何故この二人と一緒かと言えば、陞爵の可能性が高いからだそうだ。
「いえそこは陞爵でなく爵位授与では」
「うっ」
「レイナ年寄りを苛めるな」
「アルフレッド殿も酷いな」
「こっこれは失礼しました」
「「レイナ子爵の授与も・・・」まっぴらです」
「「・・・・・・」」
「私は山が好きなんです」


「話は変わるがレイナはスキルを調べた事は有るのか?」
「山家に成った者はスキルを授からなかったから、仕事が無いので成ったと聞いています。だから私も多分無いです」
「「いやいやレイナは捨て子だったと聞いたぞ」」
「あっ、そうか」
「「忘れとったんかい!」」


てなわけで王都で私はスキルを調べる事に成りましたとさ。


「この村が最後の宿泊地じゃ」
「伯爵様割りと宿が有りますね」
「うむ、ここは養鶏が盛んだからな。荷馬車なら王都迄は四分の一日で運べる。夕方に来ても明日の市場には間に合う。だから宿が多いんじゃ」
「・・・私でも鶏卵買えますか?」
「どうじゃろ?個数によるかもな」
「最低でも五百かな」
「子爵様それは無理です」
「だろうな。だから商人しか買わん」
「残念、王都で買います」


宿はやはり暖かい。
旅の疲れかこの日は晩飯後には直ぐに寝てしまった。
早朝に出立。
ようやく気温が上がったかなって頃に王都に着いた。
息が少し白く成り始めたかな。
「でかい壁!」
「まあ王都だからな」
「六十万都市だし」
「ふえ~ぇ。六十万ですかあ子爵様」
「そうじゃうちの町なぞ3万じゃぞ」


結構並んだが一時間くらいで門はくぐれた。
格からして今日は伯爵様の屋敷に泊まる事に成っている。
思ってたより大きくは無い屋敷だった。
「王都泊まりだけだし、小規模のパーティーが開ける程度の屋敷じゃよ」
「伯爵様は人の心が読めるので?」
「いま小さいと言ったではないか」
「えっ・・・」
「・・・ったく」


この日は服のサイズ合わせで終わった。
いや、飯は旨かった。
貴族は毎日こんなもん食っとるのか?。
「毎日は食っとらん」
・・・やはり伯爵様は心が読める。
「だから~、口に出とる言うとる」
「あっ・・・」


それから3日。
謁見だ。
謁見の前に国王と宰相とか偉い人に護衛の騎士に囲まれて、個人面談が行われた。
流石に緊張した。
チビった。
いや嘘、チビって無いから。

それから一時間の休憩後謁見。
おお、ずらりと両脇に王都泊まりの貴族に、間々に護衛の騎士が。
その中央に敷かれた真紅の絨毯の上を進む。
此が謁見の間かあ。
国王の数歩手前でアルフレッド様とウェッド様が片膝ついて頭を下げたので、慌ててそれに倣え右。
「倣え右とは何じゃ?」
王様がいきなり聞いた。
「へっ?」
伯爵様と子爵様は頭を下げたまま笑っている。
・・・酷い。
「いっいえ慌ててお二方の仕草に倣いましたもので」
「それを口に出すとは面白い娘じゃのう」
「もっ申し訳御座いません」
「面白いから許す」
「「くっくく」」
お二方声に出てるよ。
人の事は言えないレイナだ。


「おっほん。ではこの度の裁決を申し渡す。先ずはアルフレッド・ラミラーゼ子爵は他領に40名の衛士を出したが、ウェッド・フランドル伯爵の口添えも有り、この度は事も事だけに不問に処す。まあ盗賊捕縛も助かった。それでムスクナの町を加増するが子爵のままと言う事に成った。・・・ウェッド・フランドル伯爵だが流石に子爵降格は免れぬ。それと先の通りムスクナの召し上げじゃ」
「国王に申し上げます」
「何じゃ」
「この度の盗賊は我が依子の男爵が犯した重大な罪で犠牲者も多く、子爵降格とムスクナ召し上げ程度では罪が軽すぎるかと、男爵あるいは平民に格下げが妥当かと思います」
「さもありなん。しかるに、ムスクナはともかく・・・そなたの領に隣接する3つの領主があの男爵から賄賂を受け取っておった」
「「「「「ざわざわ」」」」」
「静粛に!」
宰相様の声が響いた。
「よってじゃ、その3名からも領地を召し上げた。だが上手く固めて一つの天領したのだが、改めてレイナに子爵位を授けようとしたが断られた」
「「「「「何と不敬な!」」」」」
「静粛にせんか!!」
宰相様の声が大きく響いた。
「不敬では無い。此方が勝手にした事じゃ。受けるか受け無いかはレイナの自由であろう。よってかの地は天領のままと成る。それで3名は降格しておらぬゆえ、そなたは管理責任は有れど賄賂を断っておるし、捕縛にも向かっておる。そなたを其処まで降格させると国としても、3名の処遇からしても色々不都合が起こるのじゃ。・・・そこで一つ提案がある。レイナは国で保護すべき人物で有る故にそなたに任せたい。それで勘弁してくれんかウェッドよ」
「わっ分かりました。寛大な御処置並びにご使命有りがたくお受け致します」
「此にて謁見を終える」
「あの・・・」
「レイナ何じゃ」
「私・・・実は家を借りたその日に襲撃を受けまして、その玄関を破壊されたので家主様にどうお詫びをしたら良いか」
「・・・プッ。分かった国費で家主に修理費を払おう。それぐらいはさせてくれんか。爵位を断られた面子の為にもな」
「有り難う御座います。助かりました」
「「「「「わーはっはは」」」」」
笑う事無いと思う。



この謁見の次の日に教会でレイナはスキルを調べて貰った。
「「インスタント・・・何じゃそれは?」」
「何でしょう司祭様」
「・・・すまぬ。私にも判らぬ」
「あっ」
レイナはポンと手のひらを拳で叩いた。
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