【完結】イケメン好きだけどあなたの顔がいいと思っていることは知られたくありません!

かほなみり

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チョロいってこういう事?

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 そうしてちゅっと音を立てて耳朶に口付けを落とした。そのくすぐったさに肩を竦めると腰に回っていた腕がぎゅうっと私を強く抱き締める。

「……ふふ、か~わい、耳が真っ赤」

 はむ、と耳朶に柔らかな感覚が走った。

「⁉」
「耳が熱いね。恥ずかしい?」
「あ、アデル!」
「うん? いいね、やっと普通に呼んでくれた」

 そう言ってまた耳朶を柔らかく唇で挟み、はむはむと甘噛みをする。

「ぁっ、やだ、何して……!」
「貴女のしてほしいことを探そうと思って。それとも教えてくれる?」
「……んあっ!」

 ぬらりと耳朶に生温かいものが這う感覚に、思わず声が出てしまい慌てて口を押えた。アデルはその手を取りやんわりと抑え込む。

「大丈夫、人はいないから声出してもいいよ」
「そっ、そういう問題じゃないわ!」
「ね、騎士の隊服が好きなカタリーナは、騎士の俺に何して欲しい? 拘束? 俺もそういうのはしたことないなあ」
「お願いだからおかしなこと言うのはやめて!」
「貴女がそうやって恥ずかしがると、俺としてはもっと恥ずかしがらせたくなるんだよね」
「!」

 その言葉にプルプルと身体が震えた。じわりと視界が歪み、顔が熱い。
 どうしようどうしようどうしよう! 恥ずかしすぎるわ!

「か、帰ります!」
「やだ。帰したくない」
「アデル!」
「もう少し。ね? お父上には俺から謝るから」
「そんなこと、許されるわけ……」
 
 思わず振り返ると至近距離にあるアデルと目が合った。慌てて顔を逸らすと、顎を掴まれ振り向かされる。
 視界いっぱいにアデルがいると思った瞬間、唇に柔らかな感触がして、ちゅっと音を立てて離れた。
 
「え、なん……」
「こんな事をするのは貴女だけだよ」

 そう言うと、アデルはまた私の唇に口付けを落とした。
 柔らかくついばむ様に、優しく触れて離れ、また触れる。

「だ、だめ!」
「それは無理」
 
 アデルの唇が優しく唇を食み、柔らかさを確かめるようにやわやわと甘噛みする。

「……カタリーナ」

 唇を少し触れさせたまま、いつもと違う低い声で囁くように名前を呼ばれると、眩暈のように頭がクラクラする。いつまでも近くに感じる気配にそっと目を開けると、至近距離にある青い瞳と目が合った。

「貴女が好きなんだ。……信じてもらえるまでずっと、貴女に愛を伝えるから」

 そうしてまた柔らかく唇が合わされた。

「……好きだよ」

 ――その言葉ひとつに気持ちが傾く私は、メグの言う、チョロい、のだろう。

 ソファの上で身体を仰向けにされ、正面からぎゅっと強く抱き締められた。肩口に顔を埋めるアデルの胸を押し返そうとしても、もちろんその身体は微動だにせず、掌に感じる騎士の隊服の硬い感触の向こうに、アデルの心臓の音を感じた。
 
「……アデル、私……貴方の言うとおり、素敵な外見の方が好きなんです」
「うん……うん?」
「イヴァン様は大好きですけど舞台俳優も好きですし、夜会で素敵なジャケットの方も街ですれ違う職人のような方でも素敵だなと思う事はありますしそれが大抵その時に読んでいる本の影響だということは他人に言われるまでもなく自分でよく分かっているんですがそう思ってしまうのは仕方ないことなんです」
「……んん?」
「ですから! 私は恋物語が好きなんです! そこに登場する素敵なヒーローが好きだしそれを演じる俳優も好き! だから私が貴方のことをどういう風に思っているのか自分でもよく分からなくてでもどちらかというと今までで一番好みの顔だし騎士の隊服も信じられないくらい似合っているし貴方といるとすごく楽しいし飽きないし私は貴方が好きなんだと思うけど!」

 アデルががばっと顔を上げた。でも私はその顔を見る勇気はない!
 
「……ほんとに?」

 アデルの掠れた声が降ってくる。ぎゅうっと目をつぶっているからどんな表情か分からない。私はもう火を噴きそうな程、顔が熱い。きっと真っ赤だわ。

「お、同じことは言わないわ!」
「ふふっ! そうだね、でも俺はちゃんと聞いたよ。好きだよカタリーナ」

 アデルは私を抱き締めながら、ありがとう嬉しい、好きだよ、と何度も繰り返し、なにそれかわいい、と身体を震わせて笑った。

「あ、アデル、もう……ん、んんっ⁉」

 どいて、と言おうと胸を押すと齧り付くように唇を塞がれた。
 アデルの熱い唇は、先ほどまでの啄むような口付けとは違い、私を食べ尽くそうとするように大きく開き吸い上げ食む。苦しくて顔を逸らし空気を取り込むと、そこにまたアデルの唇が合わされ、ぬるりと温かいもいのが口内に侵入した。
 アデルの舌が口内を舐めまわし引っ込んでいた私の舌を絡め取る。舌先を擦り合わせると、びりびりと身体が痺れた。
 気持ちよくてアデルの舌の動きをまねすると、口端から唾液が零れた。
 ちゅぷっと音を立て離れると、息が上がっていて苦しい。身体が熱くて力が入らない。ぼんやりアデルを見上げると、いつもの青灰色の瞳にギラギラとオレンジ色の虹彩が走っていた。
 
「鼻で息をしてカタリーナ、ほら……舌、ちょうだい……ん」
「……っ、ぁっ、んむ……っ」

 言われるままに舌を出すと、ぐちゅぐちゅと音を立ててアデルが舌を扱くように吸い上げた。その音の卑猥さに身体が熱くなる。
 やがてアデルの手が、私の太腿をドレスの上から大きく撫でまわした。撫でまわすたびにスカートが捲れ上がり、その大きな掌がするりと中に侵入してくる。

「あ、あでる、まって……!」
「やだ。なんで?」
「こ、こんなところで……」
「そっか、そうだね、貴女との大事な時間だから……移動しようか」
「そっ、そういう意味じゃないわ!」
「どうして? 貴女も続きがしたくない?」
「卑猥だわ、変な言い方しないで!」
「卑猥じゃないよ。俺は貴女を愛したいだけだ。それとも、初夜までしない?」
「そっそうよ!」
「却下」
「じゃあどうして聞くのよ⁉」
「そんな先まで待てるわけないし、貴女も続きがしたいでしょう」
「したくないったら!」
「意地っ張りだなあ」

 アデルの指がスカートの中でついっと私のお尻をなぞった。

「あっ!」
「ほら、もう敏感になってる」
「や、やめて!」
「ほんとに? 本気でやめてほしいならやめるけど」

 アデルが体を起こし、私を見下ろした。紺色の隊服の詰襟をグイっと引っ張り首元を緩める。後ろに流していた髪が、はらりと落ちてきたのをかき上げるしぐさに頭がクラクラした。
 やめてほしくない。そう、全然やめてほしくない!

「カタリーナ? ……移動しようか」

 アデルはふっと息を吐きだしそう言うと、私を横抱きに抱き上げた。
 
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