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レンナルト2
しおりを挟む「おかえりなさいませ」
屋敷に戻ると、住み込みで雇っている夫婦が出迎えた。
やや年配の夫婦は夫が元騎士で、戦で怪我を負い庭師として働いていたところをゾーイが気に入り、留守にしがちな屋敷をずっと管理してきてもらっていた。タウンハウスに移っても引き続き管理を頼んでいる。
「お食事はできていますが、後にしたほうがよろしそうです」
「あと?」
不思議な物言いに首を傾げると、階段上から明るい声が響いた。
「レンナルト、おかえりなさい!」
「ゾーイ!?」
階段を駆け下りてきたゾーイが、がばっと首に抱き着いてくる。その身体を受け止め、細い腰に腕を回しぎゅうっと抱きしめた。ゾーイの肩口に顔を埋め、その愛おしい香りを深く吸い込む。
「どうしたんだ、来月まで忙しいんだろう?」
「驚かせたくて来たの。また向こうに戻らないとだめだけど、どうしても会いたかったから」
いつの間にか玄関ホールには俺たちしかいない。
「俺も会いたかった。――ああ、嬉しいサプライズだ」
深く息を吐きだし抱きしめていたゾーイを床に降ろすと、はちみつ色の瞳が嬉しそうに俺を覗き込み、背伸びをして俺の頬に口付けをする。「ただいま」と囁く彼女の声に、俺の全身が喜びと愛おしさに震える。今すぐ抱き上げて二人の部屋に引き籠りたい。
「おかえり、ゾーイ」
そういうと今度はどちらともなく唇を合わせる。甘くやわらかな唇に引き寄せられ、何度も触れ合い、優しく食む。くすぐったそうにゾーイが身を捩った。
「ね、素敵なサプライズがあったわ」
「なんだ、もう見たのか?」
「ええ」
「直接驚いた姿を見たかったのに」
「あは、ごめん。でも本当に嬉しい。すっごく素敵だわ、ありがとうレン」
「よかった。前の家では果たせなかったからな」
手袋を外しするりと白い頬を撫でると、掌にすり、と顔を寄せて目を瞑るゾーイのバラ色の唇に、そっと唇を押し当て額を合わせた。
「……お湯は用意してもらったわ」
「今から?」
「ええ。素敵な香油も垂らしたの」
「それはいいな。ゾーイの好きなキャンドルもあるぞ」
「嬉しい!」
ぎゅっとしがみつくゾーイの腰に腕を回しぴったりと身体を合わせる。
「二人で一緒に入れるわね」
「そのためにあれにしたんだ」
「あんな大きな浴槽、よく入ったわね!」
「ヨルクが業者と頭を抱えていたぞ」
「まあ!」
あはは、と声を上げて笑うゾーイをもう一度抱き上げ、今度は横抱きにする。ぎゅうっと首にしがみつくゾーイを抱えたまま、速足で階段を上り夫婦の部屋へ向かった。ゆっくり話したい気持ちと、早く二人になりたい気持ちがせめぎ合う。
「夕食は?」
「先にこっちだ」
「待って、じゃあ部屋に運んでもらいましょう」
「大丈夫、言わなくても運んでくれる」
「そ、れは恥ずかしいわ!」
「今更?」
ふはっと声を上げて笑うとぱしっと肩を叩かれる。
ああ、なんて愛おしいんだろう。この何でもない幸せが、こんなにも俺を癒し幸せな気持ちにしてくれる。ゾーイの存在が、俺をこんなにも満たしてくれる。
「もうひとつサプライズがある」
「私もよ。喜んでくれるといいけど」
「でも先に、ゾーイと一緒に湯に浸かりたい」
「……浸かるだけで済む?」
少しだけ期待に満ちた瞳が俺の瞳をとらえたまま近付き、控えめに唇を合わせる。すぐに離れようとするその唇を追いかけ、甘く嚙むとうっすらと唇が開いた。
その隙間に舌を差し込めば、すぐに舌先が絡まり激しく擦り合わせた。
「ん……んむ、ふあ……っ、ぁ、あ、レン……」
甘い口内を蹂躙すると、気持ちよさに蕩けるような声を出す。そんなゾーイにぞくりと下半身が震えた。
(くそ、我慢できない)
慌てて部屋の扉を足で開けるとゾーイが身を捩って笑った。
「お行儀悪いわ! 師団長殿!」
「すまない、有事なんだ」
「有事って!」
声を上げて笑うゾーイを急いで浴室へ連れていき床に降ろすと、また互いに激しく唇を合わせた。唇を食み舌を絡めながら、互いの服を脱がせた。足元にバサバサと落ちていくマントや隊服を足で横に蹴り慌てるように靴も脱ぐ。裸になり抱きしめ合えば、触れ合う素肌の気持ちよさに身体が熱を帯びていく。
「んぁ、待ってレン、お風呂は」
「ごめん、先にこっち」
「え、先にって……んあ! あっ、あんっ」
ゾーイの肌を掌で確認するようにまさぐり敏感な部分を攻めれば、すぐにその白い肌がピンク色に染まる。ゾーイの腰を持ち上げすぐ近くにある鏡台に座らせて脚の間に身体を滑り込ませると、俺の熱に触れた彼女が身体をびくりと震わせた。
「い、いつの間に?」
「仕方ないだろ、久しぶりに会うんだし、もう声だけで我慢できない」
「ば、ばか!」
「ほら……ゾーイもよさそうだ」
「あっ!」
脚の間でゆるゆると腰を擦り付けると、ゾーイの蜜壺がすぐに潤いだし俺の熱杭を濡らした。
「凄い濡れてる……口付けだけでこうなった?」
「ん、あ……、はぁっ、あっ」
赤く染まる耳元で声を落とせば、ゾーイの身体がふるりと震えた。ゾーイがぎゅっと俺の首にしがみつき、俺の肩に顔を埋める。髪をアップにしているゾーイの白いうなじがピンク色に染まっていくのを見て、ぞくぞくと身体の内側から興奮と早く彼女の中に己を突き立てたい気持ちが沸いてくる。
(くそ、もう挿入したい)
「ゾーイ?」
「あ、んんっ」
顔を伏せたままゾーイが甘い声を漏らす。
その腰は無意識に揺れ、俺の熱杭に擦り付けてくる刺激で腰に射精感が走った。
脚の付け根に掌を這わせ、蜜が滴る壺に指を滑らせると、ゾーイが腰を仰け反らせた。そのままぐぷりと蜜で潤う泥濘に指を沈め出し入れし中を擦れば、ゾーイから高い声が上がる。指を出し入れしながら親指を伸ばし、蜜壺の上に隠れる花芽をぐりっと押すと、身体を震わせ俺の背中に爪を立てた。
「あっ、ああんっ、んっ、れ、れん……っ! あっ、いい……っ!」
「いい? イっていいよ、ゾーイ」
「あっ、だめイっちゃう……っ! やだ、レンがいい……っ」
「え?」
その言葉にピタリと動きを止めれば、はちみつ色の瞳がとろりと溶けた眼差しで俺を見た。震える手が俺の頬を撫で、柔らかく口付けを落とし、熱い吐息が俺を煽る。
「レンので、イキたい……」
そんなことを言われて、我慢なんてできるはずがない。
俺は愛する女の脚を高く持ち上げると、甘い蜜の滴る秘めた泉の奥深くに、自らを突き立てた。
一層高く上がる嬌声に、我を忘れて腰を振る。
「ゾーイ……っ!」
いつだって、俺を煽るのも幸せにしてくれるのも、我を失わせるほどの激情を起こさせるのも、ゾーイだけだ。
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