18 / 25
18
しおりを挟む我に返り、ひどい泣き顔が恥ずかしくて狼狽える私を、レンナルトが素早くマントで顔が見えないよう包み抱きかかえた。
驚いて身を固くすると、連れが体調を崩したとお店の人に声をかけ、宿の手配を頼んでいるレンナルトの声が聞こえる。
(そんな嘘、バレバレだと思うけど……!)
そう思っても、この顔ではどうしようもない。大人しくレンナルトに従うほうがいい。そんな黙るしかない私の背中を宥めるように優しくマントの上から撫で、私を抱えたまま、レンナルトは指定された宿へと移動した。
長いような短いような時間をかけて到着した部屋で二人になると、やっと頭から被っていたマントを取られる。
「……わあ」
その美しく高級な部屋に思わず声が漏れた。
状況も忘れてつい珍しい気持ちで見回している私を抱きかかえたまま、レンナルトは居室から続く部屋の扉を開ける。
(……あ)
そこは、美しいカーテンが垂れ下がる大きなベッドが中央に置かれた寝室だった。
レンナルトは黙ったままそのベッドに近づくと、優しく私を降ろした。背中に柔らかな感触を感じ見上げれば、じっと私を見下ろす緑の瞳と目が合い、その視線の真剣さに、恥ずかしさとは違う胸の苦しさを覚えた。ごまかすように視線を周囲に巡らせる。
レンナルトに気を取られて、何も見えてないけど。
「れ、レン? あの、ここ……」
「気になるのはわかるんだけどさ」
「え、うん、素敵な部屋ね?」
「ああ、家の名前使ったから」
「そ、なの? 大丈夫? すごく高そうだけど……」
「初めて来たから知らない」
「え?」
初めて? レンナルトならいつも利用してそうなのに。そんな気持ちが顔に出ていたのか、レンナルトが苦笑しながら小さな声でもう一度「初めて来たよ」と呟いた。
「そ、なの? 私……」
「ゾーイごめん、もう無理」
「え? ……んぁっ」
レンナルトは身体を起こそうとする私に覆い被さり、噛みつくように口付けをした。
口を大きく開けたレンナルトに、まるで飲み込まれるような錯覚に陥りながら、けれど柔らかく優しく押し付ける唇のくすぐったさと甘さに、心がふわふわしてくる。
「……ゾーイ」
時折甘い声で私の名を呼ぶその声に応えるように、私もレンナルトの唇に口付けをした。
だって今さら、何を抵抗することがあるだろう。
私だって望んでいることだ。
レンナルトにもっと口付けをしてもらいたい。私からも口付けをしたいし、もっと抱きしめてほしいし抱きしめたい。
その金色の髪を、ずっと梳いていたい。
「レン」
「ん?」
「……レンナルト」
「ああ、わかってる」
「……っ」
私たちはそれ以上何も言わずに抱き合い、口付けを繰り返した。
ベッドの上で抱き合いながら、レンナルトの大きな手が私の身体をまさぐる。隊服越しでも感じる強く、でも優しく柔らかなその刺激が気持ちよくて、はあっと深く息を吐きだした。
いとも簡単にレンナルトに隊服を脱がされ、ズボンのベルトを抜かれる。ガチャッと床にベルトが落ちる音を聞いて、これから始まることに恥ずかしくなり顔が熱くなった。
(えっと、どうしたらいいの? 私も何かしたほうがいい?)
与えられる感覚に身体が震えうまく頭が働かない。そんな私にお構いなしに、レンナルトは私のブーツの紐をほどいて脱がせていく。
ゴトゴトとブーツも床に放り出され、私のズボンに手をかけるその手を思わず慌てて上から押さえると、レンナルトは身体を倒し宥めるように私の唇に吸い付いて、ゆっくりと首筋を舐め上げた。
ぬるりとした舌の感触に小さく震え甘い声が漏れる。
その声に気を良くしたのか、レンナルトは舌先で何度も私の首筋をなぞり唇で吸い付いた。
(……気持ちいい)
首筋で動くレンナルトの頭を抱きかかえ、舌先に与えられる刺激に身を捩りながら首をのけぞらせた。
気持ちよさに溺れそうだ。
身体を起こしたレンナルトが、下着姿になった私の上に跨がりながら自分もジャケットごとシャツを脱ぎ捨て、その鍛え上げられた肉体を晒した。
しっとりと汗ばみ上下する胸筋を見上げて、レンナルトが私に興奮しているのを感じ、身体の中心が熱くなる。
レンナルトの長い指が器用に私のコルセットの紐をほどいた。きつく締められていた胸がふわりと解放され、思わずほおっと息を吐き出す。
「……締め上げられてるのは可哀想だけど、他の奴らの目に留まることを考えると、な」
「え? な、なに?」
「知ってはいたけど、すごく……きれいだよ、ゾーイ」
「……っ!」
レンナルトは赤くなったであろう私の顔を見てふっと口端を上げて笑うと、薄い肌着の上から私の胸にふわりと指を沈めた。柔らかさを確かめるようにふわふわと胸を優しく揉み、持ち上げ寄せた。
「ん……っ」
「気持ちいい? ピンク色が透けて肌着を押し上げてる。……かわいいな」
「え、なん……ぁっ!」
薄い下着を押し上げる胸の頂をレンナルトの指が弾いた。その刺激にビクリと身体を揺らすと、今度はきゅっと摘み捻るように指で弄る。
びくびくと身体が揺れて、お腹の奥がジワジワと熱を持つ。快感が身体を走るのをどうしたらいいのか分からず無意識に太腿を擦り合わせると、レンナルトの熱い掌が太腿を撫で上げた。
「ぁっ、や……」
「かわいい、ゾーイ」
薄い肌着の上からレンナルトが頂を口に含んだ。舌が頂を弾き、じゅうっと音を立てて吸い上げる。布越しの刺激だというのに、その甘い痺れにゾワゾワと全身が震えた。
これが快感なのかもよくわからない。
ただ、身体を駆け抜ける甘い痺れとレンナルトの荒い呼吸、触れ合う素肌の熱が気持ちいい。
身体の奥からもっと、とレンナルトにすがりたい欲望が沸き起こる。
肌を確かめるように、スルスルと太腿を撫でていた掌がゆっくりと内ももを這い、脚の付け根へ上がってきた。
胸への刺激と脚の付け根をなぞる指の動きに何も考えられない。
胸元で動くレンナルトの金色の髪を撫でると、レンナルトがふと顔を上げこちらを見た。
浅く呼吸を繰り返す私に、レンナルトが優しく頬を撫でる。その手つきに、愛おしさが溢れてくる。
(ああもう……本当に)
レンナルトは本当に、私を大切にしてくれている。
ずっと、ずっとそうだった。
レンナルトは私の顎や首筋を甘噛みし、きつく吸い上げ肌に赤い痕をつけながら、脚の間に身体を割り込ませた。
「あっ!」
かろうじて羽織っていた肌着を抜き取られ、慌てて胸を隠そうとすると手首を掴まれシーツに押さえつけられる。
その力強さに背中がゾクリと震える。
「隠したらだめ」
「だ、だって!」
だってこんなの、恥ずかしいに決まってる!
「全部見たい」
「も、もう見たでしょ……!」
「もっと」
私の手首を押さえたまま身体を倒したレンナルトが、コツンと額を合わせた。互いの熱い呼吸が唇をかすめ、息が上がってくる。
「もっと見せて」
レンナルトの強い眼差しに動けない。
じっくりと私の肌を見つめるその視線に、見られた場所が赤く染まっていくような気がした。
89
お気に入りに追加
314
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
腹黒宰相との白い結婚
黎
恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる