記憶をなくした私は王太子妃候補の一人らしいです。覚えていないので辞退してもいいですか?

かほなみり

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いつも自然に2

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「ルドヴィカ」

 囁くように名前を呼ばれ、覆いかぶさる彼を受け入れるように目を閉じる。柔らかく優しかった口付けはどんどん深くなっていき、私たちは夢中になって舌を絡め貪った。
 
「……っ、ん、あ」
「ルドヴィカ……、ルディ」

 エドアルドの唇が離れ、首へと降りてくる。ねっとりと舌で首筋を舐められ、その気持ちよさに震えると丹念に首に口付けを受ける。鎖骨に吸い付き舌で舐めあげ、胸元へと降りていくエドアルドの頭を抱えるように抱き締めると、大きな掌が私の胸を持ち上げるように寄せて大きく捏ねる様に揉んだ。

「あっ、んっ」

 ドレスの上からだというのにその刺激に腰が浮く。エドアルドの指が頂きの辺りをくるくるとなぞると、ますます唇から甘い声が漏れた。

「だ、だめです……っ、あっ」
「駄目? どうして」

 お腹の中心に熱が溜まっていく気がして、もぞりと脚を合わせると、エドアルドの手が私の脚裏に差し込まれぐいっと持ち上げられた。

「! あっ、あの……っ」

 片膝を立てるような格好の私の脚の間に身体を割り入れたエドアルドは、そのままドレスの裾から手のひらを侵入させ、持ち上げた私の太ももの裏を撫で上げた。

「ルディ……っ」

 焦るような性急な声と手つきに胸がきゅうっと苦しくなる。長い指がするすると絹の靴下を留めるガーターベルトを撫で、太ももの内側へと伸びていく。
 その先にある快感に、身体が震えた。

「殿下、お時間です」
 
 その時、外からコンコン、と扉をノックする音と、久しぶりに聞いたあの眼鏡の従者の声が響いた。

「……!!」

 その言葉に突然我に返る。
 ピタリと動きを止めたエドアルドは、私に覆い被さりながら不機嫌に眉根を寄せ「…………今行く」と、たっぷり間をおいて答えた。
 恥ずかしさに顔を覆うと、私の肩口にぽすん、とエドアルドが顔を埋めた。

「……行きたくない」

 その子どものような言いように、思わず声を出して笑ってしまう。

「笑うかな」
「だって……、子供みたいで可愛いんですもの」
「私の正直な気持ちだよ」

 くすくすと笑っていると、口を尖らせたエドアルドが渋々身体を起こし私のドレスを直してくれた。手を引かれ私も身体を起こすと、まだ目許を赤く染めたエドアルドが、ちゅ、とひとつ口付けをくれる。

「夜は一緒に食事をしよう」
「……はい」

 そう答えると、エドアルドは嬉しそうに頬を緩め、青い瞳を細めた。その瞳を見て、無意識に胸元のネックレスへと手が伸びる。
(この石、エドアルドの瞳の色と同じなんだわ)
 まるで晴れた日の湖面のように、キラキラと光りを跳ね返す美しい瞳。少し長い前髪の向こうに揺れる、美しい青。
 
「湖……」
「え?」

『――あなたの瞳、湖みたいでとってもキレイだわ』

 キラキラと湖面が反射して光る、美しい領地。明るい春の日差しを浴びて私たちは一日中一緒に過ごした。
 領主様のお屋敷に、毎年遊びに来る男の子――。

「……湖のほとりの、領主様のお屋敷で会ったのね」

 そう呟くと、エドアルドは目を見開き、ふわりと花が開くように笑った。
 そうだわ、この美しい笑顔の男の子、私はこの子がとても好きだった。
 この子に初めて、恋をした――。

「ルディ」

 ちゅっと口付けを落とされて、ぎゅうっと抱き締められる。私の首にすりすりと額を擦りつけて甘えるように「ルディ」とまた名前を呼んだ。そんな仕草ひとつに胸がきゅうっと苦しくなる。

「好きだよ、ルディ」

 覚えていないけれどきっと、私はずっとエドアルドからその言葉を伝えられていたのだろう。
 そう思いじんわりと気持ちが温かくなって、私も彼の胸に顔を埋めた。
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