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ナガセ・カレン・バーデンシュタイン
しおりを挟むエーリクへ
お元気ですか。
お手紙ありがとう。もう隣国へ旅立ったんだね。この手紙はきっと、隣国に着いてからエーリクの手元に届くと思う。
船旅はどうだった? 船酔いは平気だった? 海の生き物を見た?
沢山聞きたいことがあるよ。次に会った時、ぜひ聞かせてね。
バルテンシュタッドにはようやく春が来たよ。森の中にはまだ雪が残る場所もあるけど、早くから咲く花が咲いて、木の枝には綻びそうな木の芽が沢山。天気のいい日が続いていて、辺境のみんなも待ちに待った春にとても嬉しそう。
今ね、実はこれから結婚式なんだよ。
一人で控え室にいて、この手紙を書いてるの。エーリクがお祝いしてくれる気持ちは、しっかりと伝わっているよ。ありがとう。本当に、ありがとう。
エーリクからの手紙を何度も読み返したよ。ユーレク(ユリウス王子!)に早く会いたいな。元気なゾッケにも会いたい。こっちの二匹も毎日大変! 大騒ぎだけど、ウルもオッテも気にせずのんびり過ごしてる。お父さん、お母さんって心が大きいね。私も見習いたいな。
ヨアキムにもアンナにも、エーリクの感謝を伝えたよ。とっても喜んでた。二人から預かった手紙も同封するから読んでね。ヨアキムったらすっかりおじいちゃんの気持ちなの! 伝えたら涙ぐんでた。ぜひ、お返事も書いてあげてね。
レオニダスと新婚旅行でエーリクに会いに行くと決めたよ。まだ少し先だけど、決まったらまたお手紙を出すね。でも、驚かせたいからこっそり行くのも楽しいかも。
隣国で暮らすエーリクを物陰からこっそり観察するのも楽しそう! なんて、しないよ、大丈夫! 私はきっと我慢できなくて、飛び出して行っちゃうから。
私が辺境に来てからずっと、そばにいて守ってくれたエーリクに心から感謝してる。私がここで幸せに暮らすことができているのも、全てエーリクのお陰だよ。
いつもそばに居てくれてありがとう。
守ってくれてありがとう。
もっと沢山感謝を伝えたいのに、私はまだまだ言葉を書けなくて、うまく伝えられない。
本当はね、あなたが留学すると聞いて、あなたが離れることにとても淋しさを覚えたの。あなたと離れるのは、辺境に来てから初めてのことだから。
でも、強く、賢く、まっすぐで優しいあなたは、色んな世界で色んなことを学ぶ必要があると思う。その機会に恵まれたことは、エーリクの日頃の行いによるものだと思う。
その目で見て、学び、今よりももっと素敵なエーリクになってね。私はそのことを、心から願い、応援しているから。
大変な思いをすることもあるかもしれないし、辛いこともあるかもしれない。でも、あなたを愛する人がいることを忘れないで。きっとその思いが、あなたを強くしてくれるから。
そしてきっと、素敵な出会いもあるから。
どうか留学を思いっきり楽しんでね。
また会える日を楽しみにしてる。
エーリク、ありがとう。
愛を込めて
ナガセ・カレン・バーデンシュタイン
それから!
私のことはいつまでも、ナガセって呼んで欲しいな。
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