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第二章 王都

閑話 ウルとオッテは育休中

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 ……い、おい、ウル、起きろ。

 うー、なあに、オッテ……。

 ほら、ご飯を食べた方がいい。

 んー……。

 チビたちが寝てる隙に行ってこい。俺が見てるから。

 うん……うん、そうだね、お腹空いた……オッテは食べた?

 食べた。それに今日はナガセが来るぞ。

 え、本当?

 餌係がナガセの好きなあの甘い食べ物の匂いをさせてた。
 ナガセが来るから作ったんじゃないか。

 そんな事も分かるのね、オッテ! やった、ナガセに会える!
 うふふ、きっと何か持って来てくれるね!

 ほら、チビたちが起きてしまう。

 ああ、うん、じゃあちょっとお願いね!




 お日さまがてっぺんに昇る頃、オッテの言うとおりナガセが遊びに来てくれた!
 オッテすごい!

「ウル! オッテ!」

 ナガセはいつもぎゅうっと抱き締めてくれる。だからわたしも、ナガセの顔中に挨拶をするの。

 ナガセ! ナガセいらっしゃい!
 見てみて、この子たち大きくなったでしょ!

「わあ、大きくなったね! あっという間だなぁ!」
「すっかり動き回るようになって大変なんですよ」
「ふふっ、アンナさんにすっかり懐いてますね」
「お世話係としては認識されているようです」

 ナガセとエーリクがこの子たちに名前をつけてくれたの。

 茶色の靴下を前足だけ履いているような模様の男の仔は、グラブ。
 白い模様が首輪のようにぐるりとある女の仔は、ブラン。
 白と茶色の靴下を履いているような模様の男の仔が、ゾッケ。

 意味があるらしいんだけど、よく分からない。
 でも、かわいいからいいの!
 ゾッケはエーリクに随分懐いていて、エーリクがいる時はずっと後ろをヨチヨチついて歩いてる。
 グラブとブランはまだ私たちからそんなに離れて行かない。ブランは甘えん坊だし。

「ウル、ご飯食べてる? ちゃんと寝てる?」

 ナガセが頭や身体を優しく撫でてくれる。
 ナガセの撫で方好きよ。とっても気持ちいいから!

「オッテ、身体は大丈夫? ほら、ウルもオッテも栄養つけてね」

 わ、ナガセのごはん!
 オッテ、ほら、わたしたちの好きなご飯だよ!

 ああ、先に食べろ。チビたち見てるから。あ、こらゾッケ、どこ行くんだ。

 んん~、美味しい、美味しい!


「ナガセ、料理長が桃のタルトを焼いたのよ。エーリク様ももうすぐ戻られるから、一緒に食べましょう」
「本当? 嬉しい! 今度作り方教えてもらわなくちゃ。桃のタルト絶品なんですよね!」
「この間ナガセが持って来てくれた苺のパイも美味しかったわよ?」
「アンナさん苺好きですもんね」
「そうよ。可愛らしいしね」
「ふふっ、分かります!」
「ナガセ、いらっしゃい」
「エーリク、お帰りなさい!」


 部屋に入って来たエーリク目掛けてとてとて、とゾッケが駆け寄って行く。なんてかわいいのかしら!
 後ろ姿がまん丸でぽてぽてしてる! 食べちゃいたい!
 ゾッケは本当にエーリクが好きね!

 エーリクも可愛がってくれてる。任せて大丈夫だろう。

 うん。ゾッケもきっと、オッテがレオニダスと一緒にいるみたいに、エーリクと一緒にいるようになるね。

 そうだな。……教える事が沢山あるな。

 まだ早いよ! まずは走れるようにならないと!
 あ、またみんなでお散歩に行きたいな!
 あのお花畑の!

 ああ、そうだな。また行きたいな。


 エーリクの膝の上に乗って満足そうなゾッケ。
 優しく微笑むエーリク。
 オッテにくっついたり離れたりしながら歩き回るグラブとブラン。
 怪我も良くなって来た頼もしくてカッコいいわたしのオッテ。
 美味しそうな匂いの甘いものを見て喜ぶナガセ。
 優しい顔のアンナ。


 素敵な時間、嬉しい時間。


 わたし、この時間が大好き。とっても幸せ。

 とっても、いい匂いに満ち溢れてる。

 ずっと、続きますように。
 ね、オッテ。

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