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第五章
カーティス皇国との戦争その1
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俺達はそれぞれカーティス軍の周囲に待機していた。
やがてローム軍が進撃を開始する。
中央に鉄砲隊を押し出し銃撃戦を開始する。
しかし、カーティス軍の砲兵隊の大筒に押され徐々に算を乱し始める。
やがて徐々に下がっていき、後方に撤退し始める。
「よし!ローム軍は下がり始めたぞ!砲兵更に前へ!歩兵騎馬隊は押し包むように左右から前進せよ!」
相手の指揮官の声が聞こえる。
やがて時がたつとともにローム王国の不利が明確になっていき、部隊が次々と退却を始める。
「今だ!ローム王国を押しつぶせ!」
・・そろそろ頃合いかな。
「サンダユウ、敵の砲兵の位置は?」
「今手の者に調べさせたとこころ、騎馬隊、歩兵が突出して前に出てきており、砲兵はやや後方で遅れているようです。」
思った通りだ。
俺は兵に
「信号弾をあげよ!」
と命じた。
俺の部隊から信号弾があがる。
同時ににエリスが飛び立った。
「な・・?あれはドラゴン?雷竜か?砲兵よ!あのドラゴンを打ち落とせ!」
だがもう遅い。
エリスは極大の雷の息吹を放つと敵陣を攻撃した。
敵は突然の雷撃に陣形を乱し始める。
よし、いくぞ!
「突撃だ!」
俺の部隊は右方向から取り残されていた砲兵に突撃を敢行する。
部隊は騎兵メインで構成された機動力にすぐれた部隊だ。取り残されていた砲兵がこちらに砲を向けようとするが、砲兵は接近戦に弱い。
「コール!本田忠勝!」
体中に力が湧き上がる!騎兵なら家康のもとで戦国を駆け抜けついには統一まで押し上げた本田忠勝だ!
俺達の部隊は次々と敵砲兵を攻撃していく。敵が乱れ始めた。
「く、急げ!鉄砲隊!あの騎兵部隊を狙え!」
敵の指揮官の声があがったところで更に左から龍翔の部隊が突入してきた。
「ゆくぞ!三国時代最強と恐れられた呂布奉先の力を思い知れ!コール!呂布奉先!」
龍翔の部隊が俺の方に向こうとしていた部隊を背後から貫く。
砲兵が次々と血祭りにあげられていく。前に進んでいた騎兵隊と歩兵隊が慌てて戻ろうとするが間に合わない。
「な・・なんだこいつらはぁ!」
敵指揮官が動揺している。
「ええい!左右の敵には構うな!前面のローム軍を突き破れ!砲兵よ!正面に向けて放て!」
しかし、ローム軍正面にはアイズとアカネが出てきて巨大な氷壁と炎壁で砲弾を防ぐ。
氷壁にはヒビが入る程度。そして魔王によって魔力を大幅に増加したアカネの炎壁は砲弾を溶けつくし、打ち落とした。
「なん・・だと・・?」
敵指揮官の動揺が見て取れる。
そこで更に信号弾。
「信号があがった!敵を殲滅せよ!」
シンゲン王の声が上がる。
退却のフリをしていたローム軍本体は向きを変え、混乱したカーティス軍に襲い掛かった。
前に出ていた騎兵隊、歩兵隊がローム軍本体の銃兵に次々と討たれてゆく。
アイリスはローム軍本隊でエリアヒールをかけ、負傷兵を復活させていた。
敵が押し込まれていく。左右から俺と龍翔、更にはエリスの電撃、正面からローム本軍の攻撃。
「私たちもいるわよ!」
攻撃に転じた中でアカネが魔法を放つ!
「複角度熱線!」
敵兵が大量の熱線に焼かれていく。
「僕もいる!息吹!」
アイズの極大の息吹が敵を氷漬けにしていく。
ローム軍は更に前進し、ついにカーティス軍を打ち破った。
カーティス軍は算を乱して逃げ始めた。
「逃がすな!追撃戦だ!」
シンゲン王の声が飛ぶ。俺たちはそれぞれ逃げる敵兵を猟犬のように追い、倒していった。
・・・
追撃戦のあとしばし。
敵の様子に変化が現れる。
「援軍だ!」
援軍だと?他国からの援軍か?
すると上空から赤い翼を広げ降り立ってくる一群があった。
あれは・・まさか!
俺は急いでサンダユウを呼び、
「サンダユウ、追撃はここまでだ。敵の様子が変だ。いったん待機して様子をみたほうがいい。シンゲン王に伝えてくれ。」
「かしこまりました。」
サンダユウは素早く姿を消す。
援軍の一団は魔獣を多数連れていた。
狼型、熊型、そしてドラゴン・・様々な種類の魔獣がひしめいている。
一万ほどいるだろうか。
俺の進言が通じたのかやがてローム軍は進軍を止めた。
十分にカーティス軍は打ち破った。これ以上は危険かもしれない。
俺と龍翔の軍も本陣へと戻っていった。
「ユージよ!この度はよくやってくれた!我々の大勝利だ!」
シンゲン王からお言葉を受ける。
俺は戦国時代上杉謙信や小早川隆景、そして島津軍が得意とした敵の吊り出しをしたに過ぎたい。
偽装の敗走で敵主力をおびき出し、それを左右から挟撃するやり方だ。
「いえ。皆の協力あってこそです。」
「うむ。そうか。とにかく今回の勲功は考えておく!・・ところであの途中で現れた援軍は何かわかったか?」
「今調べさせておりますが・・恐らく『蒼狼の会』ではないかと。」
「何?『蒼狼の会』がカーティスと手を組んだというのか?」
「本格的に手を組んだかどうかはわかりかねますが、今回の戦いの後詰としてきたのは確かでしょう。あの魔獣どもには見覚えがございます。」
「ふむ・・そうか・・『蒼狼の会』ならばこれ以上は無駄な死傷者を出すことになるかもしれんのう・・」
「はい。ここはカーティスを打ち破ったことを良しとし、いったん兵を退くことが賢明かと。」
「何を申す!勝ち戦で兵を退くというようなことがあってたまるものか!」
パットン将軍がつばを飛ばして反論してきた。
「此度の戦、学生でありながら、策を弄し、僥倖にめぐまれ敵を打ち破ったにすぎん。儂ならあのような策はとっくに見破り、ローム軍が危機に陥るところだったぞ!」
やれやれ。
「シンゲン王!このパットンは更なる追撃を進言いたします!この際に『蒼狼の会』の者共に目にもの見せてやりましょう!」
「いや、攻めるなら、ここはこちらも援軍を待った方が良いかと・・」
俺が言うと
「ええい!たまたま策が当たったからと言って図に乗りおって!下がっておれ!小僧ごときが!」
パットン将軍が更に言い募る。
他の複数の将軍も同調しているように見える。
「・・わかりました。ならば何も言うことはありません。」
俺はとりあえず引き下がった。
「うーむ。では追撃を開始する。パットンよ。先鋒隊となって敵を突き破れ。」
シンゲン王が決を下した。
「はっおまかせあれ!真の軍人の力、お見せいたしましょう!」
パットン将軍は意気揚々と陣幕を出て行った。
「ユージ?いいの?相手は『蒼狼の会』よ?あの魔獣たちをみると・・もしかしたら・・」
アカネが心配そうに言う。
「仕方ない。ここでは俺はただの借り物みたいなもんだ。いざという時の準備だけはしておこう。」
「ユージよ。良いのか?我も追撃は気が進まぬが・・」
龍翔までが言ってくる。
「俺たちはまだただの学生だ。仕方ないさ。」
俺達はとりあえず本陣で様子を見守ることにした。
・・・
パットン将軍は他の将軍たちを連れて意気揚々と出陣していった。
部隊は銃兵隊、騎兵隊、歩兵隊の混合部隊だ。
やがて、敵と会敵したようだ。敵は既に逃げる態勢だったので面白いように打ち取られていく。
しかし、その間に『蒼狼の会』の魔獣たちが割り込んできた。
「ひるむな!魔獣どもを突き破れ!」
パットン将軍の指示が飛ぶ。
しかし・・敵赤竜の息吹で焼かれ、兵たちは次々と脱落していく。そして混乱した兵たちには狼型の魔獣や熊型の魔獣が襲い掛かった。
戦況は刻一刻と悪化していく。
まずいな・・援軍が来る前にパットン将軍らの部隊が全滅してしまう。
俺は急いでシンゲン王のもとに向かうと、
「このままではせっかくの勝ち戦が無駄になってしまいます!どうか我々に出陣の許可を!」
「う・・うむ。致し方ない。行ってくれ!ユージ!」
「よし!いくぞ皆!・・龍翔、ドラゴンは首筋に弱点の逆鱗がある。そこを突け!」
「承った!」
「アカネ、アイズ、エリスは俺と共に魔獣を撃退するぞ!アイリスはパットン将軍らの部隊の負傷者にヒールを!」
「わかったわ!」
「了解。」
「かしこまりましてよ!」
「うん、わかったよ!」
「サンダユウ!」
「はい、ここに。」
「魔獣を指揮しているものはわかったか?」
「は・・黒いローブ・・どうやら例のテイマーのようです。」
やっぱりか。やっかいな奴がきたもんだ。
俺はアイズに乗り込むと、
「アイズ、俺達はドラゴンだ!まずあのやっかいな炎を先になんとかする!」
「了解!」
俺はアイズに乗るとすぐに上空に飛び立った。
既にパットン将軍らの部隊は算を乱して逃げ始めている。
俺は気合を入れなおすと、
「いくぞ!コール斎藤一!」
と声を張り上げた。
赤竜たちが炎を放ってくるがアイズがうまくかわして時には息吹で相殺してドラゴンに近づいていく。
俺は時にアイズの上から伸ばした剣でドラゴンを貫き、時に飛び上がり、あるいは敵ドラゴンに飛び移り刺し貫いていった。
別の場所ではエリスが貫通力のある雷の息吹で敵ドラゴンを攻撃していた。
炎の息吹に雷の息吹は相性が良く、敵の炎を貫通してエリスの雷が敵ドラゴンを打ち落としていく。
「いくわよ!複角度熱線!」
エリスに乗ったままアカネの得意魔法がドラゴンを焼く。
威力を増したアカネの炎魔法で赤竜たちが下に落下していく。そこに待っているのは龍翔だ。
「いくぞ!はぁぁぁあ!」
龍翔は次々とドラゴンの逆鱗を突き、絶命させていく。ドラゴンとの戦いは初めてのはずだが、さすがだ。
ドラゴンの過半数が打ち取られたころ、ようやくパットン将軍らの部隊がアイリスのヒールを受け、再編成を終えた。
「よ・・よし!空からの脅威は減ったぞ!地上の魔獣どもを殲滅せよ!」
兵たちが魔獣に襲い掛かる。しかし、魔獣の皮は厚くそうやすやすとは倒せるものではない。
「アカネ!エリス!龍翔!地上の魔獣どもを掃討してしてくれ!」
「「「了解!」」」
アカネの炎魔法、エリスの雷の息吹、そして龍翔の攻撃で地上の魔獣も次々と数を減らしていく。
「よし・・アイズ!敵テイマーの上まで行ってくれ!」
「了解!」
・・今度こそ逃がさない。
俺はテイマーらしき者の上空に達すると、
「星の力よ!ホーンテッドよ!俺に力を貸してくれ!コール宮本武蔵!」
と叫んで飛び降りた。
体中に力がみなぎる。
テイマーは俺に気づくと、
「く・・またお前か!何度も邪魔をしおって!」
「今度は逃がさん!いくぞ!はぁああああ!」
俺はまずテイマーを守るようにかばっている赤竜を首から一刀両断にした。
「な・・なんだと??」
「これでお前は逃げることもできない!覚悟しろ!」
「く・・だがこれだけだと思うな!いでよスライム!」
テイマーの周囲に粘着質のドロドロのようなモンスターが湧き上がる。
スライム?
ゲームの世界では雑魚キャラだったはずだが・・
「ユージ!気を付けて!スライムは物理耐性があって魔法にも耐性があるわ!通常の攻撃じゃ通用しない!」
アカネの声が聞こえる。
なんだって?
俺は試しにテイマーを守るように湧き上がってきたスライムたちを切ってみた。
ぐにゃりという感触がして手ごたえがない。スライムは一瞬だけ切られた形を保っていたがすぐに元の姿に戻った。
・・こ、これは厄介だな・・
「ははは!剣士のお前にはどうすることもできまい!」
テイマーが俺と距離を取りながら言う。
「アカネ!アカネの魔法で焼き切れないのか?」
「・・一応やってみるわ!はぁぁ!」
アカネの炎魔法がスライムたちに襲い掛かる。
しかしスライムたちは表面を焦げ付かせただけですぐに元の姿に戻ってしまった。
こいつは・・どうすればいいんだ?
やがてローム軍が進撃を開始する。
中央に鉄砲隊を押し出し銃撃戦を開始する。
しかし、カーティス軍の砲兵隊の大筒に押され徐々に算を乱し始める。
やがて徐々に下がっていき、後方に撤退し始める。
「よし!ローム軍は下がり始めたぞ!砲兵更に前へ!歩兵騎馬隊は押し包むように左右から前進せよ!」
相手の指揮官の声が聞こえる。
やがて時がたつとともにローム王国の不利が明確になっていき、部隊が次々と退却を始める。
「今だ!ローム王国を押しつぶせ!」
・・そろそろ頃合いかな。
「サンダユウ、敵の砲兵の位置は?」
「今手の者に調べさせたとこころ、騎馬隊、歩兵が突出して前に出てきており、砲兵はやや後方で遅れているようです。」
思った通りだ。
俺は兵に
「信号弾をあげよ!」
と命じた。
俺の部隊から信号弾があがる。
同時ににエリスが飛び立った。
「な・・?あれはドラゴン?雷竜か?砲兵よ!あのドラゴンを打ち落とせ!」
だがもう遅い。
エリスは極大の雷の息吹を放つと敵陣を攻撃した。
敵は突然の雷撃に陣形を乱し始める。
よし、いくぞ!
「突撃だ!」
俺の部隊は右方向から取り残されていた砲兵に突撃を敢行する。
部隊は騎兵メインで構成された機動力にすぐれた部隊だ。取り残されていた砲兵がこちらに砲を向けようとするが、砲兵は接近戦に弱い。
「コール!本田忠勝!」
体中に力が湧き上がる!騎兵なら家康のもとで戦国を駆け抜けついには統一まで押し上げた本田忠勝だ!
俺達の部隊は次々と敵砲兵を攻撃していく。敵が乱れ始めた。
「く、急げ!鉄砲隊!あの騎兵部隊を狙え!」
敵の指揮官の声があがったところで更に左から龍翔の部隊が突入してきた。
「ゆくぞ!三国時代最強と恐れられた呂布奉先の力を思い知れ!コール!呂布奉先!」
龍翔の部隊が俺の方に向こうとしていた部隊を背後から貫く。
砲兵が次々と血祭りにあげられていく。前に進んでいた騎兵隊と歩兵隊が慌てて戻ろうとするが間に合わない。
「な・・なんだこいつらはぁ!」
敵指揮官が動揺している。
「ええい!左右の敵には構うな!前面のローム軍を突き破れ!砲兵よ!正面に向けて放て!」
しかし、ローム軍正面にはアイズとアカネが出てきて巨大な氷壁と炎壁で砲弾を防ぐ。
氷壁にはヒビが入る程度。そして魔王によって魔力を大幅に増加したアカネの炎壁は砲弾を溶けつくし、打ち落とした。
「なん・・だと・・?」
敵指揮官の動揺が見て取れる。
そこで更に信号弾。
「信号があがった!敵を殲滅せよ!」
シンゲン王の声が上がる。
退却のフリをしていたローム軍本体は向きを変え、混乱したカーティス軍に襲い掛かった。
前に出ていた騎兵隊、歩兵隊がローム軍本体の銃兵に次々と討たれてゆく。
アイリスはローム軍本隊でエリアヒールをかけ、負傷兵を復活させていた。
敵が押し込まれていく。左右から俺と龍翔、更にはエリスの電撃、正面からローム本軍の攻撃。
「私たちもいるわよ!」
攻撃に転じた中でアカネが魔法を放つ!
「複角度熱線!」
敵兵が大量の熱線に焼かれていく。
「僕もいる!息吹!」
アイズの極大の息吹が敵を氷漬けにしていく。
ローム軍は更に前進し、ついにカーティス軍を打ち破った。
カーティス軍は算を乱して逃げ始めた。
「逃がすな!追撃戦だ!」
シンゲン王の声が飛ぶ。俺たちはそれぞれ逃げる敵兵を猟犬のように追い、倒していった。
・・・
追撃戦のあとしばし。
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「援軍だ!」
援軍だと?他国からの援軍か?
すると上空から赤い翼を広げ降り立ってくる一群があった。
あれは・・まさか!
俺は急いでサンダユウを呼び、
「サンダユウ、追撃はここまでだ。敵の様子が変だ。いったん待機して様子をみたほうがいい。シンゲン王に伝えてくれ。」
「かしこまりました。」
サンダユウは素早く姿を消す。
援軍の一団は魔獣を多数連れていた。
狼型、熊型、そしてドラゴン・・様々な種類の魔獣がひしめいている。
一万ほどいるだろうか。
俺の進言が通じたのかやがてローム軍は進軍を止めた。
十分にカーティス軍は打ち破った。これ以上は危険かもしれない。
俺と龍翔の軍も本陣へと戻っていった。
「ユージよ!この度はよくやってくれた!我々の大勝利だ!」
シンゲン王からお言葉を受ける。
俺は戦国時代上杉謙信や小早川隆景、そして島津軍が得意とした敵の吊り出しをしたに過ぎたい。
偽装の敗走で敵主力をおびき出し、それを左右から挟撃するやり方だ。
「いえ。皆の協力あってこそです。」
「うむ。そうか。とにかく今回の勲功は考えておく!・・ところであの途中で現れた援軍は何かわかったか?」
「今調べさせておりますが・・恐らく『蒼狼の会』ではないかと。」
「何?『蒼狼の会』がカーティスと手を組んだというのか?」
「本格的に手を組んだかどうかはわかりかねますが、今回の戦いの後詰としてきたのは確かでしょう。あの魔獣どもには見覚えがございます。」
「ふむ・・そうか・・『蒼狼の会』ならばこれ以上は無駄な死傷者を出すことになるかもしれんのう・・」
「はい。ここはカーティスを打ち破ったことを良しとし、いったん兵を退くことが賢明かと。」
「何を申す!勝ち戦で兵を退くというようなことがあってたまるものか!」
パットン将軍がつばを飛ばして反論してきた。
「此度の戦、学生でありながら、策を弄し、僥倖にめぐまれ敵を打ち破ったにすぎん。儂ならあのような策はとっくに見破り、ローム軍が危機に陥るところだったぞ!」
やれやれ。
「シンゲン王!このパットンは更なる追撃を進言いたします!この際に『蒼狼の会』の者共に目にもの見せてやりましょう!」
「いや、攻めるなら、ここはこちらも援軍を待った方が良いかと・・」
俺が言うと
「ええい!たまたま策が当たったからと言って図に乗りおって!下がっておれ!小僧ごときが!」
パットン将軍が更に言い募る。
他の複数の将軍も同調しているように見える。
「・・わかりました。ならば何も言うことはありません。」
俺はとりあえず引き下がった。
「うーむ。では追撃を開始する。パットンよ。先鋒隊となって敵を突き破れ。」
シンゲン王が決を下した。
「はっおまかせあれ!真の軍人の力、お見せいたしましょう!」
パットン将軍は意気揚々と陣幕を出て行った。
「ユージ?いいの?相手は『蒼狼の会』よ?あの魔獣たちをみると・・もしかしたら・・」
アカネが心配そうに言う。
「仕方ない。ここでは俺はただの借り物みたいなもんだ。いざという時の準備だけはしておこう。」
「ユージよ。良いのか?我も追撃は気が進まぬが・・」
龍翔までが言ってくる。
「俺たちはまだただの学生だ。仕方ないさ。」
俺達はとりあえず本陣で様子を見守ることにした。
・・・
パットン将軍は他の将軍たちを連れて意気揚々と出陣していった。
部隊は銃兵隊、騎兵隊、歩兵隊の混合部隊だ。
やがて、敵と会敵したようだ。敵は既に逃げる態勢だったので面白いように打ち取られていく。
しかし、その間に『蒼狼の会』の魔獣たちが割り込んできた。
「ひるむな!魔獣どもを突き破れ!」
パットン将軍の指示が飛ぶ。
しかし・・敵赤竜の息吹で焼かれ、兵たちは次々と脱落していく。そして混乱した兵たちには狼型の魔獣や熊型の魔獣が襲い掛かった。
戦況は刻一刻と悪化していく。
まずいな・・援軍が来る前にパットン将軍らの部隊が全滅してしまう。
俺は急いでシンゲン王のもとに向かうと、
「このままではせっかくの勝ち戦が無駄になってしまいます!どうか我々に出陣の許可を!」
「う・・うむ。致し方ない。行ってくれ!ユージ!」
「よし!いくぞ皆!・・龍翔、ドラゴンは首筋に弱点の逆鱗がある。そこを突け!」
「承った!」
「アカネ、アイズ、エリスは俺と共に魔獣を撃退するぞ!アイリスはパットン将軍らの部隊の負傷者にヒールを!」
「わかったわ!」
「了解。」
「かしこまりましてよ!」
「うん、わかったよ!」
「サンダユウ!」
「はい、ここに。」
「魔獣を指揮しているものはわかったか?」
「は・・黒いローブ・・どうやら例のテイマーのようです。」
やっぱりか。やっかいな奴がきたもんだ。
俺はアイズに乗り込むと、
「アイズ、俺達はドラゴンだ!まずあのやっかいな炎を先になんとかする!」
「了解!」
俺はアイズに乗るとすぐに上空に飛び立った。
既にパットン将軍らの部隊は算を乱して逃げ始めている。
俺は気合を入れなおすと、
「いくぞ!コール斎藤一!」
と声を張り上げた。
赤竜たちが炎を放ってくるがアイズがうまくかわして時には息吹で相殺してドラゴンに近づいていく。
俺は時にアイズの上から伸ばした剣でドラゴンを貫き、時に飛び上がり、あるいは敵ドラゴンに飛び移り刺し貫いていった。
別の場所ではエリスが貫通力のある雷の息吹で敵ドラゴンを攻撃していた。
炎の息吹に雷の息吹は相性が良く、敵の炎を貫通してエリスの雷が敵ドラゴンを打ち落としていく。
「いくわよ!複角度熱線!」
エリスに乗ったままアカネの得意魔法がドラゴンを焼く。
威力を増したアカネの炎魔法で赤竜たちが下に落下していく。そこに待っているのは龍翔だ。
「いくぞ!はぁぁぁあ!」
龍翔は次々とドラゴンの逆鱗を突き、絶命させていく。ドラゴンとの戦いは初めてのはずだが、さすがだ。
ドラゴンの過半数が打ち取られたころ、ようやくパットン将軍らの部隊がアイリスのヒールを受け、再編成を終えた。
「よ・・よし!空からの脅威は減ったぞ!地上の魔獣どもを殲滅せよ!」
兵たちが魔獣に襲い掛かる。しかし、魔獣の皮は厚くそうやすやすとは倒せるものではない。
「アカネ!エリス!龍翔!地上の魔獣どもを掃討してしてくれ!」
「「「了解!」」」
アカネの炎魔法、エリスの雷の息吹、そして龍翔の攻撃で地上の魔獣も次々と数を減らしていく。
「よし・・アイズ!敵テイマーの上まで行ってくれ!」
「了解!」
・・今度こそ逃がさない。
俺はテイマーらしき者の上空に達すると、
「星の力よ!ホーンテッドよ!俺に力を貸してくれ!コール宮本武蔵!」
と叫んで飛び降りた。
体中に力がみなぎる。
テイマーは俺に気づくと、
「く・・またお前か!何度も邪魔をしおって!」
「今度は逃がさん!いくぞ!はぁああああ!」
俺はまずテイマーを守るようにかばっている赤竜を首から一刀両断にした。
「な・・なんだと??」
「これでお前は逃げることもできない!覚悟しろ!」
「く・・だがこれだけだと思うな!いでよスライム!」
テイマーの周囲に粘着質のドロドロのようなモンスターが湧き上がる。
スライム?
ゲームの世界では雑魚キャラだったはずだが・・
「ユージ!気を付けて!スライムは物理耐性があって魔法にも耐性があるわ!通常の攻撃じゃ通用しない!」
アカネの声が聞こえる。
なんだって?
俺は試しにテイマーを守るように湧き上がってきたスライムたちを切ってみた。
ぐにゃりという感触がして手ごたえがない。スライムは一瞬だけ切られた形を保っていたがすぐに元の姿に戻った。
・・こ、これは厄介だな・・
「ははは!剣士のお前にはどうすることもできまい!」
テイマーが俺と距離を取りながら言う。
「アカネ!アカネの魔法で焼き切れないのか?」
「・・一応やってみるわ!はぁぁ!」
アカネの炎魔法がスライムたちに襲い掛かる。
しかしスライムたちは表面を焦げ付かせただけですぐに元の姿に戻ってしまった。
こいつは・・どうすればいいんだ?
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