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第四章

教皇との対談・・そして・・

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「やぁやぁ君たち!良くやってくれたねぇ!」
ケース学院長が満面の笑みで俺たちを迎える。

海から戻った翌日。

俺たちは学院長室に呼ばれていた。

「今回のことは教皇猊下にも報告しておく。良く我が生徒たちを守ってくれた!」

教皇猊下・・王様のようなものだろうか。
まぁ宗教立国だし、呼び方も色々違うのだろう。

「うん?反応が薄いようだが・・?」

「いえ・・光栄ですが、できることをしただけですから・・」

「それにしてもギガントシャークを一蹴だったそうじゃないか!いやぁ君たちの実力を見誤っていたよ!」

「はぁ・・」

別に今回の敵は今までと比べれば大したことはなかった。
まぁ生徒を守れただけで良しとするか。

「とにかく、君たちの処遇を考え直さなければならんね!とりあえず、今の学生寮から来賓用の宿舎へ移ってもらおうじゃないか!クラス変更の件も考えておいたよ!今日から別のクラスだ!」

「はぁ・・それは恐れ入ります。」

俺たちは新しいクラスのことなどを指示されると、早々に学院長室を後にした。

「何よあれ?まるで別人じゃない?」
アカネが憤懣やるかたないという顔で不満を言う。

「あはは・・仕方ないよ。なんか実力?主義?って言ってたし?」
アイリスが言う。

「実力ならもう負けない。今度は僕本気出す。」
アイズは何か胸に秘めるものがあるようだ。

「まぁとりあえず良かったじゃないか。俺たちの新しい教室は・・こっちか。」

俺達は指定された教室へ足を踏み入れる。

「「「わぁぁぁぁああ!」」」

一瞬ビクッとなる。

「ユージさんこの前はありがとうございました!」
「アカネさん格好いい!」
「アイリスさん治療ありがとうございました!」
「アイズさん空飛ぶ姿すごかったです!」

どうもこのクラスでは歓迎されているようだ。

「やぁ、良く来たね。ここが君たちの新しいクラスだ。仲良くしてやってくれたまえ。」
担任の先生が言う。

「あーもうみんな知っていると思うが彼らは先日の海遠足でギガントシャークから我々を守ってくれた方たちだ。敬意をもって接するように。」

「「「もちろんです!」」」
生徒たちが一斉に叫ぶ。

俺達にとってはそんな珍しいことでもなかったのだが。

「じゃあ、君たちはそちらの席に座ってくれたまえ。」

「はい。」

俺たちはひと固まりになって席に着いた。

「ねぇ、ここだったら普通に過ごせるのかしら?」
アカネが疑問を呈す。

「ああ、今度は歓迎されているようだし、普通に過ごせそうだな」

「じゃあ、普通に質問とかできるね。やっと学校に来た感じがするよ。」
アイリスがホッとしたように言う。

「うん。僕ベンキョーも頑張る。」

アカネはもともとSクラスだし、アイリスはBクラスだけど勉強できるし、アイズは成長著しいし・・俺が一番頑張らないとダメそうだ。

授業が始まると早速アカネが手を挙げて質問していた。
先生も丁寧に答える。

「おお、アカネさんが質問したぜ?」
「質問してる姿も素敵!」
「勉強熱心なのね!」

いちいち注目を浴びるのはやや鬱陶しいが。

休み時間、俺達が廊下を歩いていると前の問題児だらけのクラスの奴らが歩いてきた。
俺達に気づくとそそくさと目をそらして道を開ける。

「なんかあまりの状況の変化についていけないわ。」
アカネがそう漏らす。

「まぁ、悪いことじゃないんだし、受け入れておこう?」
アイリスがそう苦笑いしながら言う。

とりあえず、俺達の状況はガラッと変わったようだ。

――――――――

授業が終わると俺たちには馬車が迎えに来ていた。
「これからいったん学生寮へ向かいます。それからみなさんの荷物を取って来賓用の宿舎に移っていただきます。」

もうどうにでもしてくれ。

俺達はいったん学生寮で荷物を取ると馬車に戻った。

馬車が辿り着いたのは今までと全くことなるホテルのような建物だった。

「これから皆様にはこちらでお過ごしいただくようにとの学院長のおおせです。どうぞごゆるりとお過ごしください」
御者はそういうと馬車で立ち去っていった。

「はぁ・・とりあえず行くか。」

俺達はロビーに入ると、チェックインカウンターのようなものがあった。

「あの・・皇国魔法学院からきたものですが・・」

「おお!ではあなた方がギガントシャークを倒した・・どうぞこちらにお名前を記載ください。」

ここでも俺たちの海での一件は知れているようだ。
ケース学院長はいささか口が軽い気がする。

俺達はそれぞれ案内された部屋に向かった。

部屋はまさに豪華なホテルの一室のようで調度品からベッドからいままでいた学生寮とは一線を画すものばかりだった。

「ユージ、ちょっといい?」
アカネの声がドアからする。

「ああ、どうぞ。」

「ふーん。ユージの部屋も私の部屋と大差ないわね・・。ねぇこの飲み物って自由に飲んでいいのかしら?」

「これだけの設備だ。恐らく無料だろう。もし有料だとしても学院が持ってくれるんじゃないか?」

「ふーん・・なんか不思議な宿舎ね。」

「ああ、これは俺のいた世界のホテル、その中でも一流のホテルに似てる気がする。気にせず過ごしていいんじゃないか?多分、食べ物なんかも部屋まで持ってきてくれると思うぞ。」

「ほてる・・?至れり尽くせりね。」

「まぁせっかくのご厚意だ。楽にして過ごそう。」

「そうね。でも修業は続けるわ。」

「ここなら広い庭がありそうだからな。大丈夫だろう。」

「まだあのレィディンって子に借りを返してないからね。このままじゃ帰れないわ。」

「それは俺も同じだ。」

「ユージ、何か考えがあるの?」

「ああ、少し考えはあるけど・・。まぁそのときを楽しみにしててくれ。」

「ふふ、わかったわ。じゃあ部屋に戻るわね。」

「ああ、そうそう。もしかしたら、これだけの規模なら食べ放題の食堂があるかもしれない。後で迎えにいくから皆で試しに食事行ってみないか?」

「いいわね。じゃあ待ってるわ。」

多分ビュッフェみたいなものがあるんじゃないかと思ったのだ。
アイズなら喜ぶだろう。

・・・

俺達は時間を見計らってディナーを食べに下に降りて行った。
思った通り、ビュッフェがあった。

「ユージ、ここすごい。食べ物がいっぱいある。」
アイズが目をキラキラさせている。

「ああ、ここは食べ放題だ。好きなだけ食べていいと思うぞ。」

「僕行ってくる!」
アイズは早速皿を持つと飛び出していった。

「席はこのあたりでいいかしら。」
アカネが窓際の席を見つけて座る。

「ああ、ここなら夜景も楽しめそうだ。」

「うふふ。なんか今までの日々が嘘みたいだね。」
アイリスが微笑む。

「あ、私も食べ物取りに行ってくるね?」
アイリスも早速皿をもって物色に行った。

「私たちも行こう?」
「ああ、そうだな。」
俺とアカネも連れ立って食事を取りに行く。

今までのホーリー聖教皇国の食事と違い、肉料理なども用意されていた。
これなら腹にたまりそうだ。

食べてみると、味はほどほどに濃い味だった。
来賓用の宿舎と言うだけあって、外国のお客様にも満足してもらえる味付けにしているようだ。
エルフには濃すぎるのかな?
俺達は久々に味わったボリュームのある料理を思いっきり楽しんだ。

――――――――

翌日。
ケース学院長に呼ばれて学院長室へ行ってみると、
「喜びたまえ!教皇猊下がお会いになるそうだ!」
と伝えてきた。

教皇猊下・・どんな人なんだろう?
学園での人々を考えるとあまり期待しない方がいいかもしれないな。

「教皇猊下へのお会いになる時間は授業後だ。それまでいつも通り過ごしてくれたまえ。」

俺達はとりあえずクラスに向かった。
するとどこから聞きつけてきたのか生徒が集まってくる。

「ユージ様!教皇猊下にお会いになるそうですね!」
「是非我々の事をよろしくお伝えください!」
「私、イリナ・サフローノワと申します。どうぞよろしくお伝えくださいませ!」

皆テンション高いな。
まぁ教皇に会うというのはこの国でも珍しいことなんだろう。

俺達は普通に授業を受けた後、迎えの馬車にのって皇宮へと向かった。

衛兵が立っていたが、御者が招待の旨を伝えるとすぐに広間に通された。

ローム王国よりやや小ぶりだ。
信長様の経済政策でローム王国の方が財政が豊かなのかな? 

「教皇猊下のおなり~!」

衛士の声が上がる。

そこには銀髪、白髭の老人が立っていた。
宗教道具なのだろうか、手には杖を持ち、頭には冠をかぶっている。

「やぁ、よく来てくれた。ローム王国の勇者よ。余はアンドレイ・ホーリー・レオパレスだ。この度は我が息子を救ってくれたこと、感謝いたす。」

息子?

「我が息子は皇国魔法学院の生徒でレオル・ホーリー・レオパレスと言う。」

そうか!
ファミリーネームが一緒だったのだ。
レオルのファミリーネームなどぼんやりとしか覚えていなかった。

「その調子では知らなかったようだの。アレは顕示欲が強くて学院内には知れ渡っているはずなのだが。」

「いえ、存じ上げませんでした。」

「そうか。まぁ良い。身分に関わらず生徒を救ってくれたこと、賞賛に値する行為である。」

「いえ、僕たちはできることをしただけです。」

「謙虚だのう・・まぁ良い。学院生活はどうであった?」

俺は一瞬迷ったが今までのことを包み隠さず話すことにした。

「なんと!そのようなことになっておるのか!ホーリー聖教皇国を代表して謝罪いたす。申し訳なかった。」

教皇猊下に謝られてしまった。さすが上に立つ人だ。器の大きい人のようだ。

「ケース学院長には厳しく申し渡しておこう。この度の失礼の数々、まことに遺憾である。また我が愚息、レオルにも厳しく言い聞かせておこう。アレは子供の頃から出来が良くてな・・そのおかげですぐに人を見下す癖がついてしまった。」

アンドレイ教皇猊下がため息をつく。

「我がホーリー聖教では相互扶助を掲げている。富める者は貧しきものに奉仕することが協議じゃ。そのような学園では助け合う気風は生まれまい。改革が必要じゃな。」

アンドレイ教皇猊下は一息つくと、

「そしてこの度はユージ・ミカヅチ殿だけでなく、アカネ・ローゼンデール殿、アイズ殿、そしてヴァレンティ家のアイリス殿も治療などで貢献してくれたようじゃな。」

ヴァレンティ家は本当に有名だな。

「ええ・はい。私は戦いにはあまりお役に立てないのでヒールでお助けをしただけです。」

「中には動けなかったものもいると聞いた。その者たちを全て治療してくれたその技、見事というしかない。」

「はい・・いいえ、私はできることをしただけですから。」

「今回の報奨については、4万リーンを考えておる。通貨価値はロームのベルムとほぼ同価値じゃな。更にユージ殿には名誉正教騎士、アカネ殿には名誉祓魔師の位を与える。」
正教騎士?祓魔師?どういうものがわからないが・・

「正教騎士は我がホーリー聖教皇国で武功を挙げた者へ、祓魔師は魔を払い、益をもたらす役職の称号じゃ。もちろん他国での立場やギルドランクにも影響する。特に祓魔師は魔法使いなどには役にたつはずじゃ。」

それを聞いてアカネの目が輝く。

「今回の報酬はこれくらいかのう・・。我がホーリー聖教皇国はローム王国ほど豊かではないので、少ないがこれら報酬を受け取って欲しい。」

「とんでもない。ありがとうございます。」
俺は皆を代表してお礼を言った。

「それと・・私は故郷へ帰ることが目的なのですが、それにはローム王国、ホーリー聖教皇国、カーティス皇国の同意が必要と聞きました。不躾ながらご協力いただけませんでしょうか?」

「ふむ・・それはまた難しい問題じゃのう・・。ローム王国での立場、わが国での立場、そしてカーティス皇国での立場が重要になる。要は貴族となって国政や外交に影響を持つ立場になることじゃな。」

「はい、それはわが師、ルース・アインハルトからも聞きました。」

「残念ながら、ユージ殿はいまだ実績も地位も不足しておる。その機会があれば協力は惜しまんが、より精進することじゃな。」

「わかりました。その時はまたよろしくご協力のほど、お願い申し上げます。」

「ふむ。その時を楽しみにしておるぞ。」
とアンドレイ教皇猊下は微笑んだ。

「もう一つ伺いたいことがあるのですが・・」

「ふむ。聞こう。」

・・そして俺はある許可をもらった。

――――――――

「やったわ!祓魔師の地位は魔術師にとって大きいのよ!」
珍しくアカネが無邪気に喜んでいる。

「そんなに大きな影響力があるのか?」

「まぁユージの名誉騎士みたいなもんね。祓魔師は魔術の才があると認められたものに与えられるものだけど、滅多に与えられないのよ。お父様も持っていた称号よ。」

「そうだったのか。良かったな、アカネ」

「ええ!これでより精進する気にもなるわ!領地もご老公に増やしてもらっているし、名誉回復にも可能性が見えてきたわ!」

「良かったね、アカネ?」
アイリスが友達の出世に嬉しそうだ。

「おめでとうアカネ。僕はよくわかんないけど。」
とりあえずアイズも同調する。

「それで俺がもらった正教騎士って何なんだ?」

「正教騎士は名誉騎士と似たようなものだけど、ホーリー聖教皇国独自の制度ね。皇国の信じる教えに従い正しい戦いを行う騎士に与えられる位よ。皇国の教えに従うってことはよくわからないけど、なんかユージにあってる気がするわね。」

「皇国の教えが相互扶助というものなら俺は賛成だ。実際そう考えてインディーズカフェなんかを助けてきたつもりだしな。」

「そうね。なんか名誉騎士って武功だけで判断されるところがあるから、正教騎士の方がより高位に見られる傾向があるわね。」

それはありがたいな。

「とにかく、ユージ君、アカネ、叙勲おめでとう!そしてまたお金増えちゃったね。」

「ああ、今回も4等分でいく。丁度4万リーンだしな。」

「もうその辺はユージに任せるわ。」

「ああ、じゃあそうさせてもらう。1万リーン・・1万ベルムずつだな。」

「僕もお金もらえてうれしい。」

「ただ、まだやることが残ってるな。」

「ええ、そうね。」

俺とアカネはお互いの顔を見ると頷きあった。
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