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第二章
誘拐
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ある日、学園へ登校するとレインがいなかった。
気にせず授業を受けていると、午後になっても来ない。
俺はふと気になって
「あれ?レインがいないみたいだけど・・風邪か何かか?」
「いや、それがわからねぇんだよ。学園には何も言ってきてないらしい。」
ダースが言う。
気になるな・・。
レインの家に行ってみようか。緊張するけど。
風魔法研究部にて、アカネに
「実はレインが学園にきてないんだ。」
「?何か気になるわね・・。私も一緒に行くわ。」
と請け負ってくれた。
頼もしいな。
「私も行くよ!レインちゃんはお友達だもの。」
アイリスもついて来てくれるらしい。
よし、レインの家に行ってみよう。
俺はウェイ部長とハンナ先輩に断りを入れて、アカネとアイリスと共にレインの家に向かった。
――――――――
レインの家にて、
「さすがにでかいな・・」
とその家の威容に圧倒されていると、
「ほら、さっさと行くわよ!」
とアカネに引っ張られて門衛のところまで行く。
門衛にクラスメートであることを告げると、
「ダメだダメだ!今は誰も入れるなと言うお達しだ!」
と断られてしまった。
やはり病気か何かなのだろうか?
すると
「レインお嬢様のクラスメート?君たちは・・!お通ししてあげなさい。」
と見覚えのある執事がやってきて通してくれた。
屋敷の中に入ってみると、広いホールがあり、二階に続く階段が伸びていた。
執事に通されて二階の奥の部屋へ通される。
「ご主人様、例のお嬢様のクラスメートの方々が参りました。」
とノックをする。
「・・入りなさい。」
と声が上がる。
中に入るとレインのお父さんお母さんらしき夫婦が焦燥感にやつれた顔をしてこちらを見ていた。
「あ・・あの僕たちはレインさんのクラスメートで・・」
「ああ、聞いてるよ。クラーケン討伐を行ったお友達だろう?」
とお父さんが答える。
「君たちになら相談できるかもしれない。実はレインが・・誘拐されたんだ。」
・・・
!誘拐
「昨日の学園の帰り道だったか・・・突然数人の男が現れてうちの護衛をなぎ倒し、レインをさらっていったらしい。」
コルトン家の護衛を倒すとは・・結構な手練れだな。
「その後、家に脅迫状が届いた。レインを返してほしくば一億ベルム払え、とな。」
一億ベルム!百億円か!
「このことは軍や政府にも言っていない。軍や政府に言えばレインの首を送り返すことになるだろう。と但し書きがあってね・・。」
「そんな・・一億ベルムなんて・・」
アイリスが口をおおって驚く。
「払えない額じゃない。しかし・・素直にレインを返してくれるかも不明だ・・。」
払えない額じゃないのか。さすがコルトン家だな。
「そ・・それでどうするんですか?」
俺が聞くと、
「お金の受け渡しは明日の夜。女性に運ばせろ、と言っている。場所は噴水公園だ。」
「・・・」
「今は何よりもレインの身が心配だ。無事に帰ってきてくれさえすれば、何も言うことはない。」
「私が行くわ!」
アカネが立候補する。
「私なら女だし、子供と油断するでしょう。いざというときは犯人全部焼き払ってやるわ!」
いや、それもどうだろう。
敵も魔法防御の策はしているだろうし、レインに何かあったら取り返しがつかない。
俺がそれを言うと、
「じゃあ、引き渡しだけなら問題ないでしょう?とにかく相手の懐に潜り込まなきゃどうしようもないわ。」
うーん、それもそうかな・・。
そのままアカネがさらわれることになったりしなきゃいいけど。
「さらわれてもいいのよ。むしろその方が相手の拠点を特定できるわ!」
うーん・・・
俺はこの時、ある案を思いついていた。
皆にそれを言うと、
「そんなことが可能なのか?」
と反応が返ってくる。
「いや、できるかどうかはわかりません。本人に聞いてみないことには・・ただ。お金がかかるかもしれません。そこは大丈夫ですか?」
「ああ!ああ!かかってもいい。もしそんな方法ができるならぜひ頼む!」
お父さんに懇願された。
――――――――
俺は翌日、登校するとSクラスに向かっていた。
「ユージ!来てるわよ。ウルヴァン。」
家までいかなくて済んだな。
「よう、ウルヴァン」
俺が話しかけると、
「あぁ?またてめぇか?まだやりたりないってのかぁ?」
と早速噛みついてきた。
「いや・・今日はその、ウルヴァンに頼みがあるんだ。」
「ハッ!てめぇが頼みだぁ?面白れぇじゃねえか。聞くだけ聞いてやらぁ!」
そこで俺はかいつまんで事件のことを話す。
「ハッ!コルトン家のお嬢様が!いい気味だぜ!」
「実はそこでウルヴァンにやってほしいことがあるんだ。」
と俺は考えていた案を話すと、
「・・・できないわけじゃねぇ。要は精神破壊の応用だからな。」
といい返事が返ってきた。
「だがタダってわけにゃいかねぇぜ?わかってるんだろうな?」
「ああ、この件ではコルトン家が全面バックアップだ。」
「わかった。なら五万ベルムだ!それで手を打ってやらぁ!」
なかなかふっかけてきたな。でもこの際しょうがない。
「わかった。それで頼む。」
「ほぅ、だいぶ本気らしいな。いいだろう。金のためだ。少しだけ力貸してやるぜ。」
ウルヴァンが笑う。
――――――――
その夜。
俺たちは受け渡しの指定がされた噴水公園に来ていた。
俺たちはもちろん陰から覗くだけ。
受け渡し役は本人の希望通りアカネだ。
「さぁ、もうそろそろ時間だ。」
俺が時計を確かめると相手の指定時刻になっていた。
すると、
突然、馬に乗ったものが走り寄り、アカネから金の入った鞄をひったくる。
そのまま走りさろうとしているところに、
「精神破壊!」
ウルヴァンの魔法が飛ぶ。
馬に乗った男は馬から崩れ落ち、馬は一度いなないて座り込んだ。
よし、まず第1段階終了だ。
「じゃあ、ウルヴァン頼む」
「ったく仕方ねぇな。おい、『コルトン家のお嬢が囚われてる場所を教えろ』」
ウルヴァンが言うと、放心状態だった男が、
「南地区の・・裏路地・・廃墟のなっている屋敷の・・赤い建物だ・・」
と答える。
「よし、わかったぜ?あのあたりなら俺の庭みてぇなもんだ!」
ウルヴァンが獰猛な笑みを浮かべる。
そして俺たちは、その男をそのまま連れてそれぞれ馬を駆り該当する場所にたどり着いた。
南地区は、何というか・・路地には浮浪者がたむろし、ナイフをこれみよがしに見せびらかすチンピラがいて、店といえば怪しげな露天商が並ぶ。普段であれば、あまりお近づきになりたくない場所だ。
その中で人気のない屋敷が立ち並ぶエリアがあった。
ウルヴァンの先導でその中の一つにたどり着く。
でかい屋敷だ。が、半ば廃墟と化している。
そこは、今は少し手が入れられているのか、あちこちに光がともっている。
角から門を伺うと、チンピラ風の男たちが門の前にたむろしている。
ウルヴァンが男に何事かをささやき、門を守る男たちに向かわせた。
「ああ?てめぇか?なんか遅くねぇか?まぁいい。ボスがお待ちだ。早く入れ。」
と男たちが通すと、
「精神破壊範囲術!」
とウルヴァンが唱える。
男たちは一瞬ビクッとなったがそのまま警備を続ける。
俺たちはその横を通り過ぎていった。
そうこれが第二弾の策。
ウルヴァンの精神汚染によって、俺たちを男たちの認識外へとズラしたのだ。
俺たちは先に入った男に従って進む。
途中にいるチンピラどもはすべてウルヴァンの精神汚染の餌食になった。
さて、そろそろレインの場所を聞かなくては、
俺たちを先導してきた男に聞くと
「コルトン家のお嬢は・・ボスの部屋・・に・・」
ち、一番厄介な場所だな。出来れば気づかれずに救出したかったんだが・・。
目的の部屋に近づいていくにつれ、
「おい。どうやらこの先は魔法結界がはられてるぜ?俺様の精神破壊も効果がなくなる。」
とウルヴァンが言った。
「わかった。ここから先は俺一人で行く。皆は何かあったときのために待機していてくれ。」
「アカネ、三十秒ほどしたら、爆発を頼む。」
「わかったわ。こちらに陽動するのね!」
さすがアカネ。理解が早い。
俺は
「コール!加藤段蔵!」
と唱える。
結界内に入る前なら使えると思ったためだ。思い通りにできた。
力が湧き上がる。
剣が忍者刀に変化する。
加藤段蔵は「鳶加藤」という名前で有名な忍者で上杉家、武田家に仕えた凄腕の忍者だ。
俺はその場所から飛び上がり、廊下の天井裏に忍び込んだ。
ここからボスの部屋までは30mほど。
足音を消し、天井裏を進むこと三十秒。
ボスの部屋にたどり着いたようだ。
部屋の上の屋根裏から中をうかがう。
いた!レインだ!
とりあえずまだ何もされていないようだ。
椅子にロープで括り付けられている。
まずは結界の外に出さなくては。俺だけの力では救出は難しい。
その時、アカネの炎魔法による爆発音が屋敷内に轟いた。
「襲撃か!?おい、お前ら、ちっと様子を見て来い!」
部屋にいた十人ほどの人数のうち半数の五人ほどが慌てて駆け出していく。
ナイスタイミングだ、アカネ。
俺は縛られているレインの真上の天井から飛び降りた。
同時にレインの拘束を切断する。
「て、てめぇ?コルトン家のものか?」
泡を食っているボスやその配下を右目にとらえつつ、俺は結界を作っているものを探していた。ダメだ。見当たらない。
「レイン、大丈夫か?」
「ゆ、ユージさん?ええ、ええ。大丈夫ですわ!」
こうなったら・・・
俺はレインを担ぎ上げると、すぐそばにあった窓ガラスを蹴破って飛び降りた。
風魔法を使い、落下の衝撃を和らげる。
無事に着地。レインのブーツのおかげかもしれない。
そこでボスらしき男が指示を飛ばしてるのが見えた。
「おい、てめえら、ぼさっとしてんじゃねぇ!侵入者だ!人質を奪われた!」
それまで精神破壊の影響でボーッとしていた配下たちが目を覚ます。
「おい、やべぇぞ!人質が奪われた!」
わらわらと屋敷内外から、俺とレインを取り囲むように男たちが飛び出してくる。
しかし、もうこっちのもんだ。
アカネたちが屋敷から出てくる。
「アカネ、ウルヴァン、頼む!」
「あんたたち、よくも私の友達に手をかけたわね!」
アカネが爆風で男たちを吹っ飛ばす。
「金のためだ!てめぇら、精神汚染で廃人になりやがれ!」
ウルヴァンが今度は手加減なしの精神破壊を放つ。
男たちはバタバタと倒れていった。
「て・・てめぇら、何もんだ?」
「ただの学生さ。」
俺は言い放つと、刀を握りなおしてボスの首を撃った。みねうちだ。
ボスが倒れる。
部下たちも主にアカネとウルヴァンが倒したようだ。
俺たちは軍にアカネに知らせにいってもらうと、急いでレインを連れてコルトン家に向かった。
気にせず授業を受けていると、午後になっても来ない。
俺はふと気になって
「あれ?レインがいないみたいだけど・・風邪か何かか?」
「いや、それがわからねぇんだよ。学園には何も言ってきてないらしい。」
ダースが言う。
気になるな・・。
レインの家に行ってみようか。緊張するけど。
風魔法研究部にて、アカネに
「実はレインが学園にきてないんだ。」
「?何か気になるわね・・。私も一緒に行くわ。」
と請け負ってくれた。
頼もしいな。
「私も行くよ!レインちゃんはお友達だもの。」
アイリスもついて来てくれるらしい。
よし、レインの家に行ってみよう。
俺はウェイ部長とハンナ先輩に断りを入れて、アカネとアイリスと共にレインの家に向かった。
――――――――
レインの家にて、
「さすがにでかいな・・」
とその家の威容に圧倒されていると、
「ほら、さっさと行くわよ!」
とアカネに引っ張られて門衛のところまで行く。
門衛にクラスメートであることを告げると、
「ダメだダメだ!今は誰も入れるなと言うお達しだ!」
と断られてしまった。
やはり病気か何かなのだろうか?
すると
「レインお嬢様のクラスメート?君たちは・・!お通ししてあげなさい。」
と見覚えのある執事がやってきて通してくれた。
屋敷の中に入ってみると、広いホールがあり、二階に続く階段が伸びていた。
執事に通されて二階の奥の部屋へ通される。
「ご主人様、例のお嬢様のクラスメートの方々が参りました。」
とノックをする。
「・・入りなさい。」
と声が上がる。
中に入るとレインのお父さんお母さんらしき夫婦が焦燥感にやつれた顔をしてこちらを見ていた。
「あ・・あの僕たちはレインさんのクラスメートで・・」
「ああ、聞いてるよ。クラーケン討伐を行ったお友達だろう?」
とお父さんが答える。
「君たちになら相談できるかもしれない。実はレインが・・誘拐されたんだ。」
・・・
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「昨日の学園の帰り道だったか・・・突然数人の男が現れてうちの護衛をなぎ倒し、レインをさらっていったらしい。」
コルトン家の護衛を倒すとは・・結構な手練れだな。
「その後、家に脅迫状が届いた。レインを返してほしくば一億ベルム払え、とな。」
一億ベルム!百億円か!
「このことは軍や政府にも言っていない。軍や政府に言えばレインの首を送り返すことになるだろう。と但し書きがあってね・・。」
「そんな・・一億ベルムなんて・・」
アイリスが口をおおって驚く。
「払えない額じゃない。しかし・・素直にレインを返してくれるかも不明だ・・。」
払えない額じゃないのか。さすがコルトン家だな。
「そ・・それでどうするんですか?」
俺が聞くと、
「お金の受け渡しは明日の夜。女性に運ばせろ、と言っている。場所は噴水公園だ。」
「・・・」
「今は何よりもレインの身が心配だ。無事に帰ってきてくれさえすれば、何も言うことはない。」
「私が行くわ!」
アカネが立候補する。
「私なら女だし、子供と油断するでしょう。いざというときは犯人全部焼き払ってやるわ!」
いや、それもどうだろう。
敵も魔法防御の策はしているだろうし、レインに何かあったら取り返しがつかない。
俺がそれを言うと、
「じゃあ、引き渡しだけなら問題ないでしょう?とにかく相手の懐に潜り込まなきゃどうしようもないわ。」
うーん、それもそうかな・・。
そのままアカネがさらわれることになったりしなきゃいいけど。
「さらわれてもいいのよ。むしろその方が相手の拠点を特定できるわ!」
うーん・・・
俺はこの時、ある案を思いついていた。
皆にそれを言うと、
「そんなことが可能なのか?」
と反応が返ってくる。
「いや、できるかどうかはわかりません。本人に聞いてみないことには・・ただ。お金がかかるかもしれません。そこは大丈夫ですか?」
「ああ!ああ!かかってもいい。もしそんな方法ができるならぜひ頼む!」
お父さんに懇願された。
――――――――
俺は翌日、登校するとSクラスに向かっていた。
「ユージ!来てるわよ。ウルヴァン。」
家までいかなくて済んだな。
「よう、ウルヴァン」
俺が話しかけると、
「あぁ?またてめぇか?まだやりたりないってのかぁ?」
と早速噛みついてきた。
「いや・・今日はその、ウルヴァンに頼みがあるんだ。」
「ハッ!てめぇが頼みだぁ?面白れぇじゃねえか。聞くだけ聞いてやらぁ!」
そこで俺はかいつまんで事件のことを話す。
「ハッ!コルトン家のお嬢様が!いい気味だぜ!」
「実はそこでウルヴァンにやってほしいことがあるんだ。」
と俺は考えていた案を話すと、
「・・・できないわけじゃねぇ。要は精神破壊の応用だからな。」
といい返事が返ってきた。
「だがタダってわけにゃいかねぇぜ?わかってるんだろうな?」
「ああ、この件ではコルトン家が全面バックアップだ。」
「わかった。なら五万ベルムだ!それで手を打ってやらぁ!」
なかなかふっかけてきたな。でもこの際しょうがない。
「わかった。それで頼む。」
「ほぅ、だいぶ本気らしいな。いいだろう。金のためだ。少しだけ力貸してやるぜ。」
ウルヴァンが笑う。
――――――――
その夜。
俺たちは受け渡しの指定がされた噴水公園に来ていた。
俺たちはもちろん陰から覗くだけ。
受け渡し役は本人の希望通りアカネだ。
「さぁ、もうそろそろ時間だ。」
俺が時計を確かめると相手の指定時刻になっていた。
すると、
突然、馬に乗ったものが走り寄り、アカネから金の入った鞄をひったくる。
そのまま走りさろうとしているところに、
「精神破壊!」
ウルヴァンの魔法が飛ぶ。
馬に乗った男は馬から崩れ落ち、馬は一度いなないて座り込んだ。
よし、まず第1段階終了だ。
「じゃあ、ウルヴァン頼む」
「ったく仕方ねぇな。おい、『コルトン家のお嬢が囚われてる場所を教えろ』」
ウルヴァンが言うと、放心状態だった男が、
「南地区の・・裏路地・・廃墟のなっている屋敷の・・赤い建物だ・・」
と答える。
「よし、わかったぜ?あのあたりなら俺の庭みてぇなもんだ!」
ウルヴァンが獰猛な笑みを浮かべる。
そして俺たちは、その男をそのまま連れてそれぞれ馬を駆り該当する場所にたどり着いた。
南地区は、何というか・・路地には浮浪者がたむろし、ナイフをこれみよがしに見せびらかすチンピラがいて、店といえば怪しげな露天商が並ぶ。普段であれば、あまりお近づきになりたくない場所だ。
その中で人気のない屋敷が立ち並ぶエリアがあった。
ウルヴァンの先導でその中の一つにたどり着く。
でかい屋敷だ。が、半ば廃墟と化している。
そこは、今は少し手が入れられているのか、あちこちに光がともっている。
角から門を伺うと、チンピラ風の男たちが門の前にたむろしている。
ウルヴァンが男に何事かをささやき、門を守る男たちに向かわせた。
「ああ?てめぇか?なんか遅くねぇか?まぁいい。ボスがお待ちだ。早く入れ。」
と男たちが通すと、
「精神破壊範囲術!」
とウルヴァンが唱える。
男たちは一瞬ビクッとなったがそのまま警備を続ける。
俺たちはその横を通り過ぎていった。
そうこれが第二弾の策。
ウルヴァンの精神汚染によって、俺たちを男たちの認識外へとズラしたのだ。
俺たちは先に入った男に従って進む。
途中にいるチンピラどもはすべてウルヴァンの精神汚染の餌食になった。
さて、そろそろレインの場所を聞かなくては、
俺たちを先導してきた男に聞くと
「コルトン家のお嬢は・・ボスの部屋・・に・・」
ち、一番厄介な場所だな。出来れば気づかれずに救出したかったんだが・・。
目的の部屋に近づいていくにつれ、
「おい。どうやらこの先は魔法結界がはられてるぜ?俺様の精神破壊も効果がなくなる。」
とウルヴァンが言った。
「わかった。ここから先は俺一人で行く。皆は何かあったときのために待機していてくれ。」
「アカネ、三十秒ほどしたら、爆発を頼む。」
「わかったわ。こちらに陽動するのね!」
さすがアカネ。理解が早い。
俺は
「コール!加藤段蔵!」
と唱える。
結界内に入る前なら使えると思ったためだ。思い通りにできた。
力が湧き上がる。
剣が忍者刀に変化する。
加藤段蔵は「鳶加藤」という名前で有名な忍者で上杉家、武田家に仕えた凄腕の忍者だ。
俺はその場所から飛び上がり、廊下の天井裏に忍び込んだ。
ここからボスの部屋までは30mほど。
足音を消し、天井裏を進むこと三十秒。
ボスの部屋にたどり着いたようだ。
部屋の上の屋根裏から中をうかがう。
いた!レインだ!
とりあえずまだ何もされていないようだ。
椅子にロープで括り付けられている。
まずは結界の外に出さなくては。俺だけの力では救出は難しい。
その時、アカネの炎魔法による爆発音が屋敷内に轟いた。
「襲撃か!?おい、お前ら、ちっと様子を見て来い!」
部屋にいた十人ほどの人数のうち半数の五人ほどが慌てて駆け出していく。
ナイスタイミングだ、アカネ。
俺は縛られているレインの真上の天井から飛び降りた。
同時にレインの拘束を切断する。
「て、てめぇ?コルトン家のものか?」
泡を食っているボスやその配下を右目にとらえつつ、俺は結界を作っているものを探していた。ダメだ。見当たらない。
「レイン、大丈夫か?」
「ゆ、ユージさん?ええ、ええ。大丈夫ですわ!」
こうなったら・・・
俺はレインを担ぎ上げると、すぐそばにあった窓ガラスを蹴破って飛び降りた。
風魔法を使い、落下の衝撃を和らげる。
無事に着地。レインのブーツのおかげかもしれない。
そこでボスらしき男が指示を飛ばしてるのが見えた。
「おい、てめえら、ぼさっとしてんじゃねぇ!侵入者だ!人質を奪われた!」
それまで精神破壊の影響でボーッとしていた配下たちが目を覚ます。
「おい、やべぇぞ!人質が奪われた!」
わらわらと屋敷内外から、俺とレインを取り囲むように男たちが飛び出してくる。
しかし、もうこっちのもんだ。
アカネたちが屋敷から出てくる。
「アカネ、ウルヴァン、頼む!」
「あんたたち、よくも私の友達に手をかけたわね!」
アカネが爆風で男たちを吹っ飛ばす。
「金のためだ!てめぇら、精神汚染で廃人になりやがれ!」
ウルヴァンが今度は手加減なしの精神破壊を放つ。
男たちはバタバタと倒れていった。
「て・・てめぇら、何もんだ?」
「ただの学生さ。」
俺は言い放つと、刀を握りなおしてボスの首を撃った。みねうちだ。
ボスが倒れる。
部下たちも主にアカネとウルヴァンが倒したようだ。
俺たちは軍にアカネに知らせにいってもらうと、急いでレインを連れてコルトン家に向かった。
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