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あれから…………③

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「お邪魔したわねウィンティアさん、たまにうちにも顔を出して」

「はい」

 バイバイとアナとルインが手を振る。フィーリもバイバイ。

「さあ、フィーリ、お父様がお帰りになりますよ。それまでごほんを読みましょうね」

「はーいっ」

 私はソファーで膝にフィーリを乗せて絵本を開く。
 程なくして、レオナルド・キーファーが帰ってきた。
 フィーリが膝から飛び降りて、玄関に走る。

「ただいまフィーリ、いいこにしていたかい」

 きゃっきゃと笑うフィーリを腕に抱えて、あれから月日が経ち、大人の男性の色気が追加したレオナルド・キーファー。

「ただいまティア」

 フィーリを片手に抱きながら、私を抱き締めてくる。

「お帰りなさい」

「ああ、ただいま」

 と、ちゅ、とキスして、ジーッと見てくる。
 あ、これは夜の合図なのだが。

「あのね、レオ」

 夫婦になり、お互い愛称呼びになって板についた。

「ん?」

 ちゅ、とキスしてくる。
 ちょっと待ってと押し返す。

「まだ、確実じゃないんだけど。そのできた感じで」

「え?」

「だから、二人目」

 …………………だって来てないもんっ。まるっと2ヶ月来てないもん。
 ふわあっ、と笑う。フィーリの時もそうだった。

「本当?」

「多分、ね」

「そうかっ」

 弾んだ声で抱き締めてくる。

「ああ、ありがとうティア、体調は? 休んだ方がいいんじゃないか?」

「大丈夫。まだ、確実じゃないのよ。もしかしたらだよ」

 やや興奮気味のレオナルド・キーファー。私は腕を押し返す。

「だけど、最初に伝えたくて」

 今日お世話になっているアンジェリカ様がいらしたが、言えなかった。やっぱり最初は、旦那様かなって。
 その言葉に、嬉しいのが溢れているレオナルド・キーファー。

「本当に嬉しいよティア」

 ぎゅ。

「うー?」

 フィーリがきょとんとしている。

「フィーリ、もしかしたらお姉ちゃんになるかもしれないよ」

「まだ確実じゃないのよ」

「いいや、きっと出来てる」

 そして、満面の笑みでぎゅ、と抱き締めてくる。

「ありがとうティア、私に家族を与えてくれて」

 複雑な生まれと育ちのレオナルド・キーファーは、家族が憧れがあった。もちろんウーヴァ公爵家の皆様も家族だけど、それとは違う家族が欲しかったと。

「もう。確実じゃないのよ。ほら、お仕事お疲れ様。嗽と手洗いして。ご飯にしましょう」

「わかった」

 ちゅ。
 上機嫌のレオナルド・キーファーは、フィーリを抱えて洗面所に行った。
 数日後、無事にマルティンとマナ嬢のおもてなしした。それから、私の妊娠が確実にわかった。
 ちょっとだけ、心配だったのは、この子が女の子で、次女で、私のようにひねくれたらどうしようって。
 ぽろり、と溢した。

「なら、全てを愛して見せるよ。ティア、どうか、私を信じて」

 そういって、フィーリごと私を抱き締めてくれた。
 
「本当?」

「もちろん」

 この人、本当に私を大事にしてくれる。
 私は、ちゃんと愛されているって、思える。
 山岸まどかだって、行き違いがあったけど、愛されていた。答える事はできなかったけど。
 後悔した。神様のおかげで謝れたけど、もうあんな思いはいやだ。
 私はぎゅ、とレオナルド・キーファーに抱きつく。

「うん。信じてる」

 彼は、私を裏切らない。だから、素直に甘えよう。
 レオナルド・キーファーもぎゅ、と抱き締め返す。

「フィーリも、フィーリも」

 と、フィーリも来たので、三人でぎゅ、と抱き締め合う。
 暖かい、嬉しい、心が温かい。
 きっと、私は幸せなんだろう。

 数ヶ月後、私はレオナルド・キーファーそっくりの男の子を産んだ。名付け親にはセシリア女公爵だ。オーランドとなる。
 あれだけ、大騒ぎして産んだのに、落ち着いたらもう一人欲しいなー、なんて思ったら。

「え? 三人目」

「多分、確実じゃないのよ」

 まだまだ、賑やかな日々になりそうだ。
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