ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
330 / 338

キャサリンの最後⑤

しおりを挟む
 最終弁論は、こちらがリードして終わった。
 私は途中で欠伸が出そうになる。
 キャサリンがとんちんかんな発言は辟易していたのだが、気を使ってもらって控え室にナタリアと避難。
 裁判所は基本的に飲食は持ち込みできないが、グレーゾーンがある。長時間になる場合もあるので、このグレーゾーンで飲食可能だ。ただし監視がつく。

「お嬢様、お待たせしました」

「ナタリアも一緒に飲みましょう」

「でも」

「いいじゃない。私、喉からから。ナタリアもでしょ。一緒に飲みましょう」

 ナタリアもおずおずと座る。私はウーヴァ公爵のシェフが持たせてくれたクッキーを齧る。
 うん、美味しい。美味しいけど。

「うーん」

「どうされました?」

「いやあのね、ねえナタリア、クッキーにこう、分厚く固めのクリームを挟んでいるの、知ってる?」

「クリームですか? えーっと、私はないです。マカロンとは違うんですか?」

「ううん、違うの」

 こう、バターサンドクッキーみたいな。クリームも色をいれたりしたら、見栄えよくない?

「お嬢様、新作ですか?」

「うん、この裁判が馬鹿馬鹿しくて、こんなことばっかり考えていたの」

「きっと大ヒットしますね」

 私は忘れないように頭にメモ。
 しばらくしてから、ボスザ弁護士達が帰って来た。しばらくって言っても二時間以上待った。

「どうでした?」

「こちらの勝訴は間違いないよ」

 あの後も色々あったと、キャサリンは頑な勘違い発言を撤回しなかった。だけど、キャサリンのその勘違いさせてしまうような事があったと、向こうは証明できなった。再三、ローザ伯爵からウィンティアに対する説明がなされていたからだ。それは業務日誌にあったし。ひた隠しにしていた、テヘロンでの大騒ぎも明らかになった。
 テヘロンでキャサリンがやらかしたこと、永久入国禁止、そしてローザ伯爵家にキャサリンの永遠に教育するように言われていたこと。
 ローズマリー勲章を逃したこと、クラーラ伯爵夫人が、その際流産し、二度と子供が望めなくなったことなど。
 キャサリンが重度の妄想癖と診断された事だと。
 それが明らかになった瞬間、傍聴席は、あー、納得、みたいな空気になったと。

「次が判決になるけど、どうする? 欠席しても許されるよ」

「ここまで来たので、最後まで見届けます」

 私は帰宅準備、あ、そうだ。

「わざわざ証言に来てくれたラムダ子爵にご挨拶をしたいのですが」

 うーん、と考えるボスザ弁護士。

「なら、まず、ラムダ子爵の立場をご両親から聞いてからにしなさい」

 え? わざわざ?
 でも、ボスザ弁護士がそう言うなら、仕方ない。私はグレーゾーンで生物学上の両親と対面した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど

富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。 「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。 魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。 ――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?! ――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの? 私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。 今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。 重複投稿ですが、改稿してます

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...