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キャサリンの最後⑤
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最終弁論は、こちらがリードして終わった。
私は途中で欠伸が出そうになる。
キャサリンがとんちんかんな発言は辟易していたのだが、気を使ってもらって控え室にナタリアと避難。
裁判所は基本的に飲食は持ち込みできないが、グレーゾーンがある。長時間になる場合もあるので、このグレーゾーンで飲食可能だ。ただし監視がつく。
「お嬢様、お待たせしました」
「ナタリアも一緒に飲みましょう」
「でも」
「いいじゃない。私、喉からから。ナタリアもでしょ。一緒に飲みましょう」
ナタリアもおずおずと座る。私はウーヴァ公爵のシェフが持たせてくれたクッキーを齧る。
うん、美味しい。美味しいけど。
「うーん」
「どうされました?」
「いやあのね、ねえナタリア、クッキーにこう、分厚く固めのクリームを挟んでいるの、知ってる?」
「クリームですか? えーっと、私はないです。マカロンとは違うんですか?」
「ううん、違うの」
こう、バターサンドクッキーみたいな。クリームも色をいれたりしたら、見栄えよくない?
「お嬢様、新作ですか?」
「うん、この裁判が馬鹿馬鹿しくて、こんなことばっかり考えていたの」
「きっと大ヒットしますね」
私は忘れないように頭にメモ。
しばらくしてから、ボスザ弁護士達が帰って来た。しばらくって言っても二時間以上待った。
「どうでした?」
「こちらの勝訴は間違いないよ」
あの後も色々あったと、キャサリンは頑な勘違い発言を撤回しなかった。だけど、キャサリンのその勘違いさせてしまうような事があったと、向こうは証明できなった。再三、ローザ伯爵からウィンティアに対する説明がなされていたからだ。それは業務日誌にあったし。ひた隠しにしていた、テヘロンでの大騒ぎも明らかになった。
テヘロンでキャサリンがやらかしたこと、永久入国禁止、そしてローザ伯爵家にキャサリンの永遠に教育するように言われていたこと。
ローズマリー勲章を逃したこと、クラーラ伯爵夫人が、その際流産し、二度と子供が望めなくなったことなど。
キャサリンが重度の妄想癖と診断された事だと。
それが明らかになった瞬間、傍聴席は、あー、納得、みたいな空気になったと。
「次が判決になるけど、どうする? 欠席しても許されるよ」
「ここまで来たので、最後まで見届けます」
私は帰宅準備、あ、そうだ。
「わざわざ証言に来てくれたラムダ子爵にご挨拶をしたいのですが」
うーん、と考えるボスザ弁護士。
「なら、まず、ラムダ子爵の立場をご両親から聞いてからにしなさい」
え? わざわざ?
でも、ボスザ弁護士がそう言うなら、仕方ない。私はグレーゾーンで生物学上の両親と対面した。
私は途中で欠伸が出そうになる。
キャサリンがとんちんかんな発言は辟易していたのだが、気を使ってもらって控え室にナタリアと避難。
裁判所は基本的に飲食は持ち込みできないが、グレーゾーンがある。長時間になる場合もあるので、このグレーゾーンで飲食可能だ。ただし監視がつく。
「お嬢様、お待たせしました」
「ナタリアも一緒に飲みましょう」
「でも」
「いいじゃない。私、喉からから。ナタリアもでしょ。一緒に飲みましょう」
ナタリアもおずおずと座る。私はウーヴァ公爵のシェフが持たせてくれたクッキーを齧る。
うん、美味しい。美味しいけど。
「うーん」
「どうされました?」
「いやあのね、ねえナタリア、クッキーにこう、分厚く固めのクリームを挟んでいるの、知ってる?」
「クリームですか? えーっと、私はないです。マカロンとは違うんですか?」
「ううん、違うの」
こう、バターサンドクッキーみたいな。クリームも色をいれたりしたら、見栄えよくない?
「お嬢様、新作ですか?」
「うん、この裁判が馬鹿馬鹿しくて、こんなことばっかり考えていたの」
「きっと大ヒットしますね」
私は忘れないように頭にメモ。
しばらくしてから、ボスザ弁護士達が帰って来た。しばらくって言っても二時間以上待った。
「どうでした?」
「こちらの勝訴は間違いないよ」
あの後も色々あったと、キャサリンは頑な勘違い発言を撤回しなかった。だけど、キャサリンのその勘違いさせてしまうような事があったと、向こうは証明できなった。再三、ローザ伯爵からウィンティアに対する説明がなされていたからだ。それは業務日誌にあったし。ひた隠しにしていた、テヘロンでの大騒ぎも明らかになった。
テヘロンでキャサリンがやらかしたこと、永久入国禁止、そしてローザ伯爵家にキャサリンの永遠に教育するように言われていたこと。
ローズマリー勲章を逃したこと、クラーラ伯爵夫人が、その際流産し、二度と子供が望めなくなったことなど。
キャサリンが重度の妄想癖と診断された事だと。
それが明らかになった瞬間、傍聴席は、あー、納得、みたいな空気になったと。
「次が判決になるけど、どうする? 欠席しても許されるよ」
「ここまで来たので、最後まで見届けます」
私は帰宅準備、あ、そうだ。
「わざわざ証言に来てくれたラムダ子爵にご挨拶をしたいのですが」
うーん、と考えるボスザ弁護士。
「なら、まず、ラムダ子爵の立場をご両親から聞いてからにしなさい」
え? わざわざ?
でも、ボスザ弁護士がそう言うなら、仕方ない。私はグレーゾーンで生物学上の両親と対面した。
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