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キャサリンの最後①
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最終弁論はこちらが圧倒的有利に進んだ。
ボスザ弁護士が準備した証拠が効いたからだ。
向こうは私がずっと昔に亡くなった、ティアラ・ローザの娘だと押し通そうとしたが。
きちんと死亡診断書もあるし、ティアラ・ローザの葬儀に出席した人達も証言台に立ってくれた。
それでも向こうは食い下がった。
「ウィンティア・ローザの面影は、ローザ伯爵夫妻から感じないっ」
と。
ボスザ弁護士は二枚の肖像画と、一人の証人で打ち返した。
それは、在りし日のティーナ・ローザの肖像画だ。
私も初めて見た。
「これは、ローザ伯爵家所有の別荘に飾られていました。ティーナ・ローザが、ジェフリー・ローザと婚姻して一年後に描かれたものです」
肖像画には、二十歳のティーナ・ローザ。私の五年後の様な姿だ。これには法廷がざわついた。あの幸せな五年を過ごした別荘にあったんだ。ティーナ・ローザの隣には若かりし日のジェフリー・ローザ。生物学上の父親そっくりだ。
次の証人は何と生物学上の母親の兄だ。
なんで? と、思ったら、瞳の色が一緒だ。ウィンティアはくすんだような青い目だが、生物学上の両親は、緑色だからだ。
「お名前を伺っても?」
「ペーター・ラムダです」
と、落ち着いた様子で答えている。
「では、ウィンティア・ローザとの関係は?」
「私は母方の伯父になります。彼女の母親は、私の妹になりますので」
ラムダ子爵はしっかり受け答え。
質問の焦点は瞳の色だ。ラムダ子爵は、辺境伯の分家になり、このくすんだような青い目は、本家の色だと。ペーター・ラムダ子爵の息子二人、つまりウィンティアの従兄弟も同じ色だ。クラーラ・ローザは、母親の目の色だそうだ。
そこにバカな茶々を入れたのは、言わずと知れたキャサリンだ。
キャサリンは勾留所で拘束されていた事や、世話役のメイドがいなかったことで、くたびれたような印象になっていた。主な原因は見事だった金髪だ。手入れがまともに行えてなかったのか、何とかアップにしているが、纏まりが曖昧なアップだ。ドレスもいつも場違いな物なのに、凄くシンプルなブラウスとスカートだ。理由は後から聞いた。
髪はいままでメイドに手入れさせていたから、自分で綺麗に洗えなかったし、数日間軟禁状態だったから余計に荒れてしまった。キャサリンの髪は、フワフワの金髪だから、手入れしないと余計にからむ。自分でやればいいのに、と思うがあのキャサリンだ。拘束所から出たら、メイドにさせようとしたが、ローザ伯爵家からの派遣がなくなったのを知らなかった。メイドの派遣がなくなるのは、当然と言えば当然だけと。ローザ伯爵家の嫌がらせだとか何とか言ってた。それからドレスに関しても、おそらくギリギリまで揉めた。リージョン弁護士の事務所の女性が、ぐずぐず言うキャサリンにとりあえず着せてから、遅刻ギリギリでやって来たのだ。髪もその女性が馬車内でなんとか整えた。
生粋の貴族女性は、だいたいキャサリンみたいなもんだ。
起きたら、ベルをならして使用人を呼んで、座ったまま支度をさせるもんだ。中には面倒だからと、ある程度の事をしてから呼ぶ人もいるけどね。
いままでのキャサリンは、じっくりお顔と髪の手入れをしてから、その日着るドレスを選んで、メイクアップする。ここまでは、普通の貴族女性の支度風景なんだが、優柔不断だから、仕上げてからドレスに戻るなんて日常茶飯事だった。
「きっと、その人がティアラ・ローザの駆け落ち相手ですわっ、その人があの子の父親ですわっ」
ボスザ弁護士が準備した証拠が効いたからだ。
向こうは私がずっと昔に亡くなった、ティアラ・ローザの娘だと押し通そうとしたが。
きちんと死亡診断書もあるし、ティアラ・ローザの葬儀に出席した人達も証言台に立ってくれた。
それでも向こうは食い下がった。
「ウィンティア・ローザの面影は、ローザ伯爵夫妻から感じないっ」
と。
ボスザ弁護士は二枚の肖像画と、一人の証人で打ち返した。
それは、在りし日のティーナ・ローザの肖像画だ。
私も初めて見た。
「これは、ローザ伯爵家所有の別荘に飾られていました。ティーナ・ローザが、ジェフリー・ローザと婚姻して一年後に描かれたものです」
肖像画には、二十歳のティーナ・ローザ。私の五年後の様な姿だ。これには法廷がざわついた。あの幸せな五年を過ごした別荘にあったんだ。ティーナ・ローザの隣には若かりし日のジェフリー・ローザ。生物学上の父親そっくりだ。
次の証人は何と生物学上の母親の兄だ。
なんで? と、思ったら、瞳の色が一緒だ。ウィンティアはくすんだような青い目だが、生物学上の両親は、緑色だからだ。
「お名前を伺っても?」
「ペーター・ラムダです」
と、落ち着いた様子で答えている。
「では、ウィンティア・ローザとの関係は?」
「私は母方の伯父になります。彼女の母親は、私の妹になりますので」
ラムダ子爵はしっかり受け答え。
質問の焦点は瞳の色だ。ラムダ子爵は、辺境伯の分家になり、このくすんだような青い目は、本家の色だと。ペーター・ラムダ子爵の息子二人、つまりウィンティアの従兄弟も同じ色だ。クラーラ・ローザは、母親の目の色だそうだ。
そこにバカな茶々を入れたのは、言わずと知れたキャサリンだ。
キャサリンは勾留所で拘束されていた事や、世話役のメイドがいなかったことで、くたびれたような印象になっていた。主な原因は見事だった金髪だ。手入れがまともに行えてなかったのか、何とかアップにしているが、纏まりが曖昧なアップだ。ドレスもいつも場違いな物なのに、凄くシンプルなブラウスとスカートだ。理由は後から聞いた。
髪はいままでメイドに手入れさせていたから、自分で綺麗に洗えなかったし、数日間軟禁状態だったから余計に荒れてしまった。キャサリンの髪は、フワフワの金髪だから、手入れしないと余計にからむ。自分でやればいいのに、と思うがあのキャサリンだ。拘束所から出たら、メイドにさせようとしたが、ローザ伯爵家からの派遣がなくなったのを知らなかった。メイドの派遣がなくなるのは、当然と言えば当然だけと。ローザ伯爵家の嫌がらせだとか何とか言ってた。それからドレスに関しても、おそらくギリギリまで揉めた。リージョン弁護士の事務所の女性が、ぐずぐず言うキャサリンにとりあえず着せてから、遅刻ギリギリでやって来たのだ。髪もその女性が馬車内でなんとか整えた。
生粋の貴族女性は、だいたいキャサリンみたいなもんだ。
起きたら、ベルをならして使用人を呼んで、座ったまま支度をさせるもんだ。中には面倒だからと、ある程度の事をしてから呼ぶ人もいるけどね。
いままでのキャサリンは、じっくりお顔と髪の手入れをしてから、その日着るドレスを選んで、メイクアップする。ここまでは、普通の貴族女性の支度風景なんだが、優柔不断だから、仕上げてからドレスに戻るなんて日常茶飯事だった。
「きっと、その人がティアラ・ローザの駆け落ち相手ですわっ、その人があの子の父親ですわっ」
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