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願い⑦
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「気が、ついていたのか?」
「何となくですが」
「そうか」
生物学上の父親は、目を伏せる。
「私の父、そしてお前の祖父、ジェフリー・ローザは、お前への接近禁止命令を無視した形になり、治療済み次第拘束される」
ウィンティアがニ度目にローザ伯爵家に戻った時、生物学上の両親がテヘロンに行っていた期間、ローザ伯爵家を切り盛りしたのは、祖父のジェフリー・ローザだった。そこで『魔了』の魔女に目をつけられて、ウィンティアへの虐待が再び始まった。
操られていたとは言え、ジェフリー・ローザは罪に問われた。『魔了』と『魅了』はほぼ作用は一緒。違うのは『魔了』は誰か一人を虜にしたら、その人を介して伝染することだ。
『魔了』はウィンティアが保護されてから消えた、当然『魔了』された後の後遺症が出た。この為ジェフリー・ローザは、症状が酷似している『魅了』の被害者とされた。だが、犯した罪は消えない。
ジェフリー・ローザは、『魔了』の後遺症の治療の後、ひなびた田舎に蟄居した。二度とウィンティアに、近付かないと制約して。
今回の裁判が気になり、こっそり見にきたんだろう。そしてあの騒ぎだ。
私の容姿は、叔母ティアラ・ローザの生き写しだから、思わずあの言葉がでたんだろう。
確かに幼いウィンティアに対してしたことは許されない。本人の意志がなくてもだ。だけど。
「今回に限り、私はあの人の処罰は望みません」
先ほどの話で、おそらくあの若い貴族男性から受けたものがひどいものであるんだろう。結果的に今回は助けてくれたので、処罰は望みない。
「分かった、その様に進言しよう」
生物学上の両親はそれでウーヴァ公爵家を後にした。
次に訪れて来たのは、新聞記者のデルダさんだ。デルダさんの新聞は、真面目な記事しかださないから、今回の裁判で起きたことを、そのまま書いている。無責任なゴシップ紙は言いたい放題みたい。
デルダさんはリンゴを持ってきてくれた。
「体調はどうだい?」
「お陰さまで」
「良かった」
デルダさんは今回の裁判記事の責任者となってて忙しいみたい。
「今回の裁判の焦点がずれてきているけど、向こうが勝てる要素はないからね。だけど、訴える内容が内容だから、注目を集めている。しかも君は、ウーヴァ公爵の甥と婚約関係にあるから余計に、ね」
「それは自覚してます。現在のキャサリンは? 向こうの動きは?」
ウーヴァ公爵家の人達に聞いたが、また私がどうかなるんじゃないかと心配して教えてくれない。
「明日辺り勾留所からだされるよ。もちろん監視はつくけど。だけど、もうローザ伯爵から世話役は出さないだろうね」
キャサリンからよく分からない訴えをされて、たった一人の妹、ティアラ・ローザを侮辱したのだ。ローザ伯爵から、キャサリンの世話役を出す理由はない。
「最終弁論、来るのかい?」
「はい」
「うーん、あんまりおすすめしないよ。きっと向こうは君を傷付けるような言葉を使って来るから」
「分かった上です」
「そっか。ね、何かあった? ずいぶんすっきりした顔だけど」
「それは、秘密です」
「そっか。女の子の秘密に、おじさん触ったら叩かれちゃうね」
と、おどけたように言って、デルダさんは忙しいようで帰って行った。
後、数日で最終弁論だ。
「何となくですが」
「そうか」
生物学上の父親は、目を伏せる。
「私の父、そしてお前の祖父、ジェフリー・ローザは、お前への接近禁止命令を無視した形になり、治療済み次第拘束される」
ウィンティアがニ度目にローザ伯爵家に戻った時、生物学上の両親がテヘロンに行っていた期間、ローザ伯爵家を切り盛りしたのは、祖父のジェフリー・ローザだった。そこで『魔了』の魔女に目をつけられて、ウィンティアへの虐待が再び始まった。
操られていたとは言え、ジェフリー・ローザは罪に問われた。『魔了』と『魅了』はほぼ作用は一緒。違うのは『魔了』は誰か一人を虜にしたら、その人を介して伝染することだ。
『魔了』はウィンティアが保護されてから消えた、当然『魔了』された後の後遺症が出た。この為ジェフリー・ローザは、症状が酷似している『魅了』の被害者とされた。だが、犯した罪は消えない。
ジェフリー・ローザは、『魔了』の後遺症の治療の後、ひなびた田舎に蟄居した。二度とウィンティアに、近付かないと制約して。
今回の裁判が気になり、こっそり見にきたんだろう。そしてあの騒ぎだ。
私の容姿は、叔母ティアラ・ローザの生き写しだから、思わずあの言葉がでたんだろう。
確かに幼いウィンティアに対してしたことは許されない。本人の意志がなくてもだ。だけど。
「今回に限り、私はあの人の処罰は望みません」
先ほどの話で、おそらくあの若い貴族男性から受けたものがひどいものであるんだろう。結果的に今回は助けてくれたので、処罰は望みない。
「分かった、その様に進言しよう」
生物学上の両親はそれでウーヴァ公爵家を後にした。
次に訪れて来たのは、新聞記者のデルダさんだ。デルダさんの新聞は、真面目な記事しかださないから、今回の裁判で起きたことを、そのまま書いている。無責任なゴシップ紙は言いたい放題みたい。
デルダさんはリンゴを持ってきてくれた。
「体調はどうだい?」
「お陰さまで」
「良かった」
デルダさんは今回の裁判記事の責任者となってて忙しいみたい。
「今回の裁判の焦点がずれてきているけど、向こうが勝てる要素はないからね。だけど、訴える内容が内容だから、注目を集めている。しかも君は、ウーヴァ公爵の甥と婚約関係にあるから余計に、ね」
「それは自覚してます。現在のキャサリンは? 向こうの動きは?」
ウーヴァ公爵家の人達に聞いたが、また私がどうかなるんじゃないかと心配して教えてくれない。
「明日辺り勾留所からだされるよ。もちろん監視はつくけど。だけど、もうローザ伯爵から世話役は出さないだろうね」
キャサリンからよく分からない訴えをされて、たった一人の妹、ティアラ・ローザを侮辱したのだ。ローザ伯爵から、キャサリンの世話役を出す理由はない。
「最終弁論、来るのかい?」
「はい」
「うーん、あんまりおすすめしないよ。きっと向こうは君を傷付けるような言葉を使って来るから」
「分かった上です」
「そっか。ね、何かあった? ずいぶんすっきりした顔だけど」
「それは、秘密です」
「そっか。女の子の秘密に、おじさん触ったら叩かれちゃうね」
と、おどけたように言って、デルダさんは忙しいようで帰って行った。
後、数日で最終弁論だ。
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