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願い①
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あら?
ここはどこ?
私は寝間着で、暖かくて、真っ暗中、漂っていた。
ああ、ここ、まだ山岸まどかがウィンティアの中で漂っていた時にいた場所だ。
て、ことは。
私は、お役御免、なんだな。
そっかあ、今かー。あー、裁判の結果知りたかったなあ。
ナタリア、痣になってないかな?
最後にヴァレリーとマルティンに会いたかったなあ。
クラスメート達と、アンネやリーナ嬢ともっと話したかったなあ。
お世話になった、ウーヴァ公爵家の皆さんに、お礼を言えなかった。
アンジェリカ様の赤ちゃん、見たかった。
レオナルド・キーファーは、そうだなあ、ご迷惑おかけしました、幸せになってください、かな?
さみしい、さみしい、さみしい。
さみしい、死にたくない。
死にたくない。
死にたくない。
もっと、生きたい。
膝を抱えて体を丸める。涙が浮かびそうだ。
「ど、どこだここはっ」
「何っ、なんなのっ」
「お父さんっ、お母さんっ、どうなってるのっ?」
え?
顔をあげると、会いたかった人達が。
なんで、ここにいるの? ここは、ウィンティアの中じゃないの?
なんで? なんで? なんで?
なんで?
貴女の望み。
神様がそう言った。
生き返らせることはないけど、と言った。
私が望んでいた事。
そう、私が望んでいた事。
「うわあああん、お父さんっ、お母さんっ、みどりお姉ちゃんっ」
私の望み。
私は一気に涙腺崩壊し、手を伸ばす。
仕事の作業着のお父さん、パート先のエプロン姿のお母さん、紺色のナース服のみどりお姉ちゃん。
真っ暗な中で、私の様に漂っている三人は、げっそりと頬が痩けて、顔色が悪い。いつも髭を剃っていたお父さんは無精髭、綺麗に眉を書いていたお母さんはノーメークに近い。そして、いつも髪を綺麗に整髪料でお団子にしていたみどりお姉ちゃんは、無造作に束ねているだけ。
そうさせてしまったのは、きっと私。
私が素直に、結婚式に行かなかったから。赤い車に跳ねられてしまったから。私が、死んでしまったからだ。
おそらく、あれから山岸家は、荒れたはず。みどりお姉ちゃんだって、あのままってわけではないはず。相手の男性がどんな人かわからないが、理解ある人ならいいが、その男性家族がみどりお姉ちゃんに理不尽にないか心配でたまらなかった。
「うわあああん、お父さんっ、お母さんっ、みどりお姉ちゃんっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」
叶わないと思っていた、思っていたが、私は、謝りたかった。
謝りたかった。
意地になっていたこと。
確かに、進学を諦めるように言ったのは、みどりお姉ちゃんの独り暮らしや大学の学費で、家計が火の車だったからだ。だけど、伯父さんが進学の道を示してくれた、それを断ったのは私の判断だ。そして、最後に伯父さん宅で両親がもってきた茶封筒。厳しい家計でひねり出したお金、両親が必死な貯めたお金。みどりお姉ちゃんが働いたお金。
それを、私は、どうした?
「うわあああん、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ」
ここはどこ?
私は寝間着で、暖かくて、真っ暗中、漂っていた。
ああ、ここ、まだ山岸まどかがウィンティアの中で漂っていた時にいた場所だ。
て、ことは。
私は、お役御免、なんだな。
そっかあ、今かー。あー、裁判の結果知りたかったなあ。
ナタリア、痣になってないかな?
最後にヴァレリーとマルティンに会いたかったなあ。
クラスメート達と、アンネやリーナ嬢ともっと話したかったなあ。
お世話になった、ウーヴァ公爵家の皆さんに、お礼を言えなかった。
アンジェリカ様の赤ちゃん、見たかった。
レオナルド・キーファーは、そうだなあ、ご迷惑おかけしました、幸せになってください、かな?
さみしい、さみしい、さみしい。
さみしい、死にたくない。
死にたくない。
死にたくない。
もっと、生きたい。
膝を抱えて体を丸める。涙が浮かびそうだ。
「ど、どこだここはっ」
「何っ、なんなのっ」
「お父さんっ、お母さんっ、どうなってるのっ?」
え?
顔をあげると、会いたかった人達が。
なんで、ここにいるの? ここは、ウィンティアの中じゃないの?
なんで? なんで? なんで?
なんで?
貴女の望み。
神様がそう言った。
生き返らせることはないけど、と言った。
私が望んでいた事。
そう、私が望んでいた事。
「うわあああん、お父さんっ、お母さんっ、みどりお姉ちゃんっ」
私の望み。
私は一気に涙腺崩壊し、手を伸ばす。
仕事の作業着のお父さん、パート先のエプロン姿のお母さん、紺色のナース服のみどりお姉ちゃん。
真っ暗な中で、私の様に漂っている三人は、げっそりと頬が痩けて、顔色が悪い。いつも髭を剃っていたお父さんは無精髭、綺麗に眉を書いていたお母さんはノーメークに近い。そして、いつも髪を綺麗に整髪料でお団子にしていたみどりお姉ちゃんは、無造作に束ねているだけ。
そうさせてしまったのは、きっと私。
私が素直に、結婚式に行かなかったから。赤い車に跳ねられてしまったから。私が、死んでしまったからだ。
おそらく、あれから山岸家は、荒れたはず。みどりお姉ちゃんだって、あのままってわけではないはず。相手の男性がどんな人かわからないが、理解ある人ならいいが、その男性家族がみどりお姉ちゃんに理不尽にないか心配でたまらなかった。
「うわあああん、お父さんっ、お母さんっ、みどりお姉ちゃんっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」
叶わないと思っていた、思っていたが、私は、謝りたかった。
謝りたかった。
意地になっていたこと。
確かに、進学を諦めるように言ったのは、みどりお姉ちゃんの独り暮らしや大学の学費で、家計が火の車だったからだ。だけど、伯父さんが進学の道を示してくれた、それを断ったのは私の判断だ。そして、最後に伯父さん宅で両親がもってきた茶封筒。厳しい家計でひねり出したお金、両親が必死な貯めたお金。みどりお姉ちゃんが働いたお金。
それを、私は、どうした?
「うわあああん、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ」
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