ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
312 / 338

キャサリンの裁判⑦

しおりを挟む
 裁判は淡々と進む。ボスザ弁護士が準備した証人達が冷静だからだ。ほぼ、ローザ伯爵家の使用人だが、中にはキャサリンに言いくるめられてやらかしたものも出廷。恥ずかしいだろうに、出てくれたのは素晴らしいと思うが、みんな、キャサリンに憎悪の眼差しを向けている。
 リージョン弁護士は、キャサリン専属メイド達から出る真実にいちゃもんつけている。

「キャサリン嬢に対して、忠義はないのかっ」

 ありません、と断言。

「私達はジョージ・ローザ伯爵に雇われています。忠義はジョージ・ローザ伯爵です」

 専属メイドの代表が答える。
 それから出るわ出るわキャサリンの愚痴が。

・衣装に関してはとにかく優柔不断
・ヘアメイクもやり直しが毎回ある、学園には何度も遅刻し、それをメイド達の不手際にした
・お茶会等では特にひどい、遅刻できないからと言っても聞く耳もたない、最後は支度が遅いとなじる
・馬鹿みたいな買い物も、止めても聞かない。似たようなドレスや靴があり、それ以外にも袖を通していないものがあると言っても聞かない
 エトセトラ、エトセトラ。
 出るわ出るわ。傍聴席も呆れ返っている人が増えていく。

「ひどいわっ、お友達と思っていたのにっ」

 キャサリンが悲嘆のような悲鳴。見た目はあれだから、知らない人が見たら同情を誘うだろうが。
 専属メイド達は、冷めた目。

「お友達? 都合のいい道具ではありませんか?」
「私はジョージ・ローザ伯爵様に雇われただけです」
「毎回毎回、やり直しやり直し。しかも直してもやっぱり別のドレスにするかやら、やり直し、内心イライラして仕方なかったですよ」
「クラーラ奥様が声をかけてくださったから、やってきただけです」
「そうです。自分がウィンティアお嬢様の部屋から、服を盗んで、勝手にチャリティーにだして、それも自分の名前で。全部私達に責任押し付けたくせにっ」
「ひ、ひどいわ、私、そんなこと」
 
 キャサリンはわなわな震えている。
 すると、専属メイド代表が、キャサリンに向き合う。

「では、キャサリンお嬢様、私達の名前はご存じですよね? 当然名字もです、何年もお仕えしていますから」

「ひどいわ、マーリィッ」

「私はマーナです。その方は、二年前に辞めましたわ。やっぱり覚えていませんでしたね。で、名字は? 私、これでも爵位ある方の妻ですの」

 キャサリンが答えられるわけない。何年も支えているのに、自分の専属メイドの名前しらないって。キャサリンの専属メイドは五人だが、皆、うろ覚えだ。
 リージョン弁護士が専属メイドから、キャサリンの人となりを聞き出そうとしたが、あまりいい結果なるわけもない。
 リージョン弁護士は、キャサリンがセーレ商会のシャンプーやコンディショナーの宣伝について聞くと、確かにキャサリンの売り込みは凄かった事だけはわかった。
 ただ、その場だけならなんとかなるが、次、その次とお茶会に呼び、接している貴族は、キャサリンのマナーのなさに気がついて引いている様子だった。なので、キャサリンがもってくる手土産、入手困難な季節限定品目的で呼ばれるようになっていったと。
 商品だけが欲しくて、キャサリンと深く繋がりたくはい、できたらクラーラ伯爵夫人を呼びたかったが、商会業務や屋敷の管理、体調なので呼べず、仕方なくキャサリンを呼んだと、数人のお茶会主催者が証言した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...