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二年の年月⑩

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 その後、修羅場になったのは言うまでもない。

「我が娘を侮辱するおつもり?」

 強盗も裸足で逃げ出すような凄みを見せるセシリア女公爵。怖っ、めっちゃ、怖っ。

「でも嘘はいけませんわっ、ウーヴァ公爵の跡取りは私が母親として生むんですのっ」

 ぷうんっ、と頬を膨らませるキャサリン。くどいが見た目がお人形だから、似合うは似合うが、既に18歳となったキャサリンがすると、痛さを感じる様になってきている。
 一斉に、ワケわからない、と言った視線がキャサリンに集まる。

「誰が、誰の子を生むと?」

 ぎゃーっ、セシリア女公爵から放たれる冷気が凄まじいことに。

「私が、レオナルド様との間に生まれる双子ですわっ」

 次にレオナルド・キーファーに非難の目が集まる。

「冗談にしては質が悪い」

 底冷えのするようなレオナルド・キーファーの声。おもいっきり顔が歪んでいる。初めて見るかもここまで歪んでいるのは。

「貴女と? 冗談じゃない、身の毛もよだつような事を大事な婚約者の前で言わないでいただけます」

 言い放つと、レオナルド・キーファーは握っていた私の手に、ちゅ、とキス。

「私が人生を共にいきたいと思うのはウィンティア嬢、貴女だけ。どうか、私を信じてください」

 あ、回りの視線が私に、この場合は、そうだ。

「はい、レオナルド様」

 で、いいはずっ。
 ふわっ、とレオナルド・キーファーが笑う。
 すると視界の隅で満足そうなウーヴァ公爵夫妻。

「レオナルド様、何を仰ってますの? さ、早くその子を捨ててくださいませ、私とダンスでしょう?」

 ああ、やっぱり、中途半端なゲームの知識でやらかしたんだな。このお茶会を、ウィンティアを捨て、キャサリンとね仲を知らしめるきっかけのダンスパーティーと勘違いしている。だから、こんか場違いな格好してきたわけね。好感度アップの課金ドレスを作り、おそらくあのアクセサリーもそれじゃないかな? フル装備で来たら、レオナルド・キーファーの好感度が上がり、正式な婚約者のウィンティアを捨てるように仕向けられると思ったんだろう。だが、ゲームでもあったが、レオナルド・キーファーは攻略困難なキャラクターだった。しかも、本来距離を縮めるためね会瀬は、色んな人達がガードしたり、シルヴァスタへの随行なので、ほとんど出来ていない。つまり、ほとんど接点がない。
 それで、この台詞。
 中途半端はゲームの知識、自分にとって都合良く回ると思って疑わない妄想癖。
 キャサリンは、回りの呆れた視線に気がつかずに、レオナルド・キーファーにわっさわっさのスカートを摘まんで駆け寄ろうとする。

「いい加減にしなさいっ、ウーヴァ公爵様っ、申し訳ありません」

 口から魂を放っていた生物学上の両親がキャサリンの元にダッシュ。

「きゃあっ、何をなさいますのっ」

 問答無用で綺麗に整えられた空っぽのキャサリンの頭を掴み、地面に無理やり押さえ付けた。
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