上 下
298 / 338

二年の年月⑥

しおりを挟む
「お、お綺麗ですっ。お嬢様っ、お綺麗ですっ」

 ナタリアが感涙。
 ウーヴァ公爵家のメイドさんの力作となった私。ナタリアとヴァレリーだけが先に会いに来た。おそらく会場では長く話せないからね。
 私のデビュタントのドレスは真っ白のドレスだ。基本的にデビュタントは白で、差し色を少し入れるらしいが、私は真っ白。繊細なレースのドレスだ。いつかみた、セシリア女公爵が見にまとっていたドレスを参考にされている。うん、あれ、おしゃれだったし。それを聞いたマダム・ガーヤが気を良くして作ってくれたのが、このドレスだ。私のささやか希望も取り入れてくれて、ウィンター・ローズの飾りが襟元を飾るドレスだ。

「ナタリア、化粧が落ちちゃうよ」

 ナタリアもしっかり支度してきている。いつもの三つ編みをアップにして、きちんと化粧をして、大人っぽくなってるのに。素早くウーヴァ公爵家のメイドさんが手直ししてくれた。

「あ、あのお嬢様っ」

 ヴァレリーがやや緊張した声をあげる。今日はスーツだ。これは、ローザ伯爵家の当主、つまりウィンティアの生物学上の父親のスーツを直した。ヴァレリーはこの二年の年月が、子供から少年への変貌を遂げた。この分なら背丈もあっという間に追い越さそう。

「お、お綺麗ですっ」

「ありがとうヴァレリー」

 素直なんだか、良く分からないがもじもじしながらいう姿はかわいいかな。

「キーファー様が浮気したら、すぐに迎えに来ますからっ」

「こら、ヴァレリーッ」

 ナタリアがぽかり、とする。
 何を言うかねこの子。でも、ヴァレリーなりの優しさと取ろう。

「ありがとうヴァレリー、そうなったら、よろしくね」

「ウィンティア嬢、その様なことはありませんからっ、ほら、君、お姉さんと会場でもお菓子でも食べてなさいっ」

 慌てた様子でレオナルド・キーファーが肩を抱いてくる。本日はウーヴァ公爵家の皆さんに磨き上げられて、更なるイケメンとなっている。

「子供扱いしないでください」

 きゃんきゃん吼えるヴァレリー。子犬みたいでかわいいなあ。

「実際子供だ。今日のお菓子はウィンティア嬢監修だ、味わって食べたまえ」

 う、とつまるヴァレリー。お菓子で釣られるなんて、子供だない。
 ナタリアがペコペコしながらヴァレリーを引きずって行った。
 見送って、招待客の皆さんが来る頃合いだ。既に主宰のウーヴァ公爵夫妻はスタンバってる。私はレオナルド・キーファーに引率されて向かった。私達の婚約発表なんて、今回のお茶会ではおまけにはなるはず。もっと大きな発表が控えているのだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

処理中です...