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二年の年月⑤

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「そうですか」

 私はため息。
 ローザ伯爵家でキャサリンを監視していたスウサさんから報告が来た。どうやらとんでもない買い物をやらかしたと。スウサさんはキャサリンにバカをやって貰うためのよいしょ役だ。生物学上の両親は、年間決められ額以上の買い物を繰り返すキャサリンを、必死に嗜めているが、あれが聞きやしない。
 自分はローザ伯爵家の跡取りだ、同じドレスでお茶会なんて出れない。ウィンティアにはドレスをたくさん買ってる癖に、と。
 お茶会に呼ばれる貴族女性はワンシーズンで使用するドレスを厳選して作成し、髪型やアクセサリー、ストールやケープ、つけ外しできる襟を使い着回すのは嗜みだ。キャサリンがいうのは品のない成金のやること。それに、私、つまりウィンティアには普段着しか準備してないのに、アンジェリカ様から頂いたリメイクドレスを、買い与えていると主張を繰り返している。
 何度も説明しているが、聞きやしない。
 相当精神的に参っているみたい。
 だけど、キャサリンとの決別が近いからと、頑張っているようだ。
 キャサリンはユミル学園高等部を卒業し、現在無職だ。セーレ商会とかに本来なら卒業したあと籍を置くのだが、商会頭である生物学上の父親はそれをしなかった。いままで学生という守りがあったが、もうそれもない、自己責任が伴い社会人だ。
 その社会人になって初めての社交場が、ウーヴァ公爵家のお茶会になる。
 ローザ伯爵家は一家全員招待されている。
 そこでキャサリンが騒動起こせば、社会的にキャサリンを抹消できる。『魅了』問題があるため、あのナットウ神官長が変装して会場に潜み、キャサリンの監視だ。お茶会にはレオンハルト王太子殿下、アサーヴ殿下も来賓として招待されるから、絶対に絡んでくるはず。
 私はゲームを思い出す。
 ウィンティアがレオナルド・キーファーとのファーストダンスをおざなりにしたのは、夜行われるダンスパーティーだった。あの時、キャサリンはテーマカラーである緑のドレスを纒い、レオナルド・キーファーとダンスをした。
 このお茶会をそのダンスパーティーと解釈しないか、別物と判断するか、だが。レオナルド・キーファーがキャサリンに靡くことはない。そう分かれば、次にキャサリンがどう行動するか、だ。
 生物学上の両親は、今まで溜まりにたまったキャサリンの浪費を請求し、今までの考えなしの行動から、ローザ伯爵家から除籍すると。今まではテヘロンとの約束で、キャサリンを野放しにできなったからね。

「で、あれは何を買ったの?」

 座り直したアンジェリカ様が、静かに佇むスウサさんにきく。

「はい、以前からオーダーされていたドレスに、スワロフスキーを更に追加し、スカート部分の変更。ウーヴァ公爵家のお茶会に間に合わせる為に追加料金が発生しています」

 ほとんど完成間近のドレスの手直しって。

「それから、そのドレスに合わせるアクセサリーを一新しました。こちらです」

 と、出した紙を見て私は目を剥く。

「すべて請求はローザ伯爵家です。さすがに装飾品店は額が額だけに、当主への確認後と話をされたのですが、対象はウーヴァ公爵家の名前を出して購入手続きをしました」

「金銭感覚おかしいとは思っていたけど、いかれているわね。その装飾品店の根回しは?」

「済んでおります」

 私は出された紙に書かれた金額に唖然としたままだった。
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