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待つ間⑬
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キャサリンが使用人達を振り切り、私に突進してくる。
パシンッ
「きゃあっ、痛いですわっ」
アンジェリカ様が扇でキャサリンの腕を強かに打ったのだ。
「な、何をなさいますのっ。私、私っ、指輪を盗られて…………」
「お黙りなさい」
うっわ、アンジェリカ様、怖かっ。
「私の連れに手を出そうとして、私が見逃すとでも思って? それにこの指輪は、彼女が婚約者から贈られたもの、貴女のものではないわ」
「そんなのその子の嘘ですわっ、騙されていらっしゃるのですっ」
「この指輪の作製には、私も関わっています。工房の橋渡しをしましたのよ」
「それでも私の為に作られたはずですわっ」
ざわざわと、キャサリンを見る目に、戸惑い以上に、呆れ返るものが混じる。あの天下のウーヴァ公爵家跡取り娘のアンジェリカ様に口答えしているからね。恐れ知らずか、バカか。
「そのドレスだって、本来なら私のもののはずっ。お父様にわがまま言って、作らせたんですわっ。どこまで意地汚い子っ」
「これは、私のドレスを彼女の為にリメイクしたもの。貴女ような人の為にリメイクしませんわ」
「私はローザ伯爵家の跡取りですのよっ、そのような中古品を身につけるようは恥ずかしい真似はできませんわっ」
一斉に、キャサリンを見る目が厳しいものに。
ルルディにはお下がり文化がある。いい例がドレスだ。丈夫に品よく作り、次に繋げていく。アンジェリカ様の場合、公爵令嬢の衣装だから、基本的に品質は最高によく作ってある。私がいるから、最近せっせとリメイクしてくれてる。ドレス以外でもお下がりは見ている。ウーヴァ公爵家のいぶし銀の執事さんは、古い懐中時計を大事にしている。公爵家執事に代々継承されるものだからって。生物学上の父親も、古い万年筆を修理しながら使っているのは、ローザ伯爵が以前子爵だった時、伯爵に繰り上げした時の祝いの品を、曾祖父、祖父、父から受け継いだものだからだ。
つまり、ものを大事にと同時に、大切な思いを繋げていくのだ。
それを、キャサリンが全面否定。キャサリンが言ったのは、品格の欠片もない、成金の発言だ。
「貴女の言葉は気分を害するわ。連れていきなさい」
エヴァエニエス侯爵夫人の指示で、みっともなく騒ぐキャサリンは退場。はあ、なんだか疲れた。何もしてないけどね。
それから、私は別のお茶会参加者にねぎらいの言葉をいくつもかけられた。
「大丈夫? いつもあんな感じなの?」
「精神的に来たんじゃない? お菓子食べる?」
「噂に聞いたのとずいぶん違うからびっくりしたよ。君、苦労していないかい? なんならローザ伯爵に注意するよ」
等々。
キャサリンはあの見た目なので、ローザ伯爵家の妖精だとか、お人形姫とか呼ばれている。
実はそのお茶会は、エヴァエニエス侯爵夫人とアンジェリカ様が画策したもの。キャサリンの回復し始めた評判を落とすために、ね。なので、侯爵家のお茶会会場にもすんなり入れたわけだ。もちろん招待状がなく、入り口でひと悶着起こしていたキャサリンを、誘導する親切を皮に被った貴族紳士もダミーだ。
結果、エヴァエニエス侯爵夫人とアンジェリカ様の思惑通りに。
どうせいつか自爆するだろうけで、どうしても、キャサリンの評判を早急に落としたい理由ができたからだ。
パシンッ
「きゃあっ、痛いですわっ」
アンジェリカ様が扇でキャサリンの腕を強かに打ったのだ。
「な、何をなさいますのっ。私、私っ、指輪を盗られて…………」
「お黙りなさい」
うっわ、アンジェリカ様、怖かっ。
「私の連れに手を出そうとして、私が見逃すとでも思って? それにこの指輪は、彼女が婚約者から贈られたもの、貴女のものではないわ」
「そんなのその子の嘘ですわっ、騙されていらっしゃるのですっ」
「この指輪の作製には、私も関わっています。工房の橋渡しをしましたのよ」
「それでも私の為に作られたはずですわっ」
ざわざわと、キャサリンを見る目に、戸惑い以上に、呆れ返るものが混じる。あの天下のウーヴァ公爵家跡取り娘のアンジェリカ様に口答えしているからね。恐れ知らずか、バカか。
「そのドレスだって、本来なら私のもののはずっ。お父様にわがまま言って、作らせたんですわっ。どこまで意地汚い子っ」
「これは、私のドレスを彼女の為にリメイクしたもの。貴女ような人の為にリメイクしませんわ」
「私はローザ伯爵家の跡取りですのよっ、そのような中古品を身につけるようは恥ずかしい真似はできませんわっ」
一斉に、キャサリンを見る目が厳しいものに。
ルルディにはお下がり文化がある。いい例がドレスだ。丈夫に品よく作り、次に繋げていく。アンジェリカ様の場合、公爵令嬢の衣装だから、基本的に品質は最高によく作ってある。私がいるから、最近せっせとリメイクしてくれてる。ドレス以外でもお下がりは見ている。ウーヴァ公爵家のいぶし銀の執事さんは、古い懐中時計を大事にしている。公爵家執事に代々継承されるものだからって。生物学上の父親も、古い万年筆を修理しながら使っているのは、ローザ伯爵が以前子爵だった時、伯爵に繰り上げした時の祝いの品を、曾祖父、祖父、父から受け継いだものだからだ。
つまり、ものを大事にと同時に、大切な思いを繋げていくのだ。
それを、キャサリンが全面否定。キャサリンが言ったのは、品格の欠片もない、成金の発言だ。
「貴女の言葉は気分を害するわ。連れていきなさい」
エヴァエニエス侯爵夫人の指示で、みっともなく騒ぐキャサリンは退場。はあ、なんだか疲れた。何もしてないけどね。
それから、私は別のお茶会参加者にねぎらいの言葉をいくつもかけられた。
「大丈夫? いつもあんな感じなの?」
「精神的に来たんじゃない? お菓子食べる?」
「噂に聞いたのとずいぶん違うからびっくりしたよ。君、苦労していないかい? なんならローザ伯爵に注意するよ」
等々。
キャサリンはあの見た目なので、ローザ伯爵家の妖精だとか、お人形姫とか呼ばれている。
実はそのお茶会は、エヴァエニエス侯爵夫人とアンジェリカ様が画策したもの。キャサリンの回復し始めた評判を落とすために、ね。なので、侯爵家のお茶会会場にもすんなり入れたわけだ。もちろん招待状がなく、入り口でひと悶着起こしていたキャサリンを、誘導する親切を皮に被った貴族紳士もダミーだ。
結果、エヴァエニエス侯爵夫人とアンジェリカ様の思惑通りに。
どうせいつか自爆するだろうけで、どうしても、キャサリンの評判を早急に落としたい理由ができたからだ。
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