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待つ間⑥ ※注意
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アンジェリカに連れられて、ウィンティアが退室した後。
重苦しい中で、誰ともなく息を吐き出す。
「ウィンティア嬢の話、どう思う?」
オーガストが従姉セシリアに問う。
「嘘を付いているとは思えません」
「しかしあれの姉は重度の妄想癖だろう? 妹なのだ、可能性もある」
嫌みのように言うのは高位神官。
「ウィンティア嬢は姉を毛嫌いしていますわ、その理由は貴方もよくご存知のはず。それとも、キャサリンの『魅了封じ』した事をお忘れなのかしら?」
あら嫌だわ、おほほ、とは言わないがセシリアはたっぷり嫌みを含ませる。
ボケたかじいさん、と。
高位神官は睨み付けるが、セシリアは歯牙にもかけない。
「確かにティア嬢の話には嘘は含まれている様子はない。まだ発表すらされていないカルメン王国の王子の婚約者は間違いはないのですか?」
アサーヴが、夫から肩を抱かれているアーデルハイトに問う。
先ほどまではウィンティアの手前気丈に振る舞ってはいたが、やはりショックだった。気付いた夫、ダスティンが肩を抱いている。
「はい、アサーヴ殿下。正式発表は二年後になりますが、王家とセレスティ公爵家と話はついております。当人どうしにも秘密にされ、私は王妹であったため知り得ているのです」
「なら、信憑性はあるのか、ふむ」
と、考え込む高位神官。
「あの子はこのまま教会本部預かりにしましょう。どうやら先見の力は確実のようだし、保護しましょう」
先見の力とは、予知能力。『魅了』よりも希少。未来のことが分かるからと、他国では王族並みの扱い、重宝される。
「はっ」
それに鼻で嗤うのはアサーヴだ。長い足を組み、高位神官に軽蔑の視線を投げる。
「『保護』ではなく『監禁』であろう? ルルディ王国の教会での先見の能力を持つ者の末路は悲惨なものだ」
「我が教会を侮辱すると? いくら他国の」
「事実だ」
アサーヴが高位神官の言葉をぶったぎる。
「先見の能力は生まれつき。血筋に関連する可能性は一割。だから女の場合は孕ませ、男には神官の女をけしかける。薬を盛ってな。教会で保護された先見の能力者はなぜ短命なのだ? 『保護』されてみな10年と生きていないのは何故だ? ルルディ王国は土葬であるはずが、何故火葬なのだ? 何故、肉親や友人達と最後の対面すらさせない? 先見の能力者の身体に隠さなくてはならないものがあるのではないか?」
反論しようとして高位神官の言葉を捩じ伏せるアサーヴ。
「反論は認めない。我が祖母の一人が、先見の能力者の子供。能力がないからと処分されそうになった所を、見かねた世話役の神官が逃したのだ。その神官がテヘロンの商隊に預け、テヘロンに逃れた」
アサーヴが感情のこもならない目で高位神官を射抜く。
「祖母の証言が偽りだと? それはルルディ王国教会に対する不敬と取ろう」
テヘロン王国の王族は基本的に一夫多妻。その理由は跡取り問題もあるが、つい一世紀前までにあった戦乱の名残がある。戦に行った男達が帰って来ないために、残された女達は残された子供達を守るために結束した。正妻を頭に側妻達が支え合い、子供達を育てた。
今では一夫多妻はテヘロン王国の伯爵家以上の貴族達がならっている。なのでよくある骨肉の争いは基本的にはない。同じ家に入れば、支え合う家族として尊厳を持ち生活を共にする。
それが、テヘロンの貴族だ。
テヘロンに逃げ延びたその子供は、女児で、保護された先で、アサーヴの祖父に見初められて側室として入った。彼女は子は成さなかったが、家族間の結束の強いテヘロン王族のアサーヴにしては、祖母の一人として認識している。そして、ルルディ王国教会での予知能力者の実態が知られたのだ。
「祖母は死ぬまで兄弟達の身を案じていた。なぜか分かるか? どのような扱いをされているか祖母は身を持ってしっていたからだ。さあ、どう言う言い訳をする?」
重苦しい中で、誰ともなく息を吐き出す。
「ウィンティア嬢の話、どう思う?」
オーガストが従姉セシリアに問う。
「嘘を付いているとは思えません」
「しかしあれの姉は重度の妄想癖だろう? 妹なのだ、可能性もある」
嫌みのように言うのは高位神官。
「ウィンティア嬢は姉を毛嫌いしていますわ、その理由は貴方もよくご存知のはず。それとも、キャサリンの『魅了封じ』した事をお忘れなのかしら?」
あら嫌だわ、おほほ、とは言わないがセシリアはたっぷり嫌みを含ませる。
ボケたかじいさん、と。
高位神官は睨み付けるが、セシリアは歯牙にもかけない。
「確かにティア嬢の話には嘘は含まれている様子はない。まだ発表すらされていないカルメン王国の王子の婚約者は間違いはないのですか?」
アサーヴが、夫から肩を抱かれているアーデルハイトに問う。
先ほどまではウィンティアの手前気丈に振る舞ってはいたが、やはりショックだった。気付いた夫、ダスティンが肩を抱いている。
「はい、アサーヴ殿下。正式発表は二年後になりますが、王家とセレスティ公爵家と話はついております。当人どうしにも秘密にされ、私は王妹であったため知り得ているのです」
「なら、信憑性はあるのか、ふむ」
と、考え込む高位神官。
「あの子はこのまま教会本部預かりにしましょう。どうやら先見の力は確実のようだし、保護しましょう」
先見の力とは、予知能力。『魅了』よりも希少。未来のことが分かるからと、他国では王族並みの扱い、重宝される。
「はっ」
それに鼻で嗤うのはアサーヴだ。長い足を組み、高位神官に軽蔑の視線を投げる。
「『保護』ではなく『監禁』であろう? ルルディ王国の教会での先見の能力を持つ者の末路は悲惨なものだ」
「我が教会を侮辱すると? いくら他国の」
「事実だ」
アサーヴが高位神官の言葉をぶったぎる。
「先見の能力は生まれつき。血筋に関連する可能性は一割。だから女の場合は孕ませ、男には神官の女をけしかける。薬を盛ってな。教会で保護された先見の能力者はなぜ短命なのだ? 『保護』されてみな10年と生きていないのは何故だ? ルルディ王国は土葬であるはずが、何故火葬なのだ? 何故、肉親や友人達と最後の対面すらさせない? 先見の能力者の身体に隠さなくてはならないものがあるのではないか?」
反論しようとして高位神官の言葉を捩じ伏せるアサーヴ。
「反論は認めない。我が祖母の一人が、先見の能力者の子供。能力がないからと処分されそうになった所を、見かねた世話役の神官が逃したのだ。その神官がテヘロンの商隊に預け、テヘロンに逃れた」
アサーヴが感情のこもならない目で高位神官を射抜く。
「祖母の証言が偽りだと? それはルルディ王国教会に対する不敬と取ろう」
テヘロン王国の王族は基本的に一夫多妻。その理由は跡取り問題もあるが、つい一世紀前までにあった戦乱の名残がある。戦に行った男達が帰って来ないために、残された女達は残された子供達を守るために結束した。正妻を頭に側妻達が支え合い、子供達を育てた。
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それが、テヘロンの貴族だ。
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