ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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待つ間④

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 外の騒ぎは収まらず、結局オーガスト王太子殿下が向かい、何やら騒ぐモニカ妃殿下を一喝。モニカ妃殿下はオーガスト王太子殿下が姿を出すと、猫撫で声だが、あまりの変わりように、気味の悪さを感じた。
 そもそも、この部屋にはアサーヴ殿下がいらっしゃるのだ。テヘロン人の誇りがある褐色の肌を貶すモニカ妃殿下を、同じ部屋には入れられない。
 テヘロンの皆さん、みんないい人ばかりなのに、肌の色が違うからと変なの。
 
「お騒がせしました。さ、ウィンティア嬢、分かる範囲でいいから今まででの事を説明してくれるかい?」

「はい」

 ゆっくり、優しくイケオジオーガスト王太子殿下が言ってくるので、順序だてて。

「事の始まりは、祖母、ティーナ・ローザです」

 ウィンティアの祖母、ティーナ・ローザはあの赤い本の内容を一部だけど知り得た。『魅了』を持つキャサリンのせいでネグレクトを受けて育ったウィンティア。唯一の心の拠り所であるレオナルド・キーファーまで奪われ、捨てられた。無神経に送られた結婚式の招待状を機に首吊り自殺。その後の展開。
 あの赤い本に関しては、アサーヴ殿下もエヴァエニエス侯爵夫妻もご存知だったので、受け入れは早い。
 
「ただ、祖母が違った動きをしたことで流れは変わってきました」

 まずはキャサリンが『魅了』持ちだと早くに分かり『魅了封じ』が行われた。ただ、まさか、ティーナ・ローザ自身が毒殺されると思わなかった。なんだかんだで、レオナルド・キーファーとは悪い関係ではないはず。生物学上の両親を初めローザ伯爵家の使用人達も、苦しい『魅了耐性』の訓練を受けたしね。

「なら、君は今世紀に作られる事例集の全てを知っているのか?」

 と、愛想もくそもないじいさん、失礼、高位神官が聞いてくる。

「全ては知りません。内容も被害者もくるくる変わりますし。事例七以前の内容はさっぱりです。名前を見た気がしますが、思い出せないんです」 

 嘘ではない。
 しっかり分かっているのは事例七、キャサリン・ローザ。事例八アデレーナ・グラーフ。事例九は話さない方がいいかなって思っている。アンジェリカ様の妊活がうまく行き、かなりリスクが減ってる。変なこと言って、アンジェリカ様の不安定を煽るわけにはいかないからね。

「その事例七がキャサリン・ローザで間違いないか?」

「はい」

 ふう、と息を吐き出すじいさん、違う高位神官。

「私の『魅了封じ』が破られる訳がないのだが」

 ぶつぶつ。
 多分、この高位神官は、キャサリンに自分で施した『魅了封じ』が破られたと思いたくないんだろう。いや、まだキャサリンの『魅了』は封じられていて、次の事を起こすのは『魔了』の魔女が目をつけられるから、この人の『魅了封じ』を『魔了』が凌駕するんだろうけど。

「では、ウィンティア嬢、リリーナ・エヴァエニエス令嬢が被害者として名を挙げた時の内容を教えてくれるかい?」

 オーガスト王太子殿下が聞いてくる。
 言わないと行けないが、被害者のご両親の前。だが、ぐずぐず言ってられない。

「エヴァエニエス侯爵様の気持ちのよい話ではありませんが、お聞きください」
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