ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
278 / 338

新たな展開⑩

しおりを挟む
 ナタリアが支えてくれようとしたが、私は一人で立つ。向こうから駆けてきたからね。

「ウィンティア嬢っ、なぜここにっ」

「お見送りに決まってるでしょう」

 私の姿に戸惑いながらも、駆け寄ってきたレオナルド・キーファーに、当たり前の様に答える。
 努めていつもの様に、いつも朝の出勤の時の様に。
 
「キーファー様、無事のお戻りをお待ちしております」

 はい、アンジェリカ様にビシバシされたカーテシー。

「ウィンティア嬢………」

 レオナルド・キーファーは何やら感動したように、私の前に跪く。ちょっと、仕事着汚れちゃうよ。今から出発でしょうもん、護衛騎士のズボンが汚れたら、示しがつかないじゃん。

「キーファー様、ズボンに汚れが」

「ウィンティア嬢」

 たって欲しいと出した手を、鍛練で傷だらけの手が包み込む。そして、私を見上げる。

「私、レオナルド・キーファー、必ず貴女の元に帰って参ります」

 真っ直ぐ私を見上げてくる。当然、死んだ魚の目ではない。
 だけど、私は、それに安堵する。

「はい、お待ちしております。どうか、お気をつけて」

 精一杯の笑顔を浮かべる。
 この人は、命の危機を晒される影武者として、それを分かった上で、シルヴァスタに行くのだ。
 せめて、無傷とは言えないが、無事に帰って来て欲しい思いを含めて、笑顔を浮かべる。

「ウィンティア嬢」

 愛おしいと言葉を吐き出すレオナルド・キーファーが、何からポケットから取り出した。
 なんだろう?
 す、と指に何やらはめる。
 ん? キラッとした石のはまった指輪。
 な、なんで、左の薬指?
 少し、混乱。
 私、ただ、行ってらっしゃい、って言うだけの為に来ただけなのに、なんで、指輪もらってるんだろう?

「必ず、貴女の元に」

 そういって、包んでいた私の手に、ちゅ、とする。
 なんだか、今までで一番恥ずかしいっ。
 だって、色んな人達が、生暖かい、優しい目で見てるもんっ。

「はい」

 私は恥ずかしくなって、うつむいて小さく答える。
 どうやら、時間みたい。
 レオナルド・キーファーは名残惜い感じ立ち上がる。
 バタバタとお見送りの家族が後退。
 私はナタリアに支えられて移動する。

「ウィンティアさん、大丈夫? さ、私に掴まって」

 アンジェリカ様まで支えてくれる。
 セシリア女公爵とハインリヒ様に囲まれたて私は、最前列でお見送り。
 レオンハルト殿下をのせた馬車が出発。レオナルド・キーファーは茶色の馬に騎乗して、門を抜けて行く。

「レオナルドさまぁ~」

 あ、久しぶりに見たっ、マナー違反女キャサリンが。なんてタイミングでっ。ぷりぷりのピンクのドレスを翻して。見た目がお人形さんだから似合うは似合うが。
 レオンハルト殿下をのせた馬車があるのに、当然飛び出してきたら。

「きゃあぁぁっ」

 当然、取り押さえられるか、突き飛ばされるのだが、どうやら同行者がいたのか、それに取り押さえられていた。
 耳障りなキャサリンの声に、私は具合が悪くなる。

「お嬢様?」

「ごめんナタリア、ちょっと疲れちゃった」

 すると、あわただしく車椅子が来て、私は搬送されるた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

処理中です...