ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
269 / 338

新たな展開①

しおりを挟む
「ウィンティア嬢の支度を」

 と、セシリア女公爵の指示で、私はベテランメイドさんに厨房から連れ出され、あっという間に支度される。襟元と袖を青色のリボンで飾られた水色のドレス。髪も青色のリボンで飾る。
 嫌な予感はしたが、やっぱりこのままあのキラキラの皆さんの前に連行されるようだ。うわーん、いやだー、何かやらかしそうー。お、お腹が、気のせいか痛くなっってきたー。

「い、行かなきゃダメですかね?」

 ダメ元でベテランメイドさんに聞くが、「何いってんのこの子?」みたいな顔された。
 私は息を整える時間もなく、迎えに来たレオナルド・キーファーに引率されて、ウーヴァ公爵家の一番立派な客間に。

「失礼します。ウィンティア嬢をお連れしました」

 か、帰りたい。お、お腹、痛い。
 かすれる声で「失礼します」と呟いて、私は入室。
 キッ、キラキラだあっ。

「ふふっ、そう固くならずに、今日は非公式の訪問。楽にしなさい」

 レオナルド・キーファーに促され、私はご挨拶する。
 ダンディなおじ様、オーガスト殿下が言うが、ガッチガチに緊張してきた。
 隣で美しく微笑むのはエリザベス妃殿下、わあ、綺麗な方。多分、四十代後半なのに。そう思えない程美しい。眩しっ。
 そして、茶髪の青年と金髪カチューシャ美少女。第二王子レオンハルト殿下とその婚約者リリーナ嬢。キラキラ。よく見たら、確かにレオンハルト殿下とレオナルド・キーファーは似ている。ただし、レオナルド・キーファーの方が背丈があるかな。
 でもって、なんで、私の作ったカレーパン食べてるのよっ。王族でしょう、なんでカレーパン? もっといいお菓子あるじゃんっ。
 うっ、お腹が痛い。

「これが噂のカレーパンか。薫りが抜群だな」

「思ったより香辛料がきつくないですわね」

「もう一個ありますか?」

「レオン様、これはウィンティア嬢がキーファー様と恩義を感じているウーヴァ公爵家の皆様に作られたものですよ」

 わいわいガヤガヤ。
 私はオーガスト殿下に言われて、レオナルド・キーファーに引率されて、小さくなってソファーに座る。

「さて、驚かせてしまったね。ウィンティア嬢。今日は少し君とエヴァエニエス嬢の未来について話をしたくてね」

 私とリリーナ嬢の?
 あっ、まさかっ。
 思わず涼しい顔をしているセシリア女公爵を振り返る。
 あ、そうか、ウーヴァ公爵家があの赤い本の存在を知っているなら、当然王族にもあるはず。『魅了』に関する事例集は、禁書扱いされて、申請しないと読めない。それも許可を通すのに結構な条件があるって聞いた。
 この事例集を全巻揃えて持つのは、教会本部、国立図書館、ウーヴァ公爵、そして王家。

「一瞬とはいえエヴァエニエス嬢の名前が乗った以上、報せないわけないでしょう」 

 まあ、そうだわなあ。
 リリーナ・エヴァエニエス嬢は、第二王子レオンハルト殿下の婚約者だ。つまり、いずれ国母になるようなお方が毒杯になるとなれば、王家、婚約者であるレオンハルト殿下に関連する可能性がある。なんせ、キャサリンの事例で、被害者として名前が上がったんだから。そして、キャサリン関連なら、狙うとしたらレオンハルト殿下のはずだしね。
 ああ、お腹、痛い。
 あ、れ? 世界が真っ白に。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

処理中です...