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事例八の末路⑦
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ふー、寒い。
季節は冬。
雪がちらほら降ってる。
あの学園での男子生徒による暴行から、二ヶ月。
「ウィンティア嬢、お風邪を召されますよ」
ぼんやりと空を見上げていたら、本日休みのレオナルド・キーファーが声をかけてきた。ふわっ、とショールをかけてくれる。紳士だなぁ。
私は大人しく屋敷内に入る。
「どうされましたか?」
「いえ、裁判が気になって」
そう、キリール・ザーデクの名誉回復の為の裁判。
連日新聞各紙を賑わせている。
私が知るのは新聞の内容のみで、ナタリア達にも会えてない。
「もうすぐ最終弁論でしたね」
レオナルド・キーファーに手を引かれ、いや、引率されて温かい室内に。
「ウィンティア嬢の心配は、ナタリア嬢達の今後ですか?」
「はい」
メイドさんが丁寧にお茶を淹れてくれる。
「判決はまだですが、おそらく一旦はナタリア嬢がザーデク子爵となるでしょう」
ナタリアは一時的な子爵となり、ヴァレリーが正式に成人したら、そちらに移る予定だ。後見にローザ伯爵になる。ナタリア達を保護してくれたモロッカ男爵は、後二年はカルメン王国だしね。この二人はしっかりしているから心配ない、心配なのはマルティンだ。
まずはグラーフ伯爵夫妻の処遇だが、これまでグラーフ伯爵領を円滑に統治していた事があり、罰金刑で終わってしまった。まさか娘があんな嘘までついて、孫達を窮地に追いやっているとは信じられなかったんだろう。せめてと毎月の10万ルルの仕送りが考慮された。それもゾーヤ・グラーフの陰謀で、ナタリア達には渡っていなかったが。一度でもいいから、ナタリア達を訪ねるべきだったのに、それをしなかったし、そもそもアデレーナの出生偽装を黙っていた。今まで築いてきた信頼とかがた落ちだから、早めに引退し、後続に繋げなくてはならない。跡取り予定のゾーヤとアデレーナに繋げるわけない。グラーフ伯爵家の名誉を貶めたのだから。そうなれば、どうするか。貴族は血筋を重んじる。グラーフ伯爵の血筋が持ち、できれば男児。ヴァレリーはザーデク家の跡取りだ。
つまり、マルティンをグラーフ伯爵家の養子に、と言っているが、ナタリアとヴァレリーが断固拒否している。
あまりにも都合が良すぎるし、落ちぶれるグラーフ伯爵に着かせて、マルティンが苦労するのは嫌だと。
私もそう思う。
だいたい、このグラーフ伯爵夫妻が、しっかりゾーヤ・グラーフに然るべき対応していれば、こんな事にはならなかった。アデレーナもキリール・ザーデクの次女として生まれた可能性もあるんだしね。
「グラーフ伯爵の後続は誰になるんでしょうか?」
マルティンは渡さないと、ナタリアとヴァレリーは息巻いているし。
レオナルド・キーファーはカップを置く。
「グラーフ伯爵は、後続を見つけられない場合はおそらく廃爵されると思います」
「廃爵、ですか。グラーフ伯爵領はどうなるんですか?」
確か、豊かな農村地帯のはず。
「すぐに廃爵にはなりませんよ。数年以内に後続を見つけて、教育が上手くいかなければ、ですが」
「マルティンは大丈夫ですよね?」
私はぽつり。
「あの子ですか。ナタリア嬢は渡す気はないようですし、保護者であるナタリア嬢が頷かなければ、マルティンはグラーフ伯爵には渡りませんよ」
なら、いいかな。
裁判も大事な時期だし、会えないが、しっかりウーヴァ公爵家の護衛達が守ってくれている。
ああ、早く元気な顔を見たいなあ。
季節は冬。
雪がちらほら降ってる。
あの学園での男子生徒による暴行から、二ヶ月。
「ウィンティア嬢、お風邪を召されますよ」
ぼんやりと空を見上げていたら、本日休みのレオナルド・キーファーが声をかけてきた。ふわっ、とショールをかけてくれる。紳士だなぁ。
私は大人しく屋敷内に入る。
「どうされましたか?」
「いえ、裁判が気になって」
そう、キリール・ザーデクの名誉回復の為の裁判。
連日新聞各紙を賑わせている。
私が知るのは新聞の内容のみで、ナタリア達にも会えてない。
「もうすぐ最終弁論でしたね」
レオナルド・キーファーに手を引かれ、いや、引率されて温かい室内に。
「ウィンティア嬢の心配は、ナタリア嬢達の今後ですか?」
「はい」
メイドさんが丁寧にお茶を淹れてくれる。
「判決はまだですが、おそらく一旦はナタリア嬢がザーデク子爵となるでしょう」
ナタリアは一時的な子爵となり、ヴァレリーが正式に成人したら、そちらに移る予定だ。後見にローザ伯爵になる。ナタリア達を保護してくれたモロッカ男爵は、後二年はカルメン王国だしね。この二人はしっかりしているから心配ない、心配なのはマルティンだ。
まずはグラーフ伯爵夫妻の処遇だが、これまでグラーフ伯爵領を円滑に統治していた事があり、罰金刑で終わってしまった。まさか娘があんな嘘までついて、孫達を窮地に追いやっているとは信じられなかったんだろう。せめてと毎月の10万ルルの仕送りが考慮された。それもゾーヤ・グラーフの陰謀で、ナタリア達には渡っていなかったが。一度でもいいから、ナタリア達を訪ねるべきだったのに、それをしなかったし、そもそもアデレーナの出生偽装を黙っていた。今まで築いてきた信頼とかがた落ちだから、早めに引退し、後続に繋げなくてはならない。跡取り予定のゾーヤとアデレーナに繋げるわけない。グラーフ伯爵家の名誉を貶めたのだから。そうなれば、どうするか。貴族は血筋を重んじる。グラーフ伯爵の血筋が持ち、できれば男児。ヴァレリーはザーデク家の跡取りだ。
つまり、マルティンをグラーフ伯爵家の養子に、と言っているが、ナタリアとヴァレリーが断固拒否している。
あまりにも都合が良すぎるし、落ちぶれるグラーフ伯爵に着かせて、マルティンが苦労するのは嫌だと。
私もそう思う。
だいたい、このグラーフ伯爵夫妻が、しっかりゾーヤ・グラーフに然るべき対応していれば、こんな事にはならなかった。アデレーナもキリール・ザーデクの次女として生まれた可能性もあるんだしね。
「グラーフ伯爵の後続は誰になるんでしょうか?」
マルティンは渡さないと、ナタリアとヴァレリーは息巻いているし。
レオナルド・キーファーはカップを置く。
「グラーフ伯爵は、後続を見つけられない場合はおそらく廃爵されると思います」
「廃爵、ですか。グラーフ伯爵領はどうなるんですか?」
確か、豊かな農村地帯のはず。
「すぐに廃爵にはなりませんよ。数年以内に後続を見つけて、教育が上手くいかなければ、ですが」
「マルティンは大丈夫ですよね?」
私はぽつり。
「あの子ですか。ナタリア嬢は渡す気はないようですし、保護者であるナタリア嬢が頷かなければ、マルティンはグラーフ伯爵には渡りませんよ」
なら、いいかな。
裁判も大事な時期だし、会えないが、しっかりウーヴァ公爵家の護衛達が守ってくれている。
ああ、早く元気な顔を見たいなあ。
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