ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
255 / 338

閑話 テヘロンの侍女

しおりを挟む
 私の生まれは貧しい村だった。
 それなのに、現在、『テヘロンの至宝』と呼ばれる第三王女殿下スティーシュルラ様の護衛兼侍女として雇われている。
 本来から、私のような貧しい身分の女が、スティーシュルラ殿下のお側に侍ることは許されないのだが、すべてはあるルルディの貴族夫人のおかけだ。

 ティーナ・ローザ伯爵夫人。

 彼女がウィンター・ローズの栽培を村に委託してくれなければ、私はそのうちはした金で娼婦として売られただろう。
 ティーナ夫人は、警戒心の強い村人を説き伏せ、様々は指導に取り組んだ。まず、村の女達を取り入れ、内職を足掛かりに、しまいには読み書きを学ぶ教室まで建てた。
 村は数年かけて豊かになり、名もない村がウィンター・ローズ村と呼ばれるまでに時間はかからなかった。   
 私の家も恩恵に預かり、食うや食わずの生活から脱却できた。
 村の子供達は、みんなティーナ夫人が大好きだった。
 ティーナ夫人のおかげで、村の子供達の識字率が一気に上がり、それで村の外に出ても生活に困るような事はなくなった。
 みんな、ティーナ夫人のおかげだ。
 私はもっと誉めてほしい、ティーナ夫人のような知的な女性になりたいと、頑張った。すると、誰よりも読み書きができ、物足りなくなり、いろんな事を学んだ。両親は女の私が学をたくさん得るのにいい顔はしなかったが、ティーナ夫人が説き伏せた。

 必ず、この子の力になる。

 そして、私は難関の侍女試験を突破。
 村総出でお祝いしてくれた。つい最近まで、廃村を呟かれていた村から、王宮の侍女を出したのだ。ただ、最後まで心配したのは、両親だ。

「お前は器量もいいし、頭もいいから、いじめられないか?」

「変な貴族が、お前を手込めにしないか?」

 なんてことない、私自身の心配だ。
 両親の愛だ。
 私は大丈夫だと説き伏せて、王宮に。その前に、私はティーナ夫人に手紙を出した。
 数年前からティーナ夫人は村に来ず、手紙でのやり取りだけだった。
 事情は知っていた。
 孫娘の一人がネグレクトの被害に遭っていたのだ。
 初めは信じられなかった。
 ティーナ夫人の息子とは面識があるが、真面目な青年だったし、奥方のクラーラ夫人も熱心に仕事をされる方だった。
 ただ、離れたルルディとテヘロンとを繋ぐ手紙だけでは、詳しく知るよしもなく。
 私はただ、ティーナ夫人に誉めて欲しくて手紙を出したのだ。だけど、返事は来なかった。
 久しぶりに帰省したら、村の家中に、喪中の旗がはためいていた。

 そう、ティーナ夫人が毒殺されたのだと、その時知った。

 私は村長の家に唯一ある、ティーナ夫人の肖像画の前で声を張り上げな泣いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜

影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。 けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。 そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。 ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。 ※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...