ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
251 / 338

裁判⑦

しおりを挟む
「美味しい……………」

 やたら、実感のこもった言葉。
 レオナルド・キーファーがスプーン握ってうなだれている。

「お口に合って良かったです」

 私はひとまずホッとする。
 ちょっと味が濃いかもしれないけど、良かった。
 後ろから生暖かい視線が来るけど、無視しよう。
 私はレモン水をカップに注ぐ。

「まだ、学園までに戻るまでに期間があるので、キーファー様に気に入ってもらえるようなメニュー開発しますね」

 営業スマイル。
 すると、レオナルド・キーファーは顔を両手で覆い、ぶつぶつ。なんだなんだ、変質者の匂いしてきたぞ。

「ど、どうされました?」

「いえっ、あまりにも尊くてっ」

「と、尊いって。あ、冷めますよ」

「頂きます」

 レオナルド・キーファーは、綺麗に平らげた。それからメイドさんが淹れてくれた紅茶で一服。

「キーファー様、苦手な食材は?」

「特にありませんが、生の魚が苦手で」

「ああ、カルパッチョみたいな」

「そうですね。火を通したら魚は美味しいです」

 なるほど、頭にメモ。

「野菜の好き嫌いは?」

「無いですよ」

 メモ、メモ。

「好きな野菜は?」

「えっと、実はじゃがいもが好きなんです。子供っぽいかと思われますが、蒸かし芋や、フライドポテトが好きなんです」

「じゃがいも、ですか」

 …………………あーっ、そうだよっ、じゃがいもだよっ。なんで思い出さなかったんだっ。
 超メジャーメニューッ。

「ウィンティア嬢?」

「あ、いえ、何でもないです」

 私は紅茶を啜った。

 数日後、私はある料理の再現に成功。
 それがまた騒動を起こすんだけどね。
 きっかけはレオナルド・キーファーのフライドポテトだ。そう、フライドポテト。揚げるのだ。
 なので、自家製ポテトチップス作成。
 じゃがいも、油、塩、全部ウーヴァ公爵家の領地産。
 それからポテトサラダ。これにはマヨネーズの再現に苦心した。鮮度命の卵だしね。結局これもウーヴァ公爵家の高級卵使用。気軽に食べれないものになってしまった。
 ま、でも、レオナルド・キーファーが項垂れる程喜んでくれたから、いいっか。

 本日は日曜日。
 お仕事に向かうレオナルド・キーファーをお見送り。

「すぐに帰って参ります」

「無理しないでくださいね」

 何を真剣に、私の手を握りしめて言うかね?
 無事に出発した。
 さ、私は、と。

「ウィンティア様、奥様がお呼びです」

「あ、はい」

 久しぶりのセシリア・ウーヴァ女公爵との面会だ。
 アンジェリカ様とは時々夕食を共にする。何を食べても姿が美しいので、大変参考にさせてもらっている。
 角煮もポテトサラダもポテトチップスも大好評だし、ミッションクリアかな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~

岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。 本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。 別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい! そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...