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裁判⑦

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「美味しい……………」

 やたら、実感のこもった言葉。
 レオナルド・キーファーがスプーン握ってうなだれている。

「お口に合って良かったです」

 私はひとまずホッとする。
 ちょっと味が濃いかもしれないけど、良かった。
 後ろから生暖かい視線が来るけど、無視しよう。
 私はレモン水をカップに注ぐ。

「まだ、学園までに戻るまでに期間があるので、キーファー様に気に入ってもらえるようなメニュー開発しますね」

 営業スマイル。
 すると、レオナルド・キーファーは顔を両手で覆い、ぶつぶつ。なんだなんだ、変質者の匂いしてきたぞ。

「ど、どうされました?」

「いえっ、あまりにも尊くてっ」

「と、尊いって。あ、冷めますよ」

「頂きます」

 レオナルド・キーファーは、綺麗に平らげた。それからメイドさんが淹れてくれた紅茶で一服。

「キーファー様、苦手な食材は?」

「特にありませんが、生の魚が苦手で」

「ああ、カルパッチョみたいな」

「そうですね。火を通したら魚は美味しいです」

 なるほど、頭にメモ。

「野菜の好き嫌いは?」

「無いですよ」

 メモ、メモ。

「好きな野菜は?」

「えっと、実はじゃがいもが好きなんです。子供っぽいかと思われますが、蒸かし芋や、フライドポテトが好きなんです」

「じゃがいも、ですか」

 …………………あーっ、そうだよっ、じゃがいもだよっ。なんで思い出さなかったんだっ。
 超メジャーメニューッ。

「ウィンティア嬢?」

「あ、いえ、何でもないです」

 私は紅茶を啜った。

 数日後、私はある料理の再現に成功。
 それがまた騒動を起こすんだけどね。
 きっかけはレオナルド・キーファーのフライドポテトだ。そう、フライドポテト。揚げるのだ。
 なので、自家製ポテトチップス作成。
 じゃがいも、油、塩、全部ウーヴァ公爵家の領地産。
 それからポテトサラダ。これにはマヨネーズの再現に苦心した。鮮度命の卵だしね。結局これもウーヴァ公爵家の高級卵使用。気軽に食べれないものになってしまった。
 ま、でも、レオナルド・キーファーが項垂れる程喜んでくれたから、いいっか。

 本日は日曜日。
 お仕事に向かうレオナルド・キーファーをお見送り。

「すぐに帰って参ります」

「無理しないでくださいね」

 何を真剣に、私の手を握りしめて言うかね?
 無事に出発した。
 さ、私は、と。

「ウィンティア様、奥様がお呼びです」

「あ、はい」

 久しぶりのセシリア・ウーヴァ女公爵との面会だ。
 アンジェリカ様とは時々夕食を共にする。何を食べても姿が美しいので、大変参考にさせてもらっている。
 角煮もポテトサラダもポテトチップスも大好評だし、ミッションクリアかな。
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