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裁判⑥

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「ウィンティア嬢と朝食がご一緒できるなんて」

 ミルクティーを傾けるレオナルド・キーファーが嬉しそうだが、私はそれどころではない。ウーヴァ女公爵とそのご令嬢からの圧が凄くて、そのうち胃がきりきりしそう。せっかくの豪華な朝食が。
 何か作らなきゃだけど、私を記憶を引っ張りださないとだけど、材料の関係があるしなあ。味噌とか醤油があればなあ。
 うーん、何を作ろうかな。
 テヘロン大使館では、あんな大事になるなんて思ってなくて、気軽に言ってたけど、うーん、うーん、あ、そうだ。

「キーファー様は、何か好きなものは?」

 とりあえずのきっかけ。

「えっ? 好きなもの?」

「はい、好きな料理」

 完全に戸惑いのレオナルド・キーファー。

「そ、そうですね。パエリアとか好きです」

「パエリア、ですか」

 お米料理だ。
 米ね、米、米、米…………………あっ。

「他には?」

「たまにですが、料理長の故郷の調味料を使った肉の炒め物が好きですね」

「調味料?」

「はい、豆を使った調味料ですよ。たまにむしょうに恋しくなる料理ですね。体を動かした後は特に」

 護衛騎士だもんね。
 うーん、セシリア女公爵に言われたからではないが、大変なお仕事だし、なんだかんだでプレゼントもらったし、お返しの意味込めて、何かをしないと。
 うーん、男性だもん、がっつりした肉と米、それからその豆を使った調味料。いけるか?

「ありがとうございますキーファー様、なんとかなりそうです。ご馳走様です」

「えっ? ウィンティア嬢」

 私はそそくさと学園に向かった。

 で、一週間後。

「キーファー様、お仕事お疲れ様です」

 と、私は仕事から帰って来たレオナルド・キーファーをお出迎え。なぜか胸を押さえている。

「ど、どうされました?」

「いえ、あまりにも眩しくて」

 何が?

「先にお風呂にされますか? 今日、私、お料理してですね。温かくだしたいので、ちょっと時間を頂きたくて」

「すぐに湯浴みして参りますっ」

 レオナルド・キーファーが疲れを感じさせない機敏な動きで走っていく。
 どうしたんだろう?
 ま、いいや。
 レオナルド・キーファーのきっかけで出来た新作料理。

 がっつり角煮とふわとろ卵のせ炒飯。

 この角煮が出来上がったのが大きい。
 豆の調味料は、醤油でなく、ジャンみたいなもので、料理長の手作り調味料。それから手にはいる調味料で、角煮を再現した。失敗もしたけど、無事に完成、とろとろ角煮。
 料理長が、ぐっ、と親指立てたからね。
 ちゃっ、ちゃっ、と炒飯を作り、ふわとろ卵の乗せて、角切り角煮をのせて、と。スープはあっさり系のものを、と。これでも自炊してましたらからね。
 生暖かい眼差しで、ウーヴァ公爵家の使用人さん達から見守れ、私はワゴンを押す。
 でも、うまく出来て良かった。味見してもばっちりだったし。セシリア・ウーヴァ女公爵からは、レオナルド・キーファーが喜ぶものを、だったしね。大変なお仕事だから、ご飯食べてもらわないと。
 次は餃子にしようなか。ニラに良く似た食材あるし、ニンニクもある。スタミナばっちりだ。問題は皮なんだよねー。
 ワゴンを押して、レオナルド・キーファーの待つ食堂に向かった。
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