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裁判②

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 なんとも言えない気分で、ホテルに到着。
 レオナルド・キーファーに引率されて、二階のレストランの個室に通される。

「ナタリア」

「お嬢様っ」

 クリーム色のワンピースを着たナタリアが駆け寄ってきた。私とナタリアはひし、と抱き合う。

「おじょうちゃまーっ」

 マルティンも来たので、きゅう、と抱きしめる。

「カモンヴァレリーッ」

「さすがに無理です」

 恥ずかしがり屋め。

 軽食を食べながら、私はナタリアと話をする。マルティンは私とナタリアの間に陣取る。この後、別のカフェにお茶の予約してくれている。本来はそっちがメインだ。ただ、私がナタリア達を心配していると思い、場を設けてくれただけ。レオナルド・キーファーは気を使ってくれたのか、少し離れて、バトレルさんと話をしている。

「ナタリア疲れてない?」

 裁判で証言台に立つのは主にナタリアだ。まだ幼いマルティンは当然除外。そのうちヴァレリーだけは、父親のことを聞かれるだけに呼ばれるが短時間のみ。

「はい。まだ、始まったばかりですし。まずはバズル伯爵との不倫を突いている状態です」

 そこからね。それを皮切りに、アデレーナの出生証明書の偽造を突いて、キリール・ザーデクまでつなげるだね。

「長期戦になりそうって聞いたけど」

「はい。そうですね。来年度までかかるそうです」

 これがアデレーナの出生証明書偽造だけなら1~2か月で勝負がつくが、最大の問題はキリール・ザーデクの件だ。
 前日法廷で初めて元母親と対峙したそうだけど、ナタリアはもうなんとも思わなかったって。もう、元母親と元妹は過去のものって割り切っているんだね。
 ただ、父親を侮辱するような発言だけは、我慢できなかったが、付添人のバトレルさんが制ししてくれたって。
 次はアデレーナを取り上げた助産師、グラーフ伯爵夫妻、ナタリア達を保護したモロッカ男爵、葬儀の日に体を寄せ合っていたのも目撃した警らの人が証言台に立つって。

「お嬢様のおかげです。私一人ではどうしようもなかったはずです」

「いいのよナタリア。体調管理をしっかりね。無理したら駄目だよ」

「はい、お嬢様」

 短い面会を終えて、マルティンがいやいやと抱き着いてくるので、後ろ髪引けれながら、私は再びレオナルド・キーファーに引率されて馬車に。

「キーファー様、今日はありがとうございます。気を使わせていしまって」

「お気になされないでください。それから、ウィンティア嬢まだ、本日のデート終わっていませんよ」

 あ、そうだった。
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