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新たな名物⑥

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「おじょうちゃまーっ」

 マルティンが私を見つけて走ってきた。可愛い。きゅう、と抱きしめる。繰り返すがゾーヤ・グラーフが許せない。こんなにかわいいマルティンを捨てるなんて。勿論ナタリアとヴァレリーもだ。教会で着の身着のまま放置され、家に帰ったら、既に売却されていた。どれだけナタリアが絶望したか。たまたまキリール・ザーデクの知り合いが保護してくれたからいいようなものを。許せん。
 明後日にはホテルの移動するナタリア達。しばらくは会えない。

「ナタリア、大丈夫?」

「はい、お嬢様。やっと父の汚名をそそげます」

 ふんす、とナタリア。
 あれからもアデレーナはダンスの授業になると、周りを陽動し、傷のある私を貶めるようなことをやっている。アデレーナのクラスメートはその場で同調するもの、とそうでない人で分かれている。ソードさんは後者ね。そして前者でも後で謝ってくる生徒がいるのも事実だ。謝ってくるんなら、なんで、アデレーナに同調するのか? すると当人はその場ではなぜかアデレーナの言うことが正しい、間違っていないと強く思ってしまうと。そして授業後に後悔して私のところに来る。
 ああ、これがアデレーナの『魅了』なのかな?
 言ってはいけないこと放ち、判断力を鈍らせて、自分の味方になるようにする。典型的な『魅了』の作用だ。まだ、効果が弱く、後から後悔なんで感情が生まれる。強い『魅了』だと、後悔も感じないそうだ。
 まだ、謝ってくる生徒はいいが、それすらもせずに、アデレーナの考えに『魅了』関係なく同調している生徒が少なからずいる。貴族女性の顔の傷は致命傷だからもあるし、何よりあのモニカ妃殿下の思想が反映されていることもある。モニカ妃殿下は女性は美しくなくては価値がないと豪語しているそうで、それが少なからず影響し、アデレーナの考えに自然と賛同する考えにつながるそうだ。
 ま、そのアデレーナも、学園からそのうちいなくなるだろう。
 キリール・ザーデクの死の真相が暴かれれば、母親のゾーヤ・グラーフと不倫関係にあったティーシモン・バズルは一蓮托生で自滅。殺人教唆した、ティーシモン・バズルは最も重い罪になるだろうしね。しかも自分の管轄内で事件を起こさせて、捜査に圧力かけて、終了させたんだから。
 で、そのアデレーナ、ゾーヤの母子は、アンジェリカ様の知り合いから呼ばれたお茶会を皮切りに、あちこちに呼ばれて無事に社交界復帰。しかも、あのロナウド殿下に気に入られたという噂が流れて余計にね。いまだにモニカ妃殿下とロナウド殿下の件は露見していない。相当の圧力かけたんだな。圧力は別にいいけど、ロナウド殿下がシルヴァスタに帰ったの、あれから2週間も経ってからだって。大学はいいのかな? と、思ったら、お茶していたスティーシュルラ様から一言。

「知ってるティアさん、不登校って言葉」

「あ、はい」

 そうだよね。
 おそらく今は先代シルヴァスタ国王が多額に寄付を大学にしているから籍があるが、卒業となると、難しことになうるだろうって。
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