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浅はかと大人⑩
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「ティアさんの立場で事情を知るなら、ならそれが限界ね」
ゆったりとした空気のステラ様に釣られて、私も無意識に入った肩の力を抜く。
「でもステラ様、ロナウド殿下は王位に付けないのでは?」
「そうね。通常の手順で輿入れした側室から生まれてあれなら、立太子になることは可能ね。本来なら媚薬なんて盛ったモニカ妃殿下の子であるロナウド殿下は付けないのだけど、バッグが大きいでしょう?」
「先代シルヴァスタ国王ですね」
「問題はそこなのよ」
はあ、とため息をつくステラ様。珍しいため息なんて。美しいけどさ。
「最近、カタリナ嬢の死から時間が経ち、モニカ妃殿下が動き出したわ。モニカ妃殿下は自身の美意識を他人に強要する方で、対極にいる私達テヘロン人を毛嫌いしているのよ。始めは友好国だからと穏便に済ませようとしていた人達まで染まり出しちゃって」
「あ、それで、テヘロンからの留学生に嫌がらせを?」
「もともとの下地は合ったのよ。モニカ妃殿下は、テヘロン人を毛嫌いするのを隠しもしなかった。友好国なのに、ね。しっかり意味を理解している人達はとどまる判断をしたわ、でもね、モニカ妃殿下は人を惹き付ける魅力的な人よ。それに惑わされた人達は、カタリナ様の件で社交を控えざるを得なかったモニカ妃殿下が動き出した事で再び燻りだし、火を出した」
カタリナ嬢の件は事故として処理をされた。それには、ビビアン妃殿下が病を押して謝罪に向かったことを他人に知らない人達。そして先代シルヴァスタ国王が、台風被害に遭ったペルク侯爵領に人員や物資を提供したことはだいだい的に新聞で発表されてる。カタリナ様の死の真実を知らない人達からしたら、そのシルヴァスタ国王の血筋で、第一王子のロナウド殿下が慣例で王太子になると思っている。
「ルルディとテヘロンは海を越えた友好国。だから、私も留学したわ。でもね、このまま先代シルヴァスタ国王が付いてるあのモニカ妃殿下を野放しにして欲しくないのよ。だから、どうしてもレオンハルト殿下には生きて戻ってきて欲しいの」
「もし、もしも、仮にロナウド殿下が王太子になったりしたら、あ、まだ先の話ですが」
「王太子になれば、その生母であるモニカ妃殿下の発言力は強くなるわ。そうすれば、テヘロン人に対して辛辣になるでしょう。国のトップになればその影響力は強いわ。ルルディ在住のテヘロン人が住みにくくなってしまう。もちろんそれだけではないけど」
ロナウド殿下が王太子になると、色々ルルディとテヘロンが長年築き上げてきたものに亀裂が生じるわけね。
「だから、影武者としてのレオナルド・キーファーという人物を見てみたかったの。ティアさんの婚約者ってのもあったけど、情けない男ならティアさんだけ引き抜いちゃえ、って思って」
ふふふ。
と、笑うステラ様。う、美しいのだけど、なんだが、ゾッとするのは気のせい。
「で、で、どう、でした?」
「ま、妥協点ね」
不思議とほっとするのは、これも気のせいかな?
「後は、シルヴァスタの先代王妃殿下と側室達が、どれだけ腹を括って動けるか、ね」
あ、確かやっと協力してくれるって聞いた。
そう言えば、どうするんだろう?
「気になる?」
「あ、はい」
「多分新聞を使った暴露的な事になるでしょうけど。あ、ティアさんしゃべっちゃダメよ」
しー、とされる。
うーん、何をしても動作が美しいので、私はこくこく、と頷いた。
ゆったりとした空気のステラ様に釣られて、私も無意識に入った肩の力を抜く。
「でもステラ様、ロナウド殿下は王位に付けないのでは?」
「そうね。通常の手順で輿入れした側室から生まれてあれなら、立太子になることは可能ね。本来なら媚薬なんて盛ったモニカ妃殿下の子であるロナウド殿下は付けないのだけど、バッグが大きいでしょう?」
「先代シルヴァスタ国王ですね」
「問題はそこなのよ」
はあ、とため息をつくステラ様。珍しいため息なんて。美しいけどさ。
「最近、カタリナ嬢の死から時間が経ち、モニカ妃殿下が動き出したわ。モニカ妃殿下は自身の美意識を他人に強要する方で、対極にいる私達テヘロン人を毛嫌いしているのよ。始めは友好国だからと穏便に済ませようとしていた人達まで染まり出しちゃって」
「あ、それで、テヘロンからの留学生に嫌がらせを?」
「もともとの下地は合ったのよ。モニカ妃殿下は、テヘロン人を毛嫌いするのを隠しもしなかった。友好国なのに、ね。しっかり意味を理解している人達はとどまる判断をしたわ、でもね、モニカ妃殿下は人を惹き付ける魅力的な人よ。それに惑わされた人達は、カタリナ様の件で社交を控えざるを得なかったモニカ妃殿下が動き出した事で再び燻りだし、火を出した」
カタリナ嬢の件は事故として処理をされた。それには、ビビアン妃殿下が病を押して謝罪に向かったことを他人に知らない人達。そして先代シルヴァスタ国王が、台風被害に遭ったペルク侯爵領に人員や物資を提供したことはだいだい的に新聞で発表されてる。カタリナ様の死の真実を知らない人達からしたら、そのシルヴァスタ国王の血筋で、第一王子のロナウド殿下が慣例で王太子になると思っている。
「ルルディとテヘロンは海を越えた友好国。だから、私も留学したわ。でもね、このまま先代シルヴァスタ国王が付いてるあのモニカ妃殿下を野放しにして欲しくないのよ。だから、どうしてもレオンハルト殿下には生きて戻ってきて欲しいの」
「もし、もしも、仮にロナウド殿下が王太子になったりしたら、あ、まだ先の話ですが」
「王太子になれば、その生母であるモニカ妃殿下の発言力は強くなるわ。そうすれば、テヘロン人に対して辛辣になるでしょう。国のトップになればその影響力は強いわ。ルルディ在住のテヘロン人が住みにくくなってしまう。もちろんそれだけではないけど」
ロナウド殿下が王太子になると、色々ルルディとテヘロンが長年築き上げてきたものに亀裂が生じるわけね。
「だから、影武者としてのレオナルド・キーファーという人物を見てみたかったの。ティアさんの婚約者ってのもあったけど、情けない男ならティアさんだけ引き抜いちゃえ、って思って」
ふふふ。
と、笑うステラ様。う、美しいのだけど、なんだが、ゾッとするのは気のせい。
「で、で、どう、でした?」
「ま、妥協点ね」
不思議とほっとするのは、これも気のせいかな?
「後は、シルヴァスタの先代王妃殿下と側室達が、どれだけ腹を括って動けるか、ね」
あ、確かやっと協力してくれるって聞いた。
そう言えば、どうするんだろう?
「気になる?」
「あ、はい」
「多分新聞を使った暴露的な事になるでしょうけど。あ、ティアさんしゃべっちゃダメよ」
しー、とされる。
うーん、何をしても動作が美しいので、私はこくこく、と頷いた。
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