ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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浅はかと大人⑤

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 パチパチ。
 拍手が起き、壇上のアンジェリカ様がカーテシー。
 やっぱり本物の貴族令嬢、品格が違う。私がやったらぎこちないもん。
 後はご歓談を、だ。
 私はあまり早くは帰ると失礼だから、レオナルド・キーファーと時間を潰す。流石に喉が乾き、グラスジュースを飲んだ。レモネードですっきり。
 途中で再びレオナルド・キーファーの知り合いが声をかけてきたが、こちらはきちんとご挨拶してくれた。どうやら同僚騎士さんみたい。ご夫婦で来ていたみたいで、丁寧に夫婦揃って挨拶してくれた。この際、レオナルド・キーファーは私を完全に隠しはしなかった。

「レオナルド・キーファー殿、お連れのかわいらしいお嬢さんにご挨拶をしてもよろしいですかな?」

 と、これがこの場合の正式な物ね。
 私に目で確認してきたので、きちんとしたこのご夫婦は大丈夫かな。
 私はカーテシーでご挨拶。

「初めましてかわいらしいお嬢さん。私はニモ・フレーバ子爵、こちらは妻レモネー」

 レモネードみたいな名前の奥さん。でも、優しそうな女性だ。二人揃って礼儀の姿勢。

「初めまして、ウィンティア・ローザです」

 ご挨拶。

「やはり妹さんではなかったですね」

 ふふふ、と笑うフレーバ子爵。奥さんもふふふ。
 なんだろう、生暖かい目。嫌にはならないけど、生暖かい目。

「キーファー殿、ローザ嬢は、もしかして、ですが」

「彼女の年齢上、正式な公表を控えている段階です。どうぞご容赦ください」

「もちろん」
 
 ふふふ、ふふふ、と生暖かい目。フレーバ子爵夫妻は、ふふふ、と笑顔を浮かべたまま去っていった。

「なんだ、やっぱりそうだったのか」

 あ、また来た小物の悪党が。
 ざっ、とレオナルド・キーファーが私を庇うように立つ。

「例の『ミルクティーの』なんとかだろう? はっ、ローザって言えばセーレ商会のだろう。後見といい、上手くやったなキーファー」

 なんでこの人、嫌な感じで言うわけ。もしかして、やっかみなのかな?

「ふーん、ローザ伯爵のね。ならあれの妹って訳か?」

 あれのって。いくらなんでも失礼じゃない? キャサリンの事だろうけど、それでも初対面でこれは失礼じゃない?

「あれの妹ならちょっとくらいいいだろう? なあ、少し話をしようぜ」

 ニヤニヤ笑いを浮かべる小物の悪党。おそらくキャサリンとどこかで顔見知りなんだろうが、一緒にしてほしくない。
 レオナルド・キーファーが身構える。完全に私を小物の悪党から守る姿勢だ。私もここは大人しく守られた方がよいと判断する。しっかりレオナルド・キーファーの後ろに隠れる。

「少しお利口になったらどうだ? 俺はモロミ侯爵の跡取りだぞ。媚を売るのはどちらがいいか分からないようだから、直々に教えてやるって言っているんだ」

「死んでも嫌です」

 私はきっぱり断った。
 すると一気に小物の悪党の形相が変わる。
 やっぱり小物だ、一気に腕を振り上げる。
 会場に微かな悲鳴が上がった。
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