ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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新学期とまどか⑧

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 新学期はトラブルなく過ぎていった。
 授業や語学クラブ、園芸の係と忙しく過ごしている。あのテヘロン大使館に保護された経緯は一部の生徒は分かっているが、遠巻きにこそこそ言われるが気にしない。なんだかんだと忙しいから気にもしない。すると、知らないうちに、向こうは興味が失せたように去っていった。
 私が気にしないのもそうだけど、やっぱりスティースュルラ様に連れられていたのが大きいみたい。『テヘロンの至宝』なんて呼ばれている王女様のお気に入りだと、思われているから、あからさまにそれを揶揄するような事はしないって。
 スティースュルラ様々だ。
 そしてあっという間にアンジーの懇親会だ。
 一旦ローザ伯爵家に戻り準備してから、レオナルド・キーファーがお迎えに来てくれるそうだ。
 朝早く迎えに来てくれた馬車には、ナタリアとバトレルさんが。トラブルなくローザ伯爵家に戻り準備を始める。丁寧にナタリアが仕上げてくれる。アンジェリカ様のお下がりリメイクドレスは、ピンクのドレスに、濃いピンクの飾りがあしらわれている。そのリボン自体に、立体的な花の刺繍が入っている。髪もそのリボンで飾る。

「こちらはテヘロンの伝統的な刺繍だそうです」

 このリボンに刺激を受けた、あのリメイクを請け負った工房の針子さん達が今回の為に仕上げてくれたようだ。
 小さなバッグも刺繍入りリボンで飾られている。ハンカチと懐中時計を入れて、と。ハンカチはテヘロンのあの侍女さんが刺繍してくれたハンカチだ。
 よし、いいかな。
 ウィンティア、かわいいよ。
 そう内側に言うが、全く反応がない。仕方ないか、このローザ伯爵家はウィンティアにしたら、魔窟だからね。
 レオナルド・キーファーが迎えに来るまで、ちょっと時間があるかな。
 のんびりするかな、なんて思っていたら、なにやら部屋の向こうが騒がしい。耳を済ませないと聞こえないけどね。
 どうしたんだろう?
 ナタリアと顔を見合わせていると、バトレルさんがやって来た。

「何の騒ぎですか?」

「キャサリンお嬢様の支度が全く進まないそうです」

 全く興味ないように言うバトレルさん。
 どうやら、キャサリンが今日着ていくドレスやアクセサリーを決めていたないみたいだ。え? 今日だよね、モニカ妃殿下のお茶会。あんなにドレスやアクセサリーを買っていたのに、まだ決めてないの?
 キャサリンは朝からしっかりお風呂とエステを受けて、いざ、並べられた衣装達を前にあーでもないこーでもないと言い出した。ドレスの色に応じて、メイクや髪型を変えなくてはならないのに、優柔不断にやってるそうだ。
 アンジーの懇親会とモニカ妃殿下のお茶会は、同じ時間に開場するが、モニカ妃殿下のお茶会には入る順番がある。立場が低いとか若人から開場入りし、立場が高い人達が後から入る。アンジーは先に工房関係やアンジーに出店した人達が先に入り、その後お得意様が入る。アンジーの懇親会は厳密ではないのだけど、モニカ妃殿下のお茶会は厳密になるはず。当然順番を間違えたら、お茶会に入れない。あれだけ大金使ってなんやらかんやら準備したくせに、遅刻したらどう責任とるつもりだろう? あ、あいつの事だ、反省って言葉を知らないな。
 まあ、キャサリンが遅刻しようが、私は関係ないか。
 レオナルド・キーファーが迎えに来た。私が先に出ることになる。
 キャサリンの部屋の前を通ると、

『もうっ、早くしてちょうだいっ、遅れちゃうじゃないっ』

 と、癇癪を起こしたような耳障りな声が聞こえた。パタパタと走る音。多分メイド達が振り回されているんだろうな。
 お気の毒。
 まあ、すれ違わないからいいか。
 私は玄関に向かうと、スーツ姿のレオナルド・キーファーが。
 あ、幻覚が。
 レオナルド・キーファーがぶんぶんと尻尾を振ってる大型犬に見えた。
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