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新学期とまどか④
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成人式の後に、伯母さんから話を聞いた。
みどりお姉ちゃんが結婚すると。
つまり、親族席に出ないかってね。
私は嫌だった。確かにみどりお姉ちゃんはあれから事情を知り、ものすごく後悔していたみたい。両親も、伯父さんからそう聞いたけど、まだ私の中にはわだかりがあった。
きっと、体裁の為に呼ばれただけだから、行きたくないって答えた。
「そんなの気にしないのっ。美味しいご飯がタダで食べれるくらいに思えばいいじゃない。なにか言って来たら私が追っ払ってあげる。そうそう、ホテルだっていいところに泊まれるのよ。私、あそこのアフタヌーン行きたかったのよね、ねえまどかちゃん一緒に行ってよ。あ、まどかちゃんの成人の写真とりましょっ。私の振り袖あるし、ねっ」
そう、言ってくれた。
そして、あの時の茶封筒の半分がみどりお姉ちゃんの貯金だと知り、私は迷った。お金を得るのが大変だと身に染みていたから。
伯父さんからも聞いた。父は兄、つまり出来のいい兄と比べられたからひねくれていた。ならなんで私にそうしたか、だ。
父は自分の様に、私になってほしくなかったから。ひねくれて、成績のよくなかった父は大学にも行かず、小さな工場で働いた。伯父さんは名門大学を出て、県庁のエリートコースだ。当然に伯父さんは努力の上に勤勉で真面目だったしね。しかも伯母さんは薬剤師で高給パートだったしね。父の工場は不況の煽りで給料が厳しくなってしまい。母もパートをしていたが、生活は苦しくなる一方で、伯父さんは安定した生活を送っていたのを見ていたから。
みどりお姉ちゃんは、両親にしては誇りだったんだろう。母も母で、高校中退して苦労したそうだ、と。だから、余計にみどりお姉ちゃんに手をかけてしまった。私を無意識に比べてしまったのは、私に、両親の様になってほしくなくて、みどりお姉ちゃんみたいになって欲しからだと、伯母さんから聞いた。
当然、私は反感を覚えた。
だって私は私だ。どうしてもみどりお姉ちゃんにはなれないのだから。話を聞いても分からない訳ではないけど、それを消化できる程、私は大人になりきれていなかった。
それに、今さら顔を出せない。私の中のわだかまりはうずまいていた。
ギリギリまで伯母さんが連絡してきたけど、のらりくらりとかわして、結局、結婚式には行かなかった。
私はその日、休みだった。
行くつもりはなかったから、シフトの希望は出していなかったんだけど。休みだった。
おそらく来客のお見送りだろう時間に、私はふらりと出掛けた。近くのスーパーに。いつもなら値引き率の高い時間にしか行かないけど、一割引きくらいの時間に、ふらりと。
信号待ちをしていた所に、あの赤い車が突っ込んできた。
素直に、結婚式に行っていたら、私は、山岸まどかはまだ生きていた。介護福祉士の資格の勉強だってしていたのに。
山岸まどかは二十歳の人生を終えてしまった。
結婚式の最中に新婦の妹が交通事故死。結婚式どころではなかっただろうし、お世話になった伯父さん達には何の恩返しも出来なかった。
あの日、私はぐるぐると迷っていた。
結婚式に行けば、何かが何かしらでいいようになったのだろう。だけど、まだ精神的に私は成熟しきれていなかった。あの比べられ、我慢を強いられ、言いように賭けの出汁にされた事を引きずって、冷静に判断できなかった。
結局、すべてら逃げて隠れる事を選んだ。
だから、バチが当たったんだ。
みどりお姉ちゃんが結婚すると。
つまり、親族席に出ないかってね。
私は嫌だった。確かにみどりお姉ちゃんはあれから事情を知り、ものすごく後悔していたみたい。両親も、伯父さんからそう聞いたけど、まだ私の中にはわだかりがあった。
きっと、体裁の為に呼ばれただけだから、行きたくないって答えた。
「そんなの気にしないのっ。美味しいご飯がタダで食べれるくらいに思えばいいじゃない。なにか言って来たら私が追っ払ってあげる。そうそう、ホテルだっていいところに泊まれるのよ。私、あそこのアフタヌーン行きたかったのよね、ねえまどかちゃん一緒に行ってよ。あ、まどかちゃんの成人の写真とりましょっ。私の振り袖あるし、ねっ」
そう、言ってくれた。
そして、あの時の茶封筒の半分がみどりお姉ちゃんの貯金だと知り、私は迷った。お金を得るのが大変だと身に染みていたから。
伯父さんからも聞いた。父は兄、つまり出来のいい兄と比べられたからひねくれていた。ならなんで私にそうしたか、だ。
父は自分の様に、私になってほしくなかったから。ひねくれて、成績のよくなかった父は大学にも行かず、小さな工場で働いた。伯父さんは名門大学を出て、県庁のエリートコースだ。当然に伯父さんは努力の上に勤勉で真面目だったしね。しかも伯母さんは薬剤師で高給パートだったしね。父の工場は不況の煽りで給料が厳しくなってしまい。母もパートをしていたが、生活は苦しくなる一方で、伯父さんは安定した生活を送っていたのを見ていたから。
みどりお姉ちゃんは、両親にしては誇りだったんだろう。母も母で、高校中退して苦労したそうだ、と。だから、余計にみどりお姉ちゃんに手をかけてしまった。私を無意識に比べてしまったのは、私に、両親の様になってほしくなくて、みどりお姉ちゃんみたいになって欲しからだと、伯母さんから聞いた。
当然、私は反感を覚えた。
だって私は私だ。どうしてもみどりお姉ちゃんにはなれないのだから。話を聞いても分からない訳ではないけど、それを消化できる程、私は大人になりきれていなかった。
それに、今さら顔を出せない。私の中のわだかまりはうずまいていた。
ギリギリまで伯母さんが連絡してきたけど、のらりくらりとかわして、結局、結婚式には行かなかった。
私はその日、休みだった。
行くつもりはなかったから、シフトの希望は出していなかったんだけど。休みだった。
おそらく来客のお見送りだろう時間に、私はふらりと出掛けた。近くのスーパーに。いつもなら値引き率の高い時間にしか行かないけど、一割引きくらいの時間に、ふらりと。
信号待ちをしていた所に、あの赤い車が突っ込んできた。
素直に、結婚式に行っていたら、私は、山岸まどかはまだ生きていた。介護福祉士の資格の勉強だってしていたのに。
山岸まどかは二十歳の人生を終えてしまった。
結婚式の最中に新婦の妹が交通事故死。結婚式どころではなかっただろうし、お世話になった伯父さん達には何の恩返しも出来なかった。
あの日、私はぐるぐると迷っていた。
結婚式に行けば、何かが何かしらでいいようになったのだろう。だけど、まだ精神的に私は成熟しきれていなかった。あの比べられ、我慢を強いられ、言いように賭けの出汁にされた事を引きずって、冷静に判断できなかった。
結局、すべてら逃げて隠れる事を選んだ。
だから、バチが当たったんだ。
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