ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
218 / 338

友達⑨

しおりを挟む
 確かにキャサリンの好きにさせるって話にはなったけど、いくらなんでも額が多すぎる。しかも、たった一回のお茶会の為だけにしたら、異常だ。
 バトレルさんの話では、スウサさん始め、別のメイドもさすがに買いすぎだとキャサリンにやんわり言ったそうだけど、聞きやしない。

 私はローザ伯爵家の跡取りだ、セーレ商会の広告塔だ、モニカ妃殿下のお茶会で粗相できないからと。

 いや、あんたさ、今お茶会とか呼ばれないから、広告塔お休みしてるじゃん、と心のなかでツッコミ。

「結局はあれはどうなるんですか?」

「支払いされるでしょうね」

 付けで購入したのに支払いを渋るのは、貴族として恥ずかしい行為だからね。
 大変だ。確かにキャサリンがきちんとした広告塔を勤めていたら、ある程度は許されたかも知れないが、それでもあれはない。請求書を持ってきた人達も支払いをして貰わないと、生活できないでしょうしね。

 玄関先での騒ぎが続くので、私は裏門から出る事になる。
 裏門に付けられた馬車に、よいしょ、と乗り込む。
 やっと明明後日から新学期が始まるけど。
 新学期始まってすぐの休日は、アンジェリカ様のお店の懇親会だ。レオナルド・キーファーも無事に休みを取ったと。無理しなくていいのに、いくらシルヴァスタに行くための影武者だろうけど、通常業務があるだろうし。
 同日、モニカ妃殿下のお茶会だ。
 キャサリンが割り込んで来ないからいいとしよう。
 
「毎回、こんなお茶会やってたら下手したら破産しないのかな?」

 ぽつり。と、呟く。

「いいえ、ここまで大規模のお茶会は数年ぶりです」

 正面に座ったバトレルさんが答えてくれる。
 さすが公爵家に仕えているから、情報通だ。時々よく分からない貴族情報を教えてくれる。
 ウィンティアの叔母ティアラ・ローザの元婚約者家族はどうなったかだ。
 ローザ伯爵家に逆に訴えられて、多額の慰謝料を払う義務が生じた。そこで最初にミッドナイト貧血で亡くなったティアラ・ローザを使って、なんとか、みたいな訴えを起こすように躍起になっていた夫人。つまりティアラ・ローザの婚約者の母親が、手のひらを返すように、ローザ伯爵家に訴えを取り下げるから、慰謝料なしにしろって言ってきたって。
 非常識過ぎない?
 ティアラ・ローザだって、好きで病気になったわけじゃない。ティアラ・ローザを必死に看病して、見送った祖母ティーナ・ローザがどれだけ苦しんだか。その悲しみが一番苦しい時に、病気の娘を使って、うちを陥れようとしたと訴えられて。バトレルは軽くしか話さないが、裁判ではずいぶんひどい言葉が向こうから飛び出したようだ。
 で、ミッドナイト博士の論文発表で、逆転。相手方に支払い要求をした。抵抗できない死者を侮辱するのは、ルルディでは侮蔑の対象だ。
 訴えの元である夫人は、元婚約者なんだから、金を取るような恥ずかしい事をするなと言ったって。
 それには、さすがの双方の弁護士や、裁判官まで開いた口が塞がらない様子だったと。
 で、頭に来た当時のローザ伯爵夫妻は限度額ギリギリの慰謝料請求。裁判所も認めた。相手方は夫人を除籍するから、どうにか減額してくれと泣きついて来たが、ローザ伯爵家は拒絶。

「向こうの家はもともと家計が苦しい状況で、ティアラ・ローザとの婚約は、ローザ伯爵からの支援目的だったんですよ。そのティアラ・ローザ嬢が病死、支援を、切られると思って夫人が暴走した裁判だったんです」

 なんだかな。その家計が苦しい理由は、夫人の夫が美人局に騙されたのもあり、夫は暴走する夫人を強く止められなかったと。
 で、結局慰謝料は爵位を売り、家屋敷を手放しても足りず。弁護士代とかもあったし、しかも二年も及ぶ長期戦だったしね。ミッドナイト博士の論文が出た時点で、ローザ伯爵に謝罪しようとした夫を抑え、裁判を強行し続けた夫人の行方は、慰謝料支払いの為に奉公に出たと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

処理中です...