ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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友達⑨

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 確かにキャサリンの好きにさせるって話にはなったけど、いくらなんでも額が多すぎる。しかも、たった一回のお茶会の為だけにしたら、異常だ。
 バトレルさんの話では、スウサさん始め、別のメイドもさすがに買いすぎだとキャサリンにやんわり言ったそうだけど、聞きやしない。

 私はローザ伯爵家の跡取りだ、セーレ商会の広告塔だ、モニカ妃殿下のお茶会で粗相できないからと。

 いや、あんたさ、今お茶会とか呼ばれないから、広告塔お休みしてるじゃん、と心のなかでツッコミ。

「結局はあれはどうなるんですか?」

「支払いされるでしょうね」

 付けで購入したのに支払いを渋るのは、貴族として恥ずかしい行為だからね。
 大変だ。確かにキャサリンがきちんとした広告塔を勤めていたら、ある程度は許されたかも知れないが、それでもあれはない。請求書を持ってきた人達も支払いをして貰わないと、生活できないでしょうしね。

 玄関先での騒ぎが続くので、私は裏門から出る事になる。
 裏門に付けられた馬車に、よいしょ、と乗り込む。
 やっと明明後日から新学期が始まるけど。
 新学期始まってすぐの休日は、アンジェリカ様のお店の懇親会だ。レオナルド・キーファーも無事に休みを取ったと。無理しなくていいのに、いくらシルヴァスタに行くための影武者だろうけど、通常業務があるだろうし。
 同日、モニカ妃殿下のお茶会だ。
 キャサリンが割り込んで来ないからいいとしよう。
 
「毎回、こんなお茶会やってたら下手したら破産しないのかな?」

 ぽつり。と、呟く。

「いいえ、ここまで大規模のお茶会は数年ぶりです」

 正面に座ったバトレルさんが答えてくれる。
 さすが公爵家に仕えているから、情報通だ。時々よく分からない貴族情報を教えてくれる。
 ウィンティアの叔母ティアラ・ローザの元婚約者家族はどうなったかだ。
 ローザ伯爵家に逆に訴えられて、多額の慰謝料を払う義務が生じた。そこで最初にミッドナイト貧血で亡くなったティアラ・ローザを使って、なんとか、みたいな訴えを起こすように躍起になっていた夫人。つまりティアラ・ローザの婚約者の母親が、手のひらを返すように、ローザ伯爵家に訴えを取り下げるから、慰謝料なしにしろって言ってきたって。
 非常識過ぎない?
 ティアラ・ローザだって、好きで病気になったわけじゃない。ティアラ・ローザを必死に看病して、見送った祖母ティーナ・ローザがどれだけ苦しんだか。その悲しみが一番苦しい時に、病気の娘を使って、うちを陥れようとしたと訴えられて。バトレルは軽くしか話さないが、裁判ではずいぶんひどい言葉が向こうから飛び出したようだ。
 で、ミッドナイト博士の論文発表で、逆転。相手方に支払い要求をした。抵抗できない死者を侮辱するのは、ルルディでは侮蔑の対象だ。
 訴えの元である夫人は、元婚約者なんだから、金を取るような恥ずかしい事をするなと言ったって。
 それには、さすがの双方の弁護士や、裁判官まで開いた口が塞がらない様子だったと。
 で、頭に来た当時のローザ伯爵夫妻は限度額ギリギリの慰謝料請求。裁判所も認めた。相手方は夫人を除籍するから、どうにか減額してくれと泣きついて来たが、ローザ伯爵家は拒絶。

「向こうの家はもともと家計が苦しい状況で、ティアラ・ローザとの婚約は、ローザ伯爵からの支援目的だったんですよ。そのティアラ・ローザ嬢が病死、支援を、切られると思って夫人が暴走した裁判だったんです」

 なんだかな。その家計が苦しい理由は、夫人の夫が美人局に騙されたのもあり、夫は暴走する夫人を強く止められなかったと。
 で、結局慰謝料は爵位を売り、家屋敷を手放しても足りず。弁護士代とかもあったし、しかも二年も及ぶ長期戦だったしね。ミッドナイト博士の論文が出た時点で、ローザ伯爵に謝罪しようとした夫を抑え、裁判を強行し続けた夫人の行方は、慰謝料支払いの為に奉公に出たと。
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