上 下
217 / 338

友達⑧

しおりを挟む
 次の日。
 生物学上の父親に面会を申し込む。直ぐに返事が来た。
 レターセットを買いに行くからおこずかい欲しいって言ったら一万ルルもくれた。
 一体何セット買うつもりだと思ったのだろう。
 
「余れば何か必要なものを買いなさい」

 だってさ。
 ならばと、ヴァレリーとマルティンもひきつれて図書館に。
 ヴァレリーには新しい鉛筆とノート、マルティンにはクレヨンね。後、ナタリアにもレターセット。ナタリアは元同級生や一時保護してくれた人とぼそぼそと連絡を取っていたみたい。なら、レターセットくらいね。私がいる時はせっせとお世話してくれているから。
 久しぶりで子供用スペースでマルティンは絵本に夢中になったし、ヴァレリーも借りたかった本を抱えている。
 図書館には公園が併設されていて、小さな屋台が並ぶ。ジェラートの屋台があるので、人数分購入して食べてしまった。
 帰りはマルティンは私とナタリアに手をつながれ上機嫌だった。
 
「せーのっ、よいしょっ」

「きゃっきゃっ」

 マルティンの手をナタリアと同時に引き上げると、マルティンがはしゃいでいる。
 ヴァレリーも嬉しそうに、着いてくる。
 楽しい。
 あーあ、こんな日が続けばいいのに。

 そうして、やっと寮に帰る日を迎える。
 朝から生物学上の母親が怒りの声をあげてる。
 どうしたんだろう?

「請求書が来たからでしょう」

 と、バトレルさん。一時塩みたいだったけど、今では通常モードだ。庭師とフットマン半々でやってる。本日はナタリアと共に学園まで来てくれる。ちなみに生物学上の父親は、現在地方に出向いている。学生時代の友人が亡くなり、親しい人たちを集めたお別れ会に出席するためにね。
 あ、そうそう。貴族の買い物はつけができる。月末にまとめてその家に請求書を送り、支払いなんだけど。
 朝からナタリアが気合い入れて編み込みしてくれたが、あまりの騒がしさにそっと覗きに行く。
 騒ぎの元は玄関先。
 なんだ、なんだ、やけに人が多いけど。
 ラッピングされた大小の箱を、その人達が持ってるけど。

「キャサリンッ、貴女一体いくら買ったのっ、たった一回のお茶会の為にっ」

 へー、キャサリンの買い物ね。
 ……………………え? 多くない?
 あれだけ人がいるってことは、人の数だけのお店でお買い物して、月末請求のつけにしたんでしょ。請求書持ってくるのは基本的に一人。貴族がつけの支払い出し渋るのは、ものすごく恥ずかしい事なんだって。
 少なくとも十人以上いるけど。

「だってお母様、当日の天気だってありますし、私の気分もありますわ。これでも我慢しましたのよ」

「だからと言って何着オーダーしたのっ。まだ、袖も通してないドレスがどれだけあると思っているのっ」

「なにをおっしゃってますの? これはみんな今回のモニカ様のお茶会用ですわ。王族のお茶会に、あんか貧相なドレスで行くわけには参りませんわ、ローザ伯爵家の恥になりますのよ」

 ぷりぷりとキャサリンが口答えしてる。

「キャサリンッ」

 生物学上の母親が金切り声を上げる。
 私は呆れてその場を離れる。

「一体いくら買ったんだか」

 私はぽつり。

「オーダードレスを四着、セミ・オーダードレスを七着、セットとなる帽子、カチューシャ、靴、バック、手袋、靴は合わせてニ十八点。日傘二点。それ以外にも靴が三足、バックが二点、帽子が二点。アクセサリーがピアス、ネックレス、ブローチ、ブレスレット、髪飾りが合格で十六点」

 つらつらと言うバトレルさん。私は黙ったまま、振り返る。

「合計で1562万ですね」

 私は絶句。隣のナタリアもだ。
 いくらなんでも桁が大きすぎない?

「まさか、モニカ妃殿下のお茶会の為だけにこれだけ買ったと?」

「そうです。同行したスウサによれば、行く先々で言い触らしていたようですから」

 スウサさんはウーヴァ公爵から来たメイドさん二名のうち若い方のメイドさんね。主にキャサリンの身の回りをチェックしている。そこからの情報ね。
 しかしキャサリン、マナーも常識もないが、金銭感覚まで崩壊している。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。 スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。 ※誤字報告、感想などありがとうございます! 書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました! 電子書籍も出ました。 文庫版が2024年7月5日に発売されました!

捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

クロユキ
恋愛
「俺と離婚して欲しい、君の妹が俺の子を身籠った」 パルリス侯爵家に嫁いだソフィア・ルモア伯爵令嬢は結婚生活一年目でソフィアの夫、アレック・パルリス侯爵に離婚を告げられた。結婚をして一度も寝床を共にした事がないソフィアは白いまま離婚を言われた。 夫の良き妻として尽くして来たと思っていたソフィアは悲しみのあまり自害をする事になる…… 誤字、脱字があります。不定期ですがよろしくお願いします。

処理中です...