ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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友達⑦

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 ローザ家に戻り、疲れた身体を湯船に浸す。
 ナタリアがせっせとお世話してくれる。気持ちいい。
 髪を丁寧に手入れしてくれる。

「あの、お嬢様」

「ん? なあに?」

 あまりに気持ちいいので、船をこぐ寸前になる。

「今日、グレン伯爵夫人とお話されておっしゃっていましたよね」

「どの事?」

「もともと一人だって」

「あー、そうだねー」

 そんなこと、言ったね。
 
「だって、一人だもん。育ててくれたおばあ様は毒殺されるし、ここは私を守ってくれていたコクーン修道院でもないし、ね」

 なにより、私はウィンティアではない。ウィンティアの身体を借りているだけだし。

「わ、私がおりますっ」

 やけに切羽詰まったナタリアの声。

「そうだね。ナタリアがいるね。本当に感謝だよ」

 ふいに、考える。
 今は私はお嬢様の立場、ナタリアは専属メイド。
 だけど、いずれ裁判が起き、父親の名誉回復になれば、ナタリアはザーデク子爵を継承する。いずれヴァレリーが引き継ぐまでの繋ぎだけど、メイドなんてしなくてもよくなる。
 私は十中八九一般市民だ。さりげなくセシリア・ウーヴァ公爵が言っていたけど、キャサリンを叩けば、自然とローザ伯爵家を継ぐのは私と言うことになるって。私に、そんな気がないから、学園を卒業したら、籍を抜こうと思っている。
 そうなれば、ナタリアとの接点がなくなるってことね。
 でもなあ、ナタリアといると気が抜けるっていうか、ローザ伯爵家にいても安心できる存在なんだよね。

「ねえ、ナタリア。厚かましいお願いしてもいい?」

「はい、なんでしょう?」

「全部、何もかも終わったら、友達になってくれる?」

「え? 友達?」

「うん。ダメかな?」

 鏡の向こうでナタリアが困っている。

「あ、ごめん、無理だよね。忘れて」

「いえ、違いますっ。私なんかでいいのかなって思って。私でよければお願いしますっ」

 何だか、告白を受けてオーケーしました、みたいになったけど、ま、いっか。ナタリア、ふんすっ、て感じでかわいいしね。

 それから、レオナルド・キーファーから手紙とお花が来た。私の元に到着するまで一悶着あった。
 何故って? キャサリンだよ。自分宛だと騒ぐ騒ぐ。めんどくさい悲劇のヒロインやってた。グレン伯爵家に勝手に行ったのだって、かなり怒られていたのに、懲りてないなあ。それも全部私のせいなんだって、バカじゃないの? 身から出た錆でしょうに。
 同時にキスティ夫人からも手紙が来た。先日のお茶会を件の謝罪だ。よく考えたら、ウィンティアを責めるような言葉だったと、ね。私も大分失礼な態度だったし、素直に謝罪の手紙を送った。
 一悶着あったレオナルド・キーファーからの手紙をざっと読み、差し障りのない内容で返事をする。
 これで図書館で購入したレターセットがなくなった。買いに行かないと。
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